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米国税法改正大綱 「Unified Framework」(1)

Max Hata
4月に大統領府がレターサイズ一枚、7月にはBig 6が今度はレターサイズ半ページで米国税法改正の原理原則というか方向性を大げさに発表をして以来、いくらなんでもそろそろ具体的な改正内容を発表しれくれないと2017年中の改正は不可能になるぞ、と国民の堪忍袋の緒が切れ掛かっていた、というかオバマケア廃案失敗で共和党主導の議会の無力ぶりに有権者の怒りが頂点に達していた、このタイミングでようやく大統領府および両院の共和党幹部により米国税法改正の大綱とも言える「Framework」なる発表が行われた。

ここまで待たせたからには相当中身の濃いものになっているんだろうな、と数週間前から様々な憶測があったが、発表日の9月27日が近づくにつれ今回も「ハイレベル」な原則っぽいものに留まると噂され始め、え~いつまでやってんのって感じだったけど、逆に怖いもの見たさに似た不思議な感覚で実際の発表内容が注目されていた。

そんな中、予定通り9月27日に発表された大綱は9ページ!う~ん。ボリューム的には大統領府による4月の発表会の配賦物の9倍。Big 6による7月の発表の18倍の紙面を割いた力作(?)と言える。で、肝心の内容はと言うと大統領府の発表との比較でとても9倍とは言えず、せいぜい2.5倍くらいの感じ。

まあ、とは言え、1986年以来の大規模な税法改正に向けてようやく重い腰が上がり一歩(まだ残り99歩未踏?)を踏み出した観はある。まさに「Let me kick it like it's 1986!」。この歌詞、ここ1カ月くらいやたらNYCでもL.A.でもFMでヘビーにプレーされる「Feel It Sill」からだけど、この部分の歌詞聞く度に税法改正を思い出していた。この曲聞いて税法改正を連想するようなオタクな人は世界広しと言えども僕以外に存在しないのは間違いない。Portugal The Manによるオリジナルもノリが良くていいけど、MedassinによるRemixバージョンもAmbientでなかなかGood。オリジナルはLA.、RemixはNYCって感じかもね。

さて、一歩踏み出したのは評価できるとして、でもちょっと遅すぎた観は否めない。2017年内に法制化を目指す点は共和党幹部的には未だブレていないようだけど、その無謀な根性は評価に値いするとしても、後3カ月強の月日を残すのみだけという点を見てもそのアグレッシブさが伝わるけど、実際に議会の開会日数は40日を切っているというと無謀ぶりがもっと伝わるだろう。そんな短期でこんな大それた改正が本当に法律になるのだろうか。法律案の原案作成すらこれからだし、その後の審査、両院での審議、すり合わせ、成立と先は長い。

今回から数回に亘りUnified Frameworkに記載されている改正の方向性の詳細を見ていきたい。まずこの大綱のタイトルだけど正式には「Unified Framework for Fixing our Broken Tax Code」。Unifiedというのは下院、上院、大統領府というステークホルダーから既にコンセンサスを得ているという意味。逆に言えば、曖昧に表現されている部分、または敢えて避けて通っている部分は未だにコンセンサスに至っていないという厳しい現実を露呈しているとも言える。

Unified Frameworkの表紙はどことなく昨年発表された「The Blueprint」を思わせる。今回のUnified FrameworkをPaul Ryanが手に持って嬉しそうに公表している姿を見ていると、一年強前にThe Blueprintを公表していた姿がダブる。Paul Ryanもオバマケア廃案失敗等でどことなくチョッとやつれた感じ。

一年前はBlueprintだったけど今回は「Framework」。どちらも方向を示すもので詳細な法律ではない。Blueprintって用語はもう使えないだろうから代替の用語選択としてはまあいいチョイスだと思う。でも、それに続く「Fixing our Broken Tax Code」っていうのはなかなか毒々しい。本当だから仕方ないかもね。。

