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他人様のタックス・リターン

先週共和党大統領候補であるMitt Romney氏のタックス・リターン(2010年と2011年予測版)が公開された。Romney候補の純資産は$200~250ミリオン辺りといわれ、最近ではビリオネアーのRoss Perot氏に次ぐお金持ち大統領候補になる。政治はさておき、お金持ちのタックリターンを堂々と見れる機会なんてそんなにないので、野次馬的にのぞいてみた。

まず驚いたのはその長さ。夫婦のジョイントリターンだけでも200ページを超える。他にも当人や夫人のブラインド・トラスト、ファミリートラスト、チャリタブル・ファンデーション・トラストのリターンがあるが、ほとんどは重複書類。

2010年はAGI(Adjusted Gross Income-1040のP.1の底に書く数)$21.6ミリオン。連邦所得税が$3ミリオン。所得の14%を税金に払っている計算。これは税率ブラケットではなく、単純に連邦所得税÷AGIで計算した税率で、Average Tax Rate とかEffective Tax Rate などと呼ばれるが、ここでは簡単に税率と言う事にする。

「あんなお金持ちなのに14%は低いんじゃない?(うちだってもう少し高い率で払ってる)」という話題で先週の巷は持ちきりだった。

「俺のペイチェックの半分は源泉されるのに!」と怒っている人もいるが、それは連邦所得税だけでなく、州所得税、Social Security, Medicare, State Disability Insurance,保険料、Flex、401K拠出等を引いた額なのでここでの比較対象にはならない。自分の税率ブラケットは知っていても、自分のAGIから何%が連邦所得税に行ってるか知らない人も多いだろう。

AGIの何%を連邦税に払うか、それを各リターンで計算して、プラスのAGIがある全世帯で平均すると11%になる。多くのミドルクラスは5~20%あたりの税率に収まるのではないだろうか。 所得がTop1%層だと税率の平均は24%。さすがに高所得者の間で見ると14%というのはかなり低い。さっそく土曜日のWall Street Journalに、『Mitt Romneyのタックス・リターンから学ぶ節税対策』みたいな記事が出ていた。

Romney候補の資産を運用している人は節税を強く意識しているようで、WSJの記事でも「これはタックス・プランニングのケース・スタディーに使える」とも書いている。ご存知の方も多いだろうが、Romney候補のAGI$20ミリオンほとんど投資所得で、税率15%適用を受けるため長期キャピタルゲインやQualified Dividendsという形で収穫されている。

一方、高所得者でもWage/SalaryのようにOrdinary Incomeを稼ぐ人は、数十万ドルも稼ぐと35%ブラケットに乗ってしまう。といっても、35%が適用されるのはブラケットを超えた額のみで、それ以下の額はそれぞれ該当ブラケットの低い率で課税されるので、Average Tax Rateはもう少し低くなる。

でも、最高35%で課税されるOrdinary Incomeと、一定条件を満たせばいくら稼いでも課税率15%の投資所得の率差がこの話のミソなのだ。上記WSJ記事は「①Wage, Salary, Tipはできるだけ稼がないようにする」なんてアドバイスしているが、普通の勤め人やWorking Stiffにはそんなのはまず無理。

今回特に話題になったのは、Carried Interests。これは、Private EquityやVenture Capitalといった私設投資ファンドがそのジェネラル・パートナーに収益の一部をペイアウトする時、長期キャピタルゲイン同様に15%で課税されるというもの。Romney候補は1999年までBain CapitalというPrivate Equityのパートナーとして働いていて、そのレガシーとして2010年には$7.4ミリオンのCarried Interestsを得ているという。Carried Interests15%課税特例の是非については、これから政治上の議論されることなることだろう。

あと、Charitable Donationが$3ミリオンと高いのもアメリカのお金持ちらしい。これは所得控除できるのが得点。Tithingと言ってアメリカの敬虔なクリスチャンは年収の約10%を教会に納めるのが、アメリカの習慣らしい(といってもクリスチャンの知り合い曰く厳格なルールではないらしい)。Romney候補もDonationの半分はモルモン教会(Church of Jesus Christ of Latter-Day Saints)に行っている。また、値上がりした株を売らずに株のまま寄付するという節税テクニックが一部使われている。これは賢いテクだと思うので、私もいつかこれが使える身分になりたいものだ。

2010年のリターンには複数のオフショア口座の申告(Form 8621)がゾロゾロ続いている。WSJの記事にも書かれているが、Hedge FundやPrivate Equityへの投資をこうしたOff-share Corporationに設置することが節税対策になるらしい。合法手段だが、これも、お金持ちにしか中々使えない対策なので、これも政治上の論争になっている模様。

水が高い所から低い所へ流れるように、お金は課税率の高い所から低い所へ移っていくのが世の摂理なのだなあとつくづく思う(それが、政策の意図した形であるかどうかには関わらず)。

コメント

Warren Buffettの2010年のフェデラル税は$6.9M、税率17.4%だったそう。彼はこんな記事を書いています。自分の税率を公開したうえで、「もしお金でお金を稼いでいる人がいたら払う税率はこの17.4%より低いだろうし、仕事でお金を稼いでいる人がいたら税率はこれより高いだろう」と書いています。「自分たちはビリオネア・フレンドリーのワシントンの政治家たちに十分甘やかしてもらった。そろそろ政府は、”SHARED SACRIFICE”にシリアスになるべきときに来ている」賛成!

JJさん、コメントありがとうございます。

バフェットさんはいつも気風があります。State of The Union Address でも、バフェットさんより高い税率を払っているという彼の秘書さんが出て来ましたよね。

私は政治にはすごく疎いのですが、15%課税と35%課税のギャップを利用するべくお金や制度が動いているのは事実だと思うので、この格差は何らかの形で埋めていく必要があるとく点は大いに同意します。

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