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末期の資産

MITのPoterba教授達が、アメリカの老人達が死去した時に、果たしてどれぐらいの資産を持っていたのかを分析調査した(ペーパーはこちらサマリーはこちら)。

結果はちょっとショキングで、

アメリカ人の46%は、死去時には10K以下の金融資産しか持っていなかった。

これは、1993年に70歳以上だった人達を追跡調査して分かったこと。金融資産10K以下で他界した人達の中でも、Home Equityもほとんど持たず、Social Security Retirement Benefit(一部は企業ペンションも)だけが収入だった人がかなりいた模様。

さっそく、メディアでは”Half of Americans Die Broke”なんて扇情的な見出しの記事が書かれている。こういう統計結果は、聞いた当初より後でジワジワ沁みてくる。

最近「Social Securityだけで暮らしていけるか?」なんてメディア記事を時々見るけど、多くのアメリカ人にはこれは修辞疑問文じゃなくて、現実なんだよね。リタイアメントプランニングの理論と実践の間には、グランドキャニオン幅のひずみがあるってこと。

でも、データを見ていると、この世代の老人層はSocial Securityに加えて企業ペンションの恩恵もあって、リタイア後も、リタイア前の収入とそう変わりの無い安定した収入を得ている人が多い。401K世代の私達から見ると、その辺はちょっと羨ましい。

リタイアメント・プランニングは、リタイア前の収入に近い額の収入をリタイア後も確保することに重心を置いて進められる。そういう基準だと、この調査対象の老人達のリタイアメント・プランは成功したことになるんだけど、さすがに金融資産10K以下というと、急に大きな出費(保険外の医療費や何らかのEmergency)が出た時には困りそう。研究に携わった教授達はリタイアメントプランは、収入確保に重心を置くだけでは不十分かもといった疑問を提示している。

また、データの中の老人世帯の資産・所得事情は実に様々で、上のように金融資産無しにSocial Securityに頼りきりの人もいれば、企業ペンションを充分に貰っている人、資産を充分に持っている人もいる。リタイアメント・プランニングによく出てくる「平均例・典型例」といったやつが、個人の事情に当てはまるとは限らない。

この手のデータでよく言われることだけど、統計的に見ると「アメリカではお金持ちは長生きする」。この研究でも、データ初年の1993年に観察された資産額が高ければ高いほど、その人は長く生き延びる傾向が非常に強い。その人の1993年度の年齢をコントロールしても、資産の定義を色々換えても(金融資産、家のEquity, 年金資産の現在価値、リタイア後の年収)、「お金持ちは長生きする」という統計結果は変わらない。また、死亡するにしても、やはり資産のある人ほど、死亡する前の健康状況が良好だという。

資産があるから健康で長生きするのか、それとも健康だから資産があり長生きするのか、資産と長生きの因果関係については色々議論がある。まあ、元々病人や不健康な人は資産形成も難しいし、医療費が嵩んで資産も減ることがあるだろうから、健康=>資産形成が可能、かつ長生きするといった因果関係の方が、この場合は有力。

話は横にそれるけど、アメリカでその人が長生きするかどうかの一番大きな予測因子は学歴だそうです。格差社会アメリカの、シビアな一面なのでした。

コメント

ポピーさんの統計が関係するポスト、いつも面白く読ませてもらってます。今回の記事も、相関関係と因果関係の違いを表している、面白い内容ですね。資産形成のアドバイスには、まず最初に「健康であること」と書くべきなのかもしれませんね。

Nobuさん、有難うございます。

健康は本当に大切ですよね。年取るにつれて、どんどんそう感じるようになりました。まずは体が元手。

運動したり食事・生活に気をつけて健康維持する姿勢が、将来の目的のために今我慢したり努力したりするという点で、学校を卒業したり、キャリアを築いたりする姿勢と共通点があるから、そういう姿勢を持つ人達が資産を築きかつ健康に長生きするのでは・・・そういう見方もあるようです。

健康や寿命には遺伝とか事故や突然の疾患と言ったコントロールしきれない部分もあるので、コントロールできることに専念するしかないのが、難しい所ですが・・・

身につまされます。
でも実際、どうしていいかサッパリわかりません。
かなりの人が、あの高いnursing homeだのassisted livingだのに入って、あっという間にスッカラカンになってしまうじゃないですか?で、結局メディケイドになる。

老後心配ないくらいの結構な資産を築ければいいけれど、我慢を重ねたのに、最期はずっと貯え無い人とそんなに変わらなかったら、なんだかやる気も萎えます。
今の、ペンションがあって、株価も上がって、住宅価格も上がって、資産築いてきた世代でさえこんなでしょう?