「Unified」の部分は今回の立法プロセスのキーとなるアプローチ。オバマケア廃案の最初の下院案が根回しなく公表され、結局廃案に追い込まれるという苦い経験があるだけに下院が法原案を作成する前段階で前広に大枠は合意しておくというアプローチだ。オバマケア廃案の試みはご存知の通りその後も混迷を極めまくり、ついに2017年の予算調整案に基く廃案期限の9月30日までに法案が通らないという選挙公約違反状態に陥っている。2018年の予算調整案に税法改正と並んで再度盛り込むという敗者復活的なうわさもあるにはあるけど何回やっても共和党が一枚岩になれなけば難しい。John McCain、Rand Paul、Lisa Murkowskiの3共和党上院議員は共和党の党是的には決して許されない憲法違反に近い大きな連邦政府、大増税を実現したオバマケアを部分的にでもリバースする機会を潰した功労者として歴史に残るだろう。この3人はNancy PelosiやChuck Schumerとかの民主党幹部の誰よりもオバマケア存続のために大活躍したことになる。John McCainはトランプが嫌いという理由だけでも絶対に賛成票は投じないにしても、先のSkinny廃案には賛成していたRand Paulは一体どうしてしまったんだろうか。このRand Paul先生こそ、日米租税条約の改定議定書が未だに批准されない理由の張本人だ。いろんなところで大活躍してくれている。

で、Unified Frameworkの話しに戻るけど、まず第一印象としては歳入部分の詳細が不明でブラックホール的なイメージ。これだけの減税をどうやってFinanceするのかという点に関して一部の控除を撤廃するという以外は敢えて無視しているのかな、と思えるほど触れられていない。The BlueprintではBorder Adjustmentとか金利の損金不算入とか一応財源が手当されていたので、今回は対照的だ。ここをどう読むかだけど、共和党幹部に何のアイディアもないと読むか、実は手当の目途は付いているけど、今公表すると損を被る業界団体等から猛反発を受け、ロビー活動で動きが取れなくなるシナリオを避けるため、敢えて奇襲攻撃で行くつもりと読むべきか。おそらく後者だろう、というか後者であると願いたい。

ただ、歳入原資は結構な重要ポイントだけに、その点を不明なままにしているFrameworkを早速今朝の専門誌とかでは「Nowhere Plan」とか揶揄している。Nowhere Planとか言われると、どうしてもThe BeatlesのRubber Soulに入っているNowhere Manを思い出す。武道館の東京公演でもライブで演奏したJohn Lennonの名曲だ。John Lennonと言えば、ついこの前Paul McCartneyをMadison Square Gardenで見た際、Set Listの結構な部分をThe Beatlesの曲の中でもどちらかと言うとJohn Lennon系の曲が占めていたのが意外かつ印象的だった。数年前にL.A.のStaples Centerで見た際はThe Beatlesの曲でも当然McCartney自作の曲がほとんどだったけど。今回はOpeningのA Hard Day’s NightもどちらかというとJohn Lennon系の曲だし、まあこの当時はまだ本当にLennon/McCartney共作のエレメントもあったかもしれないけど、以前は同じSGT PepperからでもGetting Betterとかやってたのに、今回はBeing for the Benefit of Mr. Kiteと言うおよそJohn Lennon以外がプレーすること自体が想像し難い曲を取り入れていた。A Day in the Lifeもそうだ。まあA Day in the Lifeは曲の真ん中のブリッジ部分はどう聞いてもPaul McCartneyが作った部分をくっつけているので半分は自作と言えるかもね。

で、何の話しだったかと言うとUnified Frameworkに歳入原資の話しが欠落しているというところだった。もう一つ興味深いのは税法改正の発効のタイミング、施行日に触れられていない点だ。その一方で、後述する設備投資減税に関しては「2017年9月27日以降に事業用途に供された動産」と異様に詳しくタイミングを規定してみたり、となかなか面白い。法人税とかは2018年1月またはそれ以降に開始する課税年度から適用というのが順当だろうけど、個人所得税とかは2017年1月に過去訴求とかないんだろうか。

と、いろんな意味で面白い発表だけど、次回から法人税・事業課税、クロスボーダー、個人所得税・遺産税、今後の手続き、等もう少し詳細に見ていきたい。

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