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Money Market Fundの行く末

『$1入れたお金は、原則として$1として引き出せる。』

それがブローカーや投資信託会社にあるMoney Market Fund(MMF)の従来の特徴。

まだ決まったことではないが、MMFのこの$1原則をサポートする従来の制度を変え、MMFのShare Price(基準価額・NAV)を 他のMutual Fundのように運用ポートフォーリオの時価につれて変動させるべきだという動きがあり、政府・SECはその方向に押している。

MMFのこの1ドル原則は決して政府保証ではない。MMFのポートフォーリオ(主にCommercial Papers・超短期融資)の市場価値が元本を切ることがあっても、運用会社・ブローカー・投資信託会社が自社の評判を守るため自己資金で$1の価値を支えようとする強い動機があるからこそ支えられてきた制度。問題はその自己資金が尽きた時。

リーマン・ブラザーズが破綻した時、MMFの草分けであるThe Reserve Primary Fund(資産$65ビリオン)が、抱えていたリーマン社債の損額を補う資金が足りず、元本割れを起こした。$1につき、たった3セントほどの損額だったが、驚いた顧客(主に機関投資家や企業)が一斉に解約を要求し、The Primary Fundは破綻・清算に追い込まれた。安全だと思われたMMF、しかも老舗ファンドが元本割れを起こしたことで、パニックはたちまちマネーマーケット全般に伝染し、短期クレジット市場がカチンコチンに凍結してしまったのが2008年末。あれは、中々怖い時期だった。

結局は政府・連銀がMMFを一定額まで保証するという暫定ポリシーを出して、どうにか市場を解凍させた。信用不安が治まり、そのポリシーも終結して、MMFはまた従来通り政府保証なしに運営されている(利率は下がったけど)。

それ以来、MMFの影に潜むシステミック・リスク(金融制度全体を不安定にさせるようなリスク)を、制度上・会計上どう扱うかが、金融政策論争の焦点のひとつになっている。

Banks: Show Investors the Money (Funds) :WSJ Heard on the Street

アメリカの会計基準を決める団体、FASBは、サブプライム危機が金融機関の簿外資産(SIVなどのOff-Balance-Sheet Assets)として進行したことを問題視して、金融機関が最終的にリスクを担う可能性のある資産を簿外に置くことを良しとしない。(ギークな背景音楽) サブプライム債券のレバレッジ・ポジションとMMFではリスクに雲泥の差があるが、それでも、バランスシート内に置いて資金バッファーを蓄えるか、もしくはMMFを帳簿外に置くならば、他のMutual Fund同様に基準価額を変動させ顧客にリスクを認識させるか、金融業界にどちらかの選択を迫っているらしい。

金融機関側は、MMFのShare Priceを変動させて顧客の不興を買うのも嫌、バランスシートに置いてCapital Requirementsを心配するのも嫌で、「MMFだけ例外にして」とごねている模様。

なにしろMMFは総額$2.7トリリオンという巨額な市場なので(うち、$1トリリオンはリテール投資家)、何かが起きた時の影響も大きい。従来の商業銀行と違って、MMFは連銀や政府機関の直接の監督・監視・バックストップを受けない、Shadow-Bankingと呼ばれる融資チャンネルの一部。監視の甘さにつけこんで、「またどうせ政府が保証・救済してくれるさ」といったノリで運営されたのでは、政府も納税者もたまったものではない。実際、現在のMMF内のアセットの約35%は欧州関連に投資されているという話もあり(バーナンキ連銀議長談)、もし欧州の金融危機が劇的に悪化すれば、MMFを通じてパニックがアメリカに伝染する可能性もゼロではない。

MMF現制度の問題は、少量なりともリスクがあるのに、リスクが無いも同様に制度が運営されていること。リテール投資家の一部は、MMFを銀行預金の代用と考えている向きもある。安全が過信されている制度は、少しのショックでもたちまちパニックに陥る可能性があるというのが、リーマンショックの教訓。リスクが存在する以上は、いつかは誰かがそれを認識しなくてはならない。

というわけで、連邦銀行も、MMFの現行制度下に隠れるシステミック・リスクを軽減することを優先視し、それに並んでSECはMMFの様々な規制変革の一案として、基準価額(NAV)の変動化を押してきている(他にも情報公開や、運用規制といった変革案もある)。もし、変動化が実行されれば、投資家のMMFのリスク認識はまったく変わってくるだろうし、MMF市場から資産が離れていく可能性もある。

まだ決まったことではないし もし変動化されることになれば、うるさいほどの通達が来るはず。金融業界内でも、保険や私設Liquidity Facilityといった手段で$1原則を続行できないかといった検討はされているが、実現するかどうかはまだ分からない。

利用者側としては、投資の決済などに使うMMFの基準価額が変動するのは面倒。何とか避けられないのかと思ってしまう。これは、MMFへのリスク認識を変えることへの抵抗感も大きい。ブローカーによっては、MMFの代わりに、商業銀行と提携してFDIC保証のついたSweep Accountを提供しているところもある。リテールはそういった方向に流れていくんだろうか。

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