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Yield Hog -利回り豚の懺悔

”We are all yield hogs” (我々は皆利回り豚である)

昨日ラジオで誰かがそんな事を言っていた。

Hogは豚のことで、英口語では豚のように貪欲にがっつく人やがっつく動作をさしてHogと呼ぶことがある。(例文:Don't be a hog.ーがつがつするんじゃないよ。 Someone is hogging the network bandwidth. ー誰かがネットワークの回線容量を独り占めしてる。etc.)

”Yield Hog”(利回り豚)というのは、より高い利回りを探し当てては貪欲にがっつく人達のことを指す、少し俗でユーモラスな表現。

連邦債、Money Market Fundや銀行貯金の低い利回りを見ながら、「もうちょっと高い利回りの運用方法は無いものか?」と多くの人が考えている今は、まさにYield Hogの時代とも言える。より高い利回りを求めて、銀行預金や債券ファンドから海外ソブリン債、良い配当の出る株、REIT、さらにはジャンク・ボンドといったものに移っていく人達もいる。

実は私も利回り豚だった。

これはずっと前の話だが、ブローカーに勧められてそのブローカー会社の運用する超短期債ファンドをマネーマーケットファンドの代用に使っていた。ある時そのファンドの価格が急に30+%落下してかなり損をした。ファンドは価格回復しないまま何年かして閉鎖されてしまった。

これは、「元本の保全を重視しながら、少量のリスクを取ることでマネーマーケットより少し高い利回りを狙う」という主旨の超短期債券Mutual Fundだった。今になって冷静に考えると、そんな美味い話はあるはずが無いのだが、その時点ではマネーマーケットより1~2%高い利回りを出すこのファンドを賢い選択だと考え、Cash-Equivalentだというブローカーの売りに妙に安心していた。(脚注*)。

リーマンショックで株相場が50%弱落ちるのを経験した今から見ると、30+%落下は小さく感じるが、このファンド価格急落はリーマン・ショック以前の出来事で、しかもCash-Equivalent と言われた比較的安全なファンドだったので当事の動揺は大きかった

私がうかつだったのもあるが、このファンドのマネージャーがProspectusの公約と違った運用をしていたのも事実で、ブローカー会社もマネージャーもこのファンドの運用に関し「misled the investors」という理由でSECから罰金・制裁金を科せられている。(脚注 **)

このブローカーは投資家達からの訴訟にどっぷり巻き込まれたが、私はブローカーと個別交渉して小額の賠償金を得る結果になった。訴訟は弁護士の取り分が多いので、必ずしも得にはならないらしい。しかし、この交渉は予想以上にストレスフルで、しばらくは時々思い出してはムラムラ~ッとしていた時期があった。

これの延長線上にAuction Rate Securitiesの話もある。Auction Rate Securitiesは、バブル期に利回りの良いキャッシュ管理方法と言われて機関投資家や富裕層に勧められていたが、2008年に突然市場が凍結して、それをお金の置き場所として使っていた投資家達の資産が何年も凍結されてしまった。

投資にリスクは付き物なので、リスクをまったく取らないわけにはいかない。しかし、低リスク商品から始めて少しずつリスクのある商品を考えていく時、「といっても、それほど高い利回りじゃないから、それほどリスクは高くないのかも?」と思ってしまう心理的罠はありそうだ。私もそういう罠に落ちたのかと思う。

実は私は今でも利回り豚なのだが(Oink, Oink!)、さすがに以前よりは注意深くなった。

より高い利回りの債券やキャッシュ管理商品を探したり買うときには、必ず「これは0.5~2%の利回り差に見合う投資リスクなのか?」と自問するようになった。「その僅かな利回り差のために、元本の何割かを無くすかもしれないリスクを取る覚悟があるのか?」ということだ。「その価値は無い」と判断することも時々ある。

また、机の中には豚の絵を一枚見えるところに置いて、時々それを見ながら「ガッついてはいけない」といった教訓を思い出すようにしている。その時は賢くスマートにやっているつもりでも、結果としては豚だった・・・その経験を忘れないようにしたい。

脚注:
(*)このファンドの価格急落は、ファンド・マネージャ-がファンド元来の運用方針を離れ、Variable-Rate Securitiesをファンドに組み込んでいたことが原因。これらは長期債券なのだが、2週間ごとに価格・利率がリセットされるので「超短期債券である」と、このファンドのマネージャーは延長解釈していたらしい。

(**)このブローカー会社のCEOは、このファンドが閉鎖されるまでその最大の投資家だった。船長は沈んでいく船から逃げないという信条なのか(どこかで逃げちゃった船長もいるけど)。ブローカーさん達は、自分達が薦めている儲け話を本当に信じていることもよくある。ただ、誠意・善意で薦めてくれたが必ず商品が無害とは限らない、これは以前『ブローカーはアドバイザー?』でも書いたことがある。

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