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米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(3)

前回はBEATの適用対象となる納税者の定義にフォーカスしたけど、今回はBEAT適用時のキーコンセプトとなるBase Erosion PaymentとBase Erosion Benefitに関して。ちなみにBEATも他の税法改正に基づく規定に関しても全てそうだけど、可決から未だ3週間も経っていない(このポスティングを書いているタイミングで)。なんで、ここに僕が勝手に書いていることも現時点での解釈や理解であって、今後のガイダンス、Notice、財務省規則、その他で変わってくることもあるし、僕の法解釈が他の専門家と同じとは限らない。念のため。

前回のBEAT適用対象の話しで分かってもらえたと思うけど、同じ納税者でもBEAT対象かどうかは課税年度により結果が異なる可能性がある。3つの条件を基に毎年適用有無を検討する必要があり、例えば1年目はBase Erosion%が3%以上で適用があっても、2年目のBase Erosion%が3%未満であればその年度はBEATの適用はない。$500Mの売上基準もしかり。

で、ある課税年度に関して納税者がBEAT適用対象となる場合、その課税年度に「Base Erosion Minimum Tax Amount」(BEATミニマム税)があればそれを支払うこと、そしてBEATミニマム税は税法下で課される他の法人税に「プラス」で課せられるもの、と冒頭に規定されている。これらの規定からBEATミニマム税は米国税法上の「Income Tax」に当ることとなり、外国法人の支店とかがBEATミニマム税の対象となる場合には本国で直接税額控除が取れるケースが多いのだろうか。BEATミニマム税は「修正課税所得に10%等のBEAT適用税率を掛けた金額」(「BEAT法人税」)が「Section 26(b)で規定される通常の法人税」を超える額と規定されている。

この比較計算を行うには当然だけど比較対象となる「通常の法人税」と「BEAT法人税」」という2つの金額を把握する必要がある。通常の法人税の確定も意外に込み入っているので、この点に関しては次回以降に触れるとして、今回はBEAT法人税の算定法に関して若干掘り下げてみたい。

BEAT法人税は修正課税所得と呼ばれる課税ベースを算出し、それにBEAT適用税率を掛けて計算される。BEAT法人税は税率を掛けて算定した後、税額控除を使って減額することは認められない。修正課税所得は通常の課税所得に2つの調整を行って確定される。まずひとつはBase Erosion Benefitと呼ばれる金額を加算。そして次に、通常の課税所得算定時に過年度からの繰越欠損金を使用している場合には、そのNOLに占めるBase Erosion%を加算する。Base Erosion%の考え方に関してはBEAT適用対象を詳解した前回のポスティングで触れているのでそちらを参照して欲しい。 Base Erosion Benefitというのは大概においてBase Erosion Paymentと同様のケースが多いと思うけど、Base Erosion Paymentのうちその課税年度に損金処理されている部分を意味する。例えば、海外関連者から償却資産を購入する場合、購入代金そのものはBase Erosion Paymentに当るけど、仮にその資産が複数年で償却されるケースでは各課税年度の償却額がその年度のBase Erosion Benefitに当る。

Base Erosion Paymentは法文上、大別して4つのタイプの支出で構成されるが、共通点は全て外国の関連者に支払われているという点。ここで言う「支払い」だけど、発生主義で課税所得を計算する法人を対象としている訳だから税務上「発生」したと認識されている項目と言う意味で現金等での支払いが済んでいなくても対象となる。で、最初のカテゴリーは法人税計算上、損金算入が認められる支払い。BEATはBase Erosion対策だから損金算入されない項目、例えば配当とかは関係ない。

2つ目のカテゴリーは償却対象資産の取得対価の支払い。ここで言う償却にはDepreciationばかりでなくAmortizationも含まれると規定されることから有形償却資産ばかりでなく、無形資産も含まれることが分かる。

3つ目のカテゴリーは再保険料(Reinsurance Payments)。この項目は元々の上院案では個別で名指しされていなかったような記憶があるけど、最終法文では特筆されてBase Erosion Paymentに指定されている。外国関連者にReinsurance Paymentsを支払って損金にしているんだったら最初のカテゴリーに含まれる気がして最初読んだ時はチョッと不思議だったんだけど、おそらくテクニカルにはReinsurance Paymentsは「控除(=Deduction)」ではなく、売上原価同様に税法の位置づけ的には総収入から差し引く「Reduction」に当るので、ちゃんと加えておかないと「これはReductionだからBase Erosion Paymentではありません」という最もな主張をする納税者が出てくるのに網を掛けているように思う。時間がなかったのに上院も良く考えてるよね。でも再保険料って結構Base Erosionの温床みたいなイメージがあるからここで釘を刺しておかないとってとこなんだろう。ここで言うReinsurance Paymentsは生命保険および他の保険業が保険料収入を決定する際に差し引くことが認められている「return premiums」および「premiums paid for reinsurance」と規定される。ちなみに保険業に対して既存の税法でもSubchapter Lっていう部分で保険業独特の取り扱いが規定されており、今回の税法改正でも保険業のみに当てはまる改正が「Insurance Reform」というセクションに16条項も盛り込まれている。

4つ目のカテゴリーは日本企業には基本的に関係ないと言い切っていいと思うけど、米国法人でInversion取引を通じて外国法人になってしまったグループに対する懲罰的な規定。以前から触れている通り、米国が高税率と言うことで米国から他国にBase Erosionしようという動機はどこの企業にも(日本企業以外は?)多かれ少なかれ存在するんだけど、財務省の長年に亘るBase Erosion実態調査に基づくと、徹底的にBase Erosionを最大限化しているのはInversionしていった米国企業というデータがある。まあ、そのためにInversionすると言ってもいいので当然だけど。このような調査結果から他法人と区別されて特別に差別的に選択され、より厳しい扱いを受ける始末になっている。具体的には後述のように売上原価は通常の法人にとってBase Erosion Paymentには当たらないと規定されるが、Inversion企業グループに対しては売上原価もBase Erosion Paymentとするというものだ。この懲罰的規定は2017年11月10日以降にInversionした法人が対象。

次回はBase Erosion Paymentから除外される金額について。