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401(k)諸々新制度デビュー

jinmei

筆者の勤め先の401(k)プランは、以前はよく言って平凡、悪く言えば管理会社のカモで、言い訳程度の低コストfundが一つある以外は地雷だらけだったのだが、ここ一年くらいの間に劇的に改良され、ついにほぼ最強といえるレベルまで成長した。想像するに、昨年末あたりにprivate equityに買収されてESPPやRSUといった株式ベースのbenefitがなくなったため、他の形でのインセンティブを提供する必要ありということで401(k)プランの改善が進んだのだろう。一方、改善点は多岐にわたっていて相互に関連している部分もあり、かなり複雑であるため、きちんと使いこなすためにはそれなりの勉強が必要になりそうである。そこで、一度これらの改善点をまとめ、注意点を洗い出すとともに今後の拠出・運用戦略についても考えてみることにする。

これまでに導入された主要な改善点を列挙すると以下のようになる:

  • 雇用者拠出(company match)のTrue Up(以前書いたblog記事参照)
  • After-tax拠出とそこからのin-plan Roth conversion
  • (プランが用意するfundに限定されずに自分で自由に運用できる)brokerage option
  • 雇用者拠出の増加
  • 一部fundの(よい方向への)入れ替え

以下、それぞれの項目についてもう少し細かく考える。

雇用者拠出のTrue Up

True Up自体については以前のblog記事参照。その段階では推測だけだったが、その後導入されてから確認したところでは、やはり年の途中で退職するとTrue Upは無効になるとのことであった。したがって、これも前回考察したように、True Up導入後もpretax部分を早期maxoutしてしまわないように調整する方が安全なのだが、筆者は不覚にも今年も早期maxoutしてしまった…。給与からの天引き率はonlineで変えられるのだが、それが反映されるまでに少し時間がかかるようで、maxoutが近づいた頃にちょうど年に2回あるボーナスが出て、そこで一気にmaxに到達してしまったのである。そういうわけで、今年一杯は(クビにはならないとして)転職しないか、転職するなら、もらえなくなるmatch分を別な形で補填してもらうように交渉するとかの配慮が必要になりそうだ。

After-tax contributionとin-plan Roth conversion

勤め先のプランには以前からRoth 401(k)やafter-tax拠出という選択肢もあったのだが、当初はafter-taxへの拠出をRoth型にコンバートする手段がなかった(在職中はもちろん、退職時にRoth IRAにconvert&rolloverすることも不可)ため、after-tax拠出にはほとんど魅力がなく筆者も利用していなかった。最近になってついにin-plan Roth conversionが許されるようになり、一部で言うところの“mega backdoor Roth”(の一形態)が可能になった。

勤め先プランのafter-tax拠出とRoth conversionに関連するルールの主な特徴は以下のとおり:

  • pre-tax, Roth, after-taxおよび雇用者拠出を合わせて法律上の上限(2017年で$54000)まで拠出可
  • after-tax由来の資産をRoth 401(k)に即時in-plan conversion可
  • Roth 401(k)由来の資産は退職時にRoth IRAにrollover可

これらをすべて合わせると、実質的に最大$36000程度をRoth 401(k)/IRAに拠出できることになる。とくに、即時convert可能という部分が大きく、おかげでafter-tax由来の資産をearning部分が実質0の状態(つまり追加納税なし)で属性だけRothに変えた上でリスク資産に投資できる。”mega”のつかないbackdoor Roth同様、これはloophole以外の何物でもないという気がするし、実際制度説明のときの担当者もそういう言い方をしていたが、IRSなり議会なりがそれを公式に禁止するまでは遠慮なく利用させてもらうのが正解だろう。

また、退職時までは待つ必要があるものの、いずれはRoth IRAへのrolloverも可能なので、401(k)のままにしておいた場合のrequired minimum distribution問題にも悩まずに済む。

最初からRoth IRAで運用できる場合との比較だと、純粋な401(k)の場合は投資可能対象が限定されているという点が若干不利になり得るが、現在の勤め先のプランでは株式と債券の両方に十分許容できるファンドが提供されている(後述)のであまり問題ではないし、どうしてもプランのファンド外に投資したければbrokerage option(これも後述)を使うという手段も提供されている。

After-tax拠出について一つ注意点になりかねないのは、雇用者拠出との関係である。投資効率からすれば、まずpretax枠を一杯にした後でafter-taxへの拠出をはじめるのが正しい手順である(早い時期に実質的な手取りを増やせるし、結果的に満額拠出ができなかった場合にpretax分をmaxoutできずに終わる事故も防ぎやすいため)。しかし、上のTrue Upの項で述べたように、True Up相当の制度がない状況でpretax枠を早期にmaxoutすると雇用者拠出分を取り損ねる可能性がある。筆者の現在のプランでは幸いTrue Upが導入されているので、ここを心配せずにpretaxのmaxout後にafter-tax拠出をはじめるという手順を取れるが、そうでない場合はpretax分を余すことのないように注意しつつafter-taxと並行して拠出するという若干繊細なオペレーションが必要になる。

$54000の上限には雇用者拠出分も含まれているという点も注意が必要である。とくに、True Upの効果で雇用者拠出が追加で補填される場合、それを考慮せずにafter-tax枠も埋めてしまうと過剰拠出状態になってしまう。$54000の枠すべてを使い切れる人自体そう多くはないかもしれないが、幸いにしてそれを可能にするくらいの給与がある場合、True Up分による補填部分を自分で計算しつつ総計が過剰拠出にならないようにうまく調整する必要が出てくるだろう。ただし、もしTrue Up分を足すことで上限を超えてしまいそうな場合は、true upに必要な分だけ従業員拠出分の過剰拠出として払い戻し(return of excess)になり、翌年のtax returnで精算することになるようだ。したがって、うっかり枠を使い切ってもtrue up分をもらい損ねることはない。

