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米国過少資本税制385条規則の「Funding規定」緩和策 (2)

前回はAbbey Roadに収録されているOut-trackの話しと、Section 385には怖~い歴史があるっていう点に触れた。 実は書き始めてから気付いた偶然だけど、Abbey Roadのオリジナルリリースと385条の制定は共に1969年と双方共50年前の話しだ。今回はSection 385の悲劇の沿革に軽く触れてみたい。しつこいけど、Section 385っていうのは、そのものが過少資本税制という訳ではなく、税務上の「Debt/Equity Classification」に関して、議会が財務省にその判断基準にかかわる規則の策定権を与えている条文に過ぎない。最近は境界線がボケてる局面も散見されるけど、三権分立の概念が徹底している米国では、財務省は、議会が制定する条文そのものに規則の策定権およびその範囲が規定されていない限り、財務省規則を策定することはできない。

従来から引き続き今でも、特定の債務、基本的には関連者からの借入、を米国税務上、借入と認めるかまたはEquityと見るか、っていう検討は個々のケースの事実関係を基に、積み重なる判例ベースで行う。この点が争点となるのは、例えば同じ100を親会社から子会社が受け取り、借入ですって言えば、5とか10の支払利息は毎期米国で費用となり、いくつかの制限規定を乗り越えることができれば損金算入できる。一方、Equityと呼んでしまうと、5とか10のリターンは配当となり、費用化できない。受け手国の税率、受け手側の課税ポジション、所得の取り扱い、源泉税、FTCなど複雑な検討をしないとどちらが得かは一概には決められないけど、米国議会や財務省から見ると100は借入でない方がいい。100の受け取りにどんなラベルを貼るかは身内の話しなのでほぼどうにでもなることから、納税者は借入って言ってるけど、本当に債務者側に借入能力(=返済能力)があるか、返済や利払いの期日が規定されていたり、善意の債権債務者間の関係に準じる関係が構築されてるのか、等の観点から実態として借入と認めるべきか、っていう点の確認が必要となる。その際に、特定のDebt/Equity Ratioとかの安全ガイドラインは存在しない。グループファイナンスカンパニーだったら97・3でもいいかもしれないし、スタートアップだったら50・50でもダメかもしれないし、これは個々の取引の経済分析の世界。

条文との対比で判決は、個々のケースの事実関係を徹底的に加味して法律を適用するため、特定の事実関係には整合性が高い検討・結果が可能になるっている優れた点を持つ一方、複数の判例を基にCommon Lawベースで将来に使える一定のルールを見い出す、すなわち判例をシンクロナイズしようとすると、取引を取り巻く事実関係が判例と同一と言うことはあり得ないし、また控訴審の管轄地域毎に異なる解釈が共存したり、最高裁以外の判決に関してはIRSが必ずしも他のケースで判決結果を踏襲しなかったりと、予見可能性が低いという欠点がある。

そこで、予見可能性を高めるため、The BeatlesがAbbey Roadをリリースして未だ3カ月という1969年12月にTax Reform Act of 1969が可決され、Section 385(a)および(b)が制定される。ちなみにニクソン大統領が署名して法律となった1969年のActはAMTを導入した法律として悪名高い。当時はM&A増加を背景に借入規模の拡大が懸念されており、特定の債務を米国税務上、借入またはEquityのどちらと取り扱うかの判断基準をより明確にするという趣旨で規則策定権を財務省に与えるとしている。具体的には(a)で策定権を与え、(b)は判断基準として加味するべき基準を判例ベースに列挙している。

規則策定権を付与された財務省は、実に法律が制定されてから10年以上の時が経過した1980年3月24日に満を持して(旧)規則草案を公表。9カ月後の1980年12月31日に規則を最終化する。その時点で(旧)規則の適用開始は1981年4月30日の予定だったんだけど・・・。

財務省規則に規定された判断基準は、全ての事実関係に適用できる一般ルール策定の困難さを露呈し、喧喧囂囂の論争の末、1981年内そして1982年へと2度に亘り適用開始が延期される。さらに適用開始を待たずに1982年の七草粥も開けぬ1月5日には早くも修正規則草案が公表されることになる。そして、1982年6月にはナンと3度目の適用開始延期措置が発表され、もはや泥沼化。そして、結局適用開始を迎えることなく(旧)最終規則は1983年11月3日、日本では文化の日だけど、ついに完全撤回となった。今回の2016年(新)最終規則の文書化要件が適用延期の末に撤回されたのと似過ぎてて怖いね。

その後、1992年には議会がSection 385に(c)を追加し、納税者が自らが選択する借入・Equityの形式的な区分は、納税者の税務申告時の取り扱い決定には拘束力を持つ旨を規定した。二枚舌禁止ってこと。

このように規則策定には散々な歴史があり、もう二度とSection 385の規則策定権を行使することはないのでは、と思われいた中、(旧)規則の撤回から30年以上の歳月を経て、再度2016年の規則に繋がっていく。1980年代のドラマに懲りたのか、新規則にはDebt/Equity Classificationの判断基準は一切規定されておらず、前文にそれは今まで通り、判例ベースで決めて下さい、と一言だけ触れられている。。

次回はFunding規定及び今回発表された新Funding規定に関して。