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「Big 6」による税法改正声明文発表(国境調整正式取り下げ)

Big 6が今週中にも税法改正に関して何らかの声明を発表するという憶測が週前半からあり、今週に入って以前にも増して下院、上院、大統領府の重鎮がかなり議論を重ねていて慌ただしい感じだった。上院がオバマケア廃案に未だ手間取っている中、次の立法の目玉となる税法改正の方は水面下でかなり動きがあるように見えた。そして今日、Big 6の発表に漕ぎつけここに来て一応一つ心理的に大きな進展を見たと言える。

ここでいうBig 6は会計事務所のことではない。と言っても今の人は「だって会計事務所はBig 4なんだから会計事務所の訳ないじゃん」って思うかもしれないけど、その昔、会計事務所はBig 6だった。というか更に以前は実はグローバルなネットワークを持つ大手会計事務所はBig 8として知られていた。Big 8は70年代後半から80年代に掛けてグローバルネットワークを完備して多国籍企業、特に米英企業に対する世界ベースでのサービス提供能力を誇っていたが、1989年にEWとAYが合併して今のEYができ、DHSとTRが合併して今のDTとなり、Big 6時代が到来した。DHSは黄色いワークペーパー、TRは薄緑のワークペーパーで、合併後しばらくはその色が違うと旧DHSやTRのパートナーはレビューするのが嫌だと言ったりした合併に伴う悲喜交々の逸話も今は昔だ。その後、1998年にPWとCLが合併して今のPwCとなり、Big 5となる。この頃の話は覚えている方もいるだろう。で、2001年には例のEnron事件でAAが解散に追い込まれ、現在のBig 4体制に至っている。

でも今日の話しは会計事務所の歴史の勉強ではなく、米国税法改正の中心的なプレーヤーを意味するBig 6による声明文の話しだ。何がBig 6かと言うと、立法府の両院リーダー、そして両院の税法立案担当委員長、そして行政府から財務省長官、国家経済委員会長という面々で構成される税法改正の最高意思決定の重責を担う方たちのことだ。すなわち、下院議長のPaul Ryan、上院多数党院内総務(凄い役職名・・)のMitch McConnell、Steven Mnuchin財務長官、Gary Cohn国家経済委員会長、下院歳入委員会長のKevin Brady、そして上院財政委員会長のOrrin Hatchの6人だ。迫力満点の強者揃いだ。

そうそうたる顔ぶれのこのBig 6。そんな凄いメンバーによる声明だけに4月の大統領府のレターサイズ一枚の原理原則とは異なる内容の濃いものが発表されるのかと言うとそうではない。内容が軽いであろう点は充分に予想されていたことで、今回の声明は単に両院と行政府が足並みを揃えて税法改正の決意表明ができた点に心理的な意味が見出さるという性格のものだ。税法の内容そのものとしては今回の声明もトランプ大統領案の発表に劣らず目を見張るものはない。敢えて言えば国境調整は正式に取り止めという点が確認された位だろう。国境調整は輸入業者等の反発が激しく、下院、上院 行政府を一枚岩にする際の大きな足かせとなっており、ここ数カ月ゾンビ状態だったのでこの点に特に斬新さはない。

後は相変わらずの共和党節が炸裂していて何となく微笑ましい。何年も実現できなかった税法改正にコミットしている議会と大統領により米国市民の皆さんにより多くの手取りを持ち返ってもらうとか、雇用促進、経済成長を助長するとか、ミドルクラスを一番念頭に置いているとか、大統領の強いリーダーシップの下、行政府は議員の先生200人、経済界から数百人規模のステークホルダーと意見交換を重ねてきたとか、4月26日のトランプ政権記者会見のデジャヴ状態だ。

具体的な点と言えば、税率はできるだけ低くし、中小ビジネスにもその恩典を確保し、前代未聞の設備投資減税を試みるという位。テリトリアル課税移行を示唆するコメントもあるがこの点は既に業界では織り込み済みなので逆にテリトリアル課税にならなかったらビックリ。また10年間とかの期間限定ではなくできるだけ恒久措置にしたいとしている。う~ん、トランプのレターサイズ1枚も軽かったけど、今回のはナンともっと軽い。議員200人だの業界の重鎮だのと何カ月も会ったり、Big 6間で何カ月も議論を重ねてきた結果がこれというのはチョッとお寒い気がしないでもないけど。税率は行政府15%、下院歳入委員会のThe Blueprint20%だけど、特に具体的な税率への言及はなし。中小ビジネス云々はパススルーにも低税率を適用するというものだろうけど、かなりテクニカルな問題を秘めているだけに今後どのように条文化されるか楽しみ。また設備投資減税の部分はキャッシュフロータックスを示唆しているのだろうか。The BlueprintのDBCFTのDBはなくなったのに都合のいいCFは残すということなのだろうか?そんなコンセプトも何もない単なるポリティクスの産物を目の前にUC Berkeleyの経済学者はさぞ落胆していることだろう。金利の損金不算入とか悪いニュースは一つも入っていないけど、設備投資をキャッシュフローで費用化させて、国境調整なしでは一体どこまで税率を落とせるのだろうか?Aggressiveな税率をターゲットにすると代替歳入源が必要となり、変な方向に話しが行く可能性もある。かなり支離滅裂というか場当たり的。オバマケア廃案が失速しているせいで3.8%のNIITとか未だ残った状態での税法改正となるとそちらも税法改正の枠で何とかするんだろうか。党内調整が大変そう。

まあ、下院歳入委員会と上院財政委員会がいよいよ本気でMarkup(条文のドラフト)に入るということが確認できただけでもプラスと評価しておこう。