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Obamacare: Individual Mandate

Obamacare(正式名はPatient Protection and Affordable Care Act 2010)には色々意見がありますが、ここでは政治的議論は一切徐行して、2014年元日からの施行が近づいているIndividual Mandateと、2013年10月1日から始まるObamacareのオープンエンロールメントについての大要だけ。

政府の公式ウェブサイトは、こちら。

1.Individual Mandateとは?

2014年1月1日から施行されるObamacareのIndividual Mandateは、俗っぽく言うと、「皆さん、医療保険を持たなきゃだめよ、さもなきゃ罰金ね」という政策(罰金についての記述は後で)。

今すでに(個人・勤め先・政府経由で)保険に入ってそれに満足している人は特に何もする必要も無く、そのままその保険をキープできます。

今現在保険に入っていない人は、州もしくは連邦のHealth Insurance Marketplace(Health Insurance Exchangeとも呼ばれる)に行って保険に加入するよう奨励されています。

2.Health Insurance Marketplace

Health Insurance Marketplaceは、個人がObamacareの保険情報を得て保険に加入するためのウェブサイト、もしくは情報提供制度の総称です。Marketplaceの代わりにExchangeと呼ばれることもあります。

Health Insurance Marketplaceに行くと、申請者は、その地域で政府条件を満たす医療保険全てを一覧できて、その中から自分の好きなプランを選べるようになっています。Health Insurance Marketplaceに申請すれば、申請者がMedicaidやCHIP(低所得世帯の子供のための公的医療保険制度)、さらに連邦の保険料補助を受ける資格があるかも大抵は分かるようになっています。

住んでいる州が独自のHealth Insurance Marketplaceを運営しているならば、そこに行って申請。複数の州が合同でMarketplaceを運営していることもあります。

また、Health Insurance Marketplaceの呼び名も州によって違っていて、例えばカリフォルニアではCovered California、マサチューセッツではHealth Connector といったような名前で呼ばれています。

住んでいる州がHealth Insurance Marketplaceを運営していない場合、連邦政府の運営するHealth Insurance Marketplaceに行って申請できます。

各州のMarketplaceのリンクは、こちら政府サイトで探すことができます。

これらMarketplaceのウェブサイトは、本当は2013年10月1日に一斉にオープンする予定でしたが、州によってはシステム開発が遅れていて、しばらく待たなくてはならない所もあるかもしれません。

Health Insurance Marketplaceへの申請は、オンライン以外にも、電話、郵送といった方法もあるし、協力機関やその人員を通して申請することもできます。保険ポリシーの選択に迷った場合は、Health NavigatorやHealth Ambassadorと呼ばれる人達の助けを借りることも可能。

巷にはObamacareを称する詐欺も一部あるようなので、気をつけて。

3.オープンエンロールメント期間

Obamacare下の2014年度分のObamacare医療保険のオープンエンロールメントは、今年2013年10月1日に始まり、来年2014年3月31日に終了します。保険自体は2014年1月1日から有効になります。

2015年度分のObamacare医療保険のオープンエンロールメント期間は、2014年10月15日から12月7日までと短くなるので御注意を。

オープンエンロールメント期間以外にObamacareの保険に加入できるのは、結婚・離婚・出産・失職・引越しといったQualifying Life Eventがある場合に限られ、Special Enrollment Periodと呼ばれています。

4.Obamacareの保険の内容

Health Insurance Marketplaceを通して加入する保険はどれも、政府が規定するEssential Health Benefits(定義はこちら)をカバーする義務があります。

Essential Health Benefitsの重要な特徴は、一般的な予防接種や需要の高いスクリーニング検査といった(Preventive Care)が無料で受けられるということ。

Essential Health Benefits以外のベネフィットを提供するかどうかは個々のポリシー次第。

Marketplace内の保険は、保険料とOut-of-Pocket Costs (Deductible, Copay, Co-Insurance等)の設定次第によって、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズという4クラスに分けられ、比較しやすいようになっています(説明はこちら)。

一番保険料が高くてOut-of-Pocket Costの低いポリシーはプラチナ、保険料が安い代わりにOut-of-Pocket Costの割合が高めに設定されているポリシーはブロンズ。ゴールドとシルバーはそれら中間といった感じに定義されています。

持病等あって頻繁に医者・病院に行く人にはプラチナやゴールドが良いかもしれないし、若くて健康で医者知らずであまりお金使いたくない人はシルバーやブロンズといったようなことになるのかもしれません。最終的な選択は、個人・家族の経済事情や健康事情によるのでしょう。

