最高裁がAffordable Care Act (Obamacare) の合憲性を認め、同法で制定された新しいMedicare Taxが、予定通り2013年元日から施行される可能性が高くなった。Buffett Taxと違って、新Medicare Taxの歳入はちゃんと予算案の計算に組み込まれているので、オバマ政権の本気が読み取れる。
ロムニー候補をはじめ共和党は、Obamacareを撤廃させると息巻いてはいるが、11月の選挙でも上院議会のコントロールが民主党を離れることはまずないと予想され、現実的には難しそう。
新Medicare Taxには二種類ある。
①Medicare Investment Surtax(投資所得への3.8%の追加税)
このSurtaxが適用されるのは、MAGI(Modified Adjusted Gross Income*脚注)が以下のThreshholdを越える比較的高所得世帯。
Tax Filing Status | MAGI Threshhold |
Married Filing Jointly | $250K |
Married Filing Separately | $125K | Single Filing | $200K |
該当世帯には、以下の二つの額どちらか小さいほうに、3.8%のSurtaxがかかる。
- Net Investment Income (NII)
- 上記Thresholdを越えたMAGI
Net Investment Incomeには、以下のような投資所得が含まれる。
- Interests, Dividends、 Royalties, Taxable Annuities, Rents
- Net Capital Gain (自宅を売った際のCapital Gainは非課税枠を越えた額のみ)
- その他Income from Passive Activities
- Income from Trading Financial Instruments or Commodities
一方、以下の所得は課税対象(NII)には入らない。
- 401K, 403B, IRA、RothなどからのRetirement Accountからの引き出し額
- 401K, 403B, IRAなどからRothにコンバートされた額
- Municipal Bond Interests
- Social Security Benefits, Pension Payments
- Life Insurance Proceeds
- Active Trade/Business Income
ちょっと複雑なのは、このSurtaxが適用されるかどうかはMAGIで決まり、実際に課税対象になる額は(多くの場合)また別にNet Investment Income(NII)から計算されるということ。
例えば、401KやIRAから多額に引き出したり、Rothにコンバートすると、それがMAGIを引き上げてこのMedicare Surtaxに引っかかるかもしれない。でも、引き出した額・コンバートした額自体はNIIには入らない。
また、自宅を売って多額のCapital Gainが出た場合、Capital Gaiが非課税枠(シングル250K,既婚世帯500K)を越えた額のみが、MAGIとNIIの計算に入る。
このMedicare Surtaxの影響で、Municipal BondとRothの利点が見直されている。Municipal BondのInterestsは、MAGIにも入らないし、NIIの計算にも入らないので、一粒で2度美味しいってやつですね。Rothからの引き出しも、MAGIにも、NIIにも入らないので同様に美味しい。
そういうこともあって、ほったらかしの401KやIRA口座があったら、今年中にROTHにコンバートしたおくのも悪くない、将来の所得税率もどうなるか分からないしね・・・といった話もちらほら聞くようになった。もちろん、今年中のRothコンバーションが適当かどうかは、個人・家庭の事情による。
長期キャピタルゲイン税15%を10年近く享受してきた経済層には、3.8%の増税は苦痛に感じられるようだけど、所得税の全体から見ると3.8%というのはそんなに大きな数字ではない。3.8%を避けるためだけに、妙な無理をしたり、危ない橋を渡る必要も無いと思う。
②Additional Medicare Payroll Tax
現在、EmployeeのWage/Compensationには、Payroll Taxの一部として1.45%のMedicare Taxが掛かっている。2013年元日からはWage/Compensationが①の上記表のThreshhold額を越えた場合、越えた額に掛るMedical Taxが0.9%だけ増税され、2.35%になる。つまり、Medicare Taxが累進課税制になるということ。
これについては、IRSが大まかなガイダンスを出していて、Employee一人のWage/Compensationが$200Kを越えた時点で、EmployerがMedicare TaxのAdditional Withholdingを始めることになる。しかし、正確な税額の計算には配偶者との合算が必要なので、最終的にはTax Returnで所得税と合わせて決算する。会社のWithholdingが足りない場合は、W4で連邦所得税を余分にWithholdingするなり、Estimated Tax Paymentをするなりして調整することができる模様。
この新Medicare TaxのThresholdは自動的にインフレ調整されるわけではないらしい。ATMのThresholdのように、インフレに押されていつのまにかミドルクラスに適用されたり、数年ごとに調整するしないで議会でドタンバタンしたり・・・なんてことにならないとよいけれど。
この新Medicare Taxを払うことになる世帯は、おそらく全米の3%に満たない。しかし、ミドルクラスでも、何かのきっかけで大きなお金を動かす時(401K/IRAをRothにロールオバーしたり、Mutual Fundを売ったり)、家などの資産を売却する際は、Medicare Investment SurtaxのMAGI Thresholdを考慮する必要が出てくるかもしれない。
(*)Medicare Investment Surtaxに使われるMAGIは、タックリターン1040 1ページ目の底にあるAGI(Adjusted Gross Income)に、Foreign Earned Income ExclusionとForeign Housing Exclusionを戻した額。これらのExclusionを使わない人は、AGIをそのまま使える。
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