ここ何ヶ月か、連邦系学生ローンの金利をどうするかで米国議会がすったもんだ揉めていたのだが、今月24日にこれを10年物Treasury Notesの金利に結びつける案が上院で可決され、このまま難なく下院を通過すると見られている。
Bloombergの記事:Senate said to reach student loan deal ending rate jump
学生ローンが金利設定に際し、ベース金利になるのは、毎年6月1日より前の最後のオークションで決定された10年Treasury NoteのYieldで、今年のベース金利は1.81%。
学部生に一番ポピュラーなStafford Loanの金利は、Subsidized/Unsubsizedに関係なく、その年のベース金利+2.05%に設定され、今年(2013年)の金利は、3.86%になる。これは、2013年7月1日から貸付されたStafford Loanにもレトロアクティブに適用される。
注意しておきたいのは、連邦系学生ローンはまだ固定金利だということ。借り出す年によって、どの金利に固定されるかは違ってくるが、一度借り出した連邦系学生ローンは返済終了まで金利は固定されたままになる。
Stafford LoanのSubsidized/Unsubsidizedの金利格差がなくなったのは、このUnsubsidized Stafford Loanに頼る学生層(ミドルとアッパーミドル層)には良いことかもしれない。3.86%という今年(2013年)の金利も、クレジット審査無しのUnsecured Loanとしては悪くない。
しかし、これから連銀の量的金融緩和政策が終了していく中、長期金利は上昇するだろうと予測されていて、もしそうなれば、これら学生ローンの金利も上がり、返済負担も重くなっていくだろう。一応、Stafford Loanの金利は8.25%でキャップされていて、それより上がることはないが、先行きの不安感が残る。
院生向けのStafford Loan、親の借りるPLUS Loanも、同様にベース金利にいくらか上乗せする形で金利が決定されることになり、下の表に設定ルールと今年の金利、さらに上限キャップを書いておく。
この可決案にはPerkins Loanは言及されておらず、このローンに関してはこれまで通りに貸し出される予定。
学生ローンの種類 | 金利設定ルール | 2013年の金利 | 上限キャップ |
Undergraduate Stafford Loan | ベース金利+2.05% | 3.86% | 8.25% |
Graduate Stafford Loan | ベース金利+3.6% | 5.41% | 9.5% | Parent PLUS Loan | ベース金利+4.6% | 6.51% | 10.5% |
ウォレン上院議員は、連邦政府がこれらの金利から実質的に利潤を得ていることを激しく批判し(詳しい議論はこちら)、連銀が市中銀行に貸し出すDiscount Rate(現在0.75%)と同じ利率を適用するべきだと主張している。
貸し出し総額$1トリリオン(=1兆)と言われる学生ローンは、高騰する大学の学費と一緒に、アメリカの社会問題になりつつある。最近は、公私の学生ローンの債務不履行率が上昇していて、90日以上支払いが遅れている学生ローンが18%だという。
返済に苦労する多数の若い人達も心配な一方で、債務不履行のツケが何らかの形で政府や納税者の肩に掛かってくる危惧もある中、今回の金利設定は政治的妥協案とみられている。
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