5.既往症の扱い

Marketplaceの保険は、年齢や喫煙有無等で保険料が多少変わってくるものの、既往症のために加入を拒否されることはありません。

疾患や医療措置が元々その保険でカバーされる種類のものであれば、「既往症である」というだけの理由でそれらの保険カバーを拒否されることもありません。

6.保険料援助

これから保険を探す人に心配なのは保険料ですが、Obamacareには、低所得層や一部のミドルクラスの保険料負担を軽減する制度もあります。

(1)Advanced Premium Tax Credit

これは、申請者の世帯所得が連邦Poverty Guidelineの100~400%の範囲に入る場合、連邦のタックス・クレジットの前払いという形で保険料一部を割り引く制度。詳しい情報はこちら。 割引額は世帯人数と所得額によって違ってきます。

2013年の連邦Poverty Guidelineの100~400%と言うと、下記の表のような数字なので、一部のミドルクラスでも多少なりTax Creditが受けられるかもしれません。

世帯人数 100% 400%
1 $11,490 $45,960
2 $15,510 $62,040
3 $19,530 $78,120
4 $23,550 $94,200

予測所得でAdvanced Tax Creditをもらったものの、後で予測した以上の収入を得てTax Creditをもらう資格が無くなった場合は、タックスリターン時に精算します。

(2)Out-of-Pocket Cost Savings

世帯所得が基準額を下回る場合、シルバープランの選択肢の中に、Out-of-Pocket Costsの低めのプランが提供されます。2013年度の基準額は下の表の通り。

これは、保険料も低めでかつOut-of-Pocket Costsも低めという、比較的美味しいプランを提供しようというのが意図のようです。説明はこちらへ。

世帯人数 上限資格所得
1 $28,725
2 $38,775
3 $48,825
4 $58,875

(3)Medicaid ExpansionとObamacareの穴

Medicaidはアメリカで低所得者層を対象にした公的医療保険制度で、資金の多くは連邦政府が出しているものの、運営の実際や規定は州に任されています。カリフォルニアではMedi-CAL、マサチューセッツではMassHealthというように、Medicaidには州ごとの名前がついていることもあります。

元々のObamacareでは、Medicaidの受給資格所得の上限を連邦Poverty Guidelineの133%にまで引き上げて、低所得世帯の多くをMedicaid制度下に吸収する予定で、このプランをMedicaid Expansionと呼んでいました。

しかし、最高裁判決の影響で、このMedicaid Expansionを実行するかどうかの決定は各州に委ねられ、2013年9月30日現在では、20前後の州がMedicaid Expansionをしない姿勢にあります(どの州かはこちらへ)。

それらMedicaid Expansionを拒む州に住む低所得世帯で、その州の従来のMedicaidに加入するには所得が高すぎ、またAdvanced Premium Tax Credit にも所得が届かない・・・といった層が存在するので、その層は、保険を持っていなくては罰金は課せられないことになっています。

Medicaid Expansionを拒む州に住んでいても、いつ州の政策が変わるか分からないので、Medicaid Expansionの恩恵を受けられる人はともかくMedicaid申請しておきなさい・・・というのが、現在の連邦政府の方針。

7.Obamacareと移民

ObamacareのIndividual Mandateは、グリーンカード保持者はもちろん、アメリカの税法上レジデントとして扱われる合法移民にも適用されます。

Health Insurance Marketplaceに申請できるのは、グリーンカード保持者だけでなく、グリーンカード(永住権)を申請してAdjustment of Status中の人、学生ビザや就労ビザ等の非移民ビザで合法滞在している人も含まれます。

移民が、合法ステータスをどう証明するかについては、大まかなガイダンスが出ています。

現時点では不法移民はMarketplaceには申請できません。

問題になるのは、Medicaidの参加資格。これまでは、グリーンカード保持者でも、Medicaidの加入資格には、当人もしくは配偶者の10年間のワーククレジットが必要でした。しかし、Obamacareの規制改定で、グリーンカード保持者は5年の米国居住歴があれば(その州の他の所得・資産テストをパスすれば)Medicaidに加入資格が与えられることになりました(ただ、各州がこの新規制をどれだけ忠実に施行するかはまだ未知数)。

また、Medicaidの参加資格を得るため待機期間にある移民は、世帯所得が連邦のPoverty Guidelineの100%以下でもAdvnaced Premium Tax Creditが使えるといった配慮もあるようです(これはAPのニュースになってますね)。

8. 罰金

2014年1月1日から、医療保険を持っていない人には、Individual Shared Responsibility Paymentと呼ばれる罰金が課せられ、タックスリターン時に税金に加算する形で払うことになります。