私たちはどうなるんでしょう??

って、思考停止になる、私みたいな能天気な日本人のおばちゃんが、一番長生きしたりする。

こういう記事はショッキングな部分が大きく取り上げられますが、元データを見ると(サマリーしか読んでませんが)、結婚している人とそうでない人では資産総額が大きく違うとか、(継続的に婚姻関係にある高齢者の死去一年前の資産総額中間値はなんと600K!)むしろ「アメリカの老後は悲惨」というよりは、「socioeconomicな格差が限りなく大きい」という印象を強く受けました。

パーソナル・ファイナンスの記事でも、「500ドルの貯蓄を目標にセービングズ・アカウントを開きましょう」から「401Kに限度額いっぱいまで入れたあとは、どのように資産形成するのがいいでしょう」というレベルまで(ロムニーさんのようにケイマンに預けないといけないようなレベルの人はネット上のパーソナル・ファイナンス記事なんかを参考に貯蓄しないでしょうから、対象外ですね)、格差が大きいのがアメリカですから、この手の記事でいったい自分は老後、どのあたりに位置するのか想像するのは、難しいですね。

でも、金融資産10Kしかなくて、予想外の出費を強いられることになったら。。。わたしなら迷わずに踏み倒すだけですけど?

>Cheeさん

そう、結構堪える統計話で、ジワジワ来るんですよ。

私もこれはMedicaid Spend-Downがかなり関連しているのかなと想像します。

この世代は大恐慌や第二次大戦の影響下で育ったから、堅実で貯金熱心だった世代なんですよね。それなのに・・・

アメリカは昔を美化しがちだけど、時代を遡ると今以上に幅広く底の深い貧困が存在したので、そのレガシーもあるのかもしれません。プラス、70年代のインフレも影響してそう。

>F Friesさん
そうそう、おっしゃる通り、老後事情は千差万別というのも、結論のひとつです。だからこそ、リタイアメント・プランニングも一筋縄ではできない。

夫婦世帯の資産600Kと言うやつですが、実はその半分以上はペンション・Social Security・Annuityの現在価値です。残りは家のEquityと金融資産。金融資産のMedianはおそらく100K以下かと。

この夫婦世帯というのは、当人が死去した時に配偶者がまだ生存していたグループです。色んな意味で、結婚が経済的に安定要素というのもありそうですよね。また、このグループには元々若めの夫婦(最近まで所得を得ていたから高資産)と夫婦とも比較的長生きの人達(金持ちは長生きだから、長生きグループに絞ると金持ちがSelectされる)が多いので、そのグループ内でのMedian 資産額は高めになるようです。

この夫婦世帯の生き残りが、その後どうなったかもちょっと知りたいですよね。

以前、日本の電車内の広告で(小田急か京王だったと思います)、「芸術家は長生きした人が多いので、○○電車に乗って美術館に行きましょう!」という宣伝とともに○○電車沿線上の美術館が紹介されていました。確かにゴッホなど自殺してしまった人は除いて、寿命をまっとうした画家はピカソにしても葛飾北斎にしても、今のような医療がない時代でも長生きしていますよね。

アメリカの医療は高いですが、健康のためにも、”お金のかからない”芸術的な趣味を持つのがいいかも・・・と思います。

>久美さん

へえ、芸術家も長生きなんですか。良い事を聞きました。

芸術家も、才能に人生をつぶされないようにするには、それなりの自制力が必要ななのかもしれませんね。生き延びるからこそ出来る大作もあるかもしれないし。

芸術でも何でも、お金がかからない趣味を持つのは生き甲斐にもなるし、良いですよね。

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