Brokerage Option

Brokerage optionは、401(k)に拠出した資金を401(k)プラン提供のファンドに限定せずに自分の好きな金融商品に投資できるようにするオプションである。Vanguard(筆者の現401(k)プランの管理会社である)の一般の証券口座で売買できる株・債権・ファンド・ETFなどのほとんどの商品を売買可能らしい(derivative系商品は除外されているようだが、いずれにせよ筆者には不要である)。Vanguardの401(k)口座内別口座のような形でVBO(Vanguard Brokerage Option)という子口座が設定され、メインの401(k)口座内のfund exchangeと同じような操作でVBOとの間でお金を出し入れし、VBO内で好きに投資してよいというものである。

ただし、年間$100の口座手数料がかかる。401(k)プラン内のファンド内によいものがなく、資産額がそれなりに大きければ、VBOで購入する商品のexpense ratio(ER)の差で十分元が取れるだろうが、VBOで運用する資産額が少ない場合は実質的にかなり高いERの商品に投資している形になるので注意が必要である。

筆者の場合、VBOが提供された当初はプラン純正の債権ファンドがゴミだった(次項参照)ため、筆者は迷わずVBO口座を開設し、そこで低ERの債権ファンドに投資していた。ただ、最近のファンド入れ替えによってメイン口座にも十分よい債権ファンドが提供されるようになったので、口座手数料を払ってまでVBOを使い続けるかは悩ましいところであった。

しかし、mega backdoor Roth(前項)が可能になったことでまた事態が一変した。この方法でRoth型の資産となった拠出分についても、メインのプラン提供ファンドに投資するので問題があるわけではないのだが、Rothの特性を活かすことを考えるなら、VBO利用でもっと有利に運用できそうである。筆者は具体的にはREITファンドに投資することを考えている。債権同様、REITも税効率が悪くて税優遇口座向きである上に、債権と比べるとより大きなキャピタルゲインが期待できる。その点で引き出し時に非課税となるRoth型口座向きと言えるだろう。幸か不幸か、プラン提供のREITファンドは検討に値しないゴミ(ER 0.78%のアクティブファンド)であるため、REITに投資するなら現状VBO利用が必須である。

ただし、ここでまた重要な注意が必要になる。VBO口座内にpretaxとRothそれぞれに由来する資金が混在していると、VBO内earningのpretax (deferred tax)/Rothの属性は、earning全体を合計した上で大元の投資金の属性に応じて振り分けられるらしい。たとえば、VBO口座にpretax, Rothからそれぞれ$10Kずつを移し、前者はfund Xに、後者は別なfund Yに投資したとする。何年後かに引き出したりrolloverしたりする際に、fund Xは$10Kのまま、fund Yは$20Kに増えていたとすると、earning分の$10Kはもともとの投資金の比率(50:50)に応じてpretax分$5K、Roth分$5Kということになってしまう。せっかくREITのように(長期平均的には)大きめのearningが見込めそうな対象に投資しても、そのうちの相当部分をdeferred taxとしてordinary income扱いで課税されるようなことになっては苦労のかいがない。これを避けるためには、VBOに投資している資産を一端売却してメインの401(k) pretax口座に戻してVBOを空にした上で、改めてRothからの資金をVBOに移す必要がある。なお、このようにしてRoth由来の資金だけにした後でVBOで運用したお金をメインの口座に戻す敵は、きちんと全額がRoth由来ということになる(Vanguard担当者談)そうなので安心である。

その他の改善点

最後の2つ(雇用者拠出の増加とfund入れ替え)は制度的に大きな改善というわけではないが、拠出する従業員にとって嬉しいことには変わりない。Fundの入れ替えについては、債権fundがPimcoの(かなりERの高い)active fundのみだったのが、VBTLXが加わったのが個人的には大きい。勤め先のプランは、管理会社がVanguardの割には結構疑問な高手数料fundが並んでいるのだが(おそらくいろいろと大人の事情があるのだろう)、アメリカ株式クラスに以前から用意されているVTSAXに加えて債権クラスにも良心的なfundが用意されたので、個人の運用の中心になりそうな最低限の道具は提供され、あとは従業員のリテラシー次第というような形になっている。

今後の方針

最強レベルに成長した401(k)プランをできるだけ有効活用するべく、筆者は現在運用体制の改変中である:

  • after-tax 401(k)に全力で拠出する。Rothへのconversionができるようになったのが最近だったため、after-taxへの拠出もまだはじめたばかりであり、今年はmaxoutまではいけないかもしれないが、貯金には余裕があるのでごくわずかな遊びを残して給与とボーナスの大部分を拠出する心づもりである。
  • after-taxに拠出した資金はただちにRoth 401(k)にin-plan conversionする
  • 現在VBOで運用中のpretax由来の資産は売却してメイン口座に戻す(実行中)
  • VBOが空になったらRoth 401(k)の資金をVBOに移動してREIT index fundに投資(今後の予定)
  • 年末まではクビにならないように気をつけ、転職も控えてtrue up分を確保
  • True up分も考慮に入れつつ総拠出額をモニタして、ひどい過剰拠出にならないように気をつける。ただし少々の過剰拠出は恐れず、あくまでmaxoutを狙う
  • 来年からは、まずはpretax枠にmaxoutぎりぎりまで拠出し、残りの期間はmatchを取るのに最小限な分だけpretaxに拠出しつつafter-taxにも平行拠出し、後者は上記のようにVBOで運用

以上のうちのいくつかはまだ実行途中または実行前であり、実際にやってみたら新しい問題に気がつくことがあるかもしれない。その場合にはまたblogを更新する予定である。

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