これについてはIRSが大まかなガイドラインを出していますが、細かい規定や手続きはこれから順次に発表されていくでしょう。

2014年度の罰金額は、所得(AGI)の1%か一人につき$95かどちらか高いほう。年途中から保険に入った場合は、月割り分を支払うことになります。

しかし、2014年は過渡期でもあるので、例えば、年途中まで会社のOpen Enrollment Periodを待っていた人などには罰金はつかないようです。

罰金は徐々に引き上げられ、2015年には所得の2%か一人につき$325かどちらか高い方、2016年には所得の2.5%か一人につき$695かどちらか高い方になります。

罰金と言うと大げさに聞こえますが、所得や事情次第では、免除されたりすることもあるようなので、実際に罰金の痛手を受ける人達がどれ程いるのか、また保険加入の動機付けになるかは、これから結果観察になりそうです。

コメント

ポピーさん、すばらしいまとめです!Obamacareは「まとめなくては・・・」と気になっていたのですが、私には「政治議論」抜きでと言うのがどうしても書けなくて(^^;

Nobuさん、ありがとうございます。

今日から始まった政府閉鎖の問題でも、Obamacareは議論の焦点だし、皆が熱くなる話題なんでしょうね。

ポピーさん、まとめてくださってありがとうございます。先日雇用先からレターが届いて、いったいなんのことかわからず、この件は保留していました。自分には必要ないのですが、この国のこれからのヘルスケアーシステムを考えるのに大変参考になるポピーさんのまとめでした。ありがとうございました。

>健康さん

ありがとうございます。もしObamacareが軌道に乗れば、アメリカの保険・医療事情が根本から変わる可能性も出てきますよね。

既往症のある人や、失業や早期リタイア、起業といった何らかの事情で従来の職場からの保険を失う人達には、セーフティーネットになるかもしれませんし。

ポピーさん、まとめありがとうございます。
ふと思ったのですが、Medicare Part A & BだけだとEssential Health Benefitに満たないように思うのですが、まあ、年齢的にmaternity careが入ってないのはともかく、これからはdrug plan (Medicare Part D)を買わないと問題になるのでしょうか。

ポピーさん、素敵なまとめありがとうございます。
オバマケア、大きな問題にも関わらず、多くの人(私もですが)無理解のままですよね。
正直当初から色々と複雑すぎる気がします。形骸化してしまってるといっても過言じゃないぐらい当初の構想から変わってますよね。

問題になってたケースの一つは、保険に入ってないがために医療を受けずに症状を悪化させ高額医療になって実質税負担になる、なんていうものがありましたが、
正直現在のplan premiumとout-of-pocketの設定だと、結局強制的に保険に入らされるけど皆ブロンズ・シルバーでOoPが大きいから通院しないという、
あってもなくても結果は一緒じゃね?ということになりかねない気がします(笑

すでに皆保険である日本が高齢化に耐えれずに進むと思われる2段階方式(基本部分は公的保険、高額・先端医療は私的保険)にどうして出来なかったんでしょうかねえ。
構想段階の当時、社会主義化だと批判していた人たちがいましたが、彼らはメディケア・メディケイドをどう思ってるんでしょうねえ?あれこそ強制徴収の互助的公的保険なのに(笑
あのあたりで骨抜きにされなければ、もっとシンプルでもっと魅力的なものになれる可能性もあったんですけどねえ。

>F Friesさん

ありがとうございます。

罰金を避けるために保険が満たすべき条件は、別にIRSが定義していて(これがminimum essential coverageという紛らわしい名前なんですが)、そこで「Medicare Part AかMedicare Advantage planでもおk」となっているようです。

>通りすがりさん

ありがとうございます。

税制と同じで、政治的妥協(と言っても、まだ妥協同意点に到達してないけど)の複雑なパッチワークみたいな制度になりつつありますよね。

メディケアも制度設立時は「社会主義政策だ!」という批判も強かったそうですね。今は皆メディケア大好きで、それなしの世界は考えられない感じですけど。

オバマケアも、施行され利用者が増えたら、同じように愛される(笑)のではという人もいるんですが・・・

若くて余りお金無い(でも比較的健康な)層にとって、保険料、自責額、Co-pay, Coinsuranceで、何十、何百、何千ドルといった額が出て行くのは大きな痛手だし、「保険の意味無いじゃん」と思って参加しない人がいるかも・・・というのが現時点の不安シナリオのようですね。そういう人が保険入ってくれないと、リスクシェアの制度が成り立たないのも難しい所。

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