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過少資本税制の文書化要件適用1年延期

国境調整が正式に闇に葬られ「消費地課税よ永遠に」となった翌日の7月29日、日本企業の米国オペレーションにとってもうひとつ最大の関心事と言ってもいい米国過少資本規則に基づく文書化要件適用開始が一年延期されると発表された。

東海岸では金曜日も正午を回り、NYCは比較的涼しくて過ごしやすく週末に向けていい感じのVibeが街に漂い始めた矢先、財務省によるNotice 2017-36発表というニュースが届いた。過少資本税制(正式にはDebt/Equity区分と言うべきだけど)に基づき2016年のオバマ政権末期に滑り込みで最終化された財務省規則は、とてつもなく複雑な「Funding規定」が既に法的な効果を持っている一方、文書化規定は2018年1月1日またはそれ以降に締結される関連者間ローンから遅れて適用となっていた。更に最終規則では、文書化を整えるタイミングも申告書提出までと緩和されていたので、3月決算の多い日本企業的には早くても2019年1月15日(なぜかIRSは申告期限を一月遅らせているので)までに対応すればいいことになっていた。

とは言え、時は既に2017年夏。そろそろ文書化対策も本腰を入れて考えなくては・・、となりそうな絶妙なタイミングで適用一年延期の通達が出たことになる。これで3月決算の場合、最長2020年1月までに文書化を整備しなくてもいい形となり、文書化熱は又しても大きく後退することとなりそうだ。2020年と言えば東京オリンピックの年だし、現時点では遠い未来のように感じられる。でも多分直ぐにその日は来てしまうんだろうけど。

以前から触れてるけど、最終規則は特に従来からのCommon Lawに基づくDebt/Equity区分の概念には手を付けておらず、したがって今までの判例等に基づく考え方がそのまま今日でも適用される。少なくとも前政権下の財務省のポジションは文書化要件は従来から充足が必要であり、最終規則では単にその点を正式に再度認知し、また文書化の内容を統一しただけというものだ。したがって、今回の延長も必ずしも文書化が2019年の関連者間ローンまで存在しなてくもいいと言う性格のものではなく、「文書化ナシ=Equity扱い」という推定規定の適用がない、または文書化の内容に関して必ずしも規則通りでなくてもいい、という意味を持つものと考えるのが正しい。文書化要件の中でも特に不履行時の法的権利の行使実績とかは必ずしも規則通りには担保されていないケースも多いだろうけど、レバレッジが過大と判断され得るケースでは返済能力の合理的可能性とかはある程度文書化しておく必要がある。

ちなみに最終規則はトランプ新政権による「悪法」の見直しプロセスで、納税者側の負担が大きい規則の1つと認定されており、今後、更なる見直しが入る可能性がある。新政権誕生の頃には、この最終規則は即廃案かと期待されていたけど、現実には何をするにも法的なプロセスを経ないといけないので結構時間が掛かる。有権者の忍耐がどれだけのものかという点は2018年の中間選挙の行方を考える上で重要なファクターだろう。ただ、WSJの記事によると、トランプ政権が何も実行できていないというのはオバマケア廃案、税法改正等、立法府の議会の問題が大きく、行政府側で達成できる規制緩和は相当実行されているという。確かに税法の世界でも規制緩和の話しはあっても以前のように複雑な規則が乱発されていることはない。悪法と認定された規則を今後新政権下の財務省がどのように処理していくか興味深い。