賠償責任とアンブレラ保険

賠償責任と保険

賠償責任とは?

賠償責任とは、誰かに被害を与えてしまったとき、損害を金銭的に補わなければならない義務のことです。どんな理由であれ、自分の過失で損害を与えたと認められれば、その責任をお金で取ることになる、という意味です。具体例としては交通事故で誰かを怪我させてしまった場合や、自宅で他人が怪我をした場合です。損害が簡単に計算できる場合は示談で済む事もありますが、損害額が大きい場合や、加害者と被害者が合意しない場合は裁判で賠償責任が決められます。 賠償責任では、保険が補償する物質的な損害とは考え方が異なります。住宅保険であれば、物質的なもである建物と、賠償責任がセットになっています。建物が火事になって焼けてしまった場合は、その再建費用が補償されるので、計算は簡単です。物質的なものは、その物が戻ってくるために必要な金額を計算するだけです。 賠償責任、例えば家に来た人が転んで怪我をした場合などは、損害額の簡単ではありません。医療費に加え*1、怪我で仕事ができなくなった期間の休業補償や、精神的苦痛に対する慰謝料が発生する場合もあります。単純に物を買えば良いわけではなく、いろいろな要素を含め、裁判の判定で補償しなければいけない金額が決まってきます。

賠償責任保険

賠償責任保険はこういった訴訟のリスクに対する保険です。すべての訴訟をカバーするわけではありませんが、基本的には訴訟になったとき、あるいは示談の結果として、保険金が支払われます。 通常は自動車保険や住宅保険などの項目として賠償責任保険があります。この保険項目から被害者への医療費、休業補償、慰謝料などが支払われます。 この保険の目的は自分の資産を保護することにあります。訴訟の判決で賠償責任が問われると、その金額を支払わなければなりません。もし、保険金で足りなければ、自分の資産から払う必要があるのです。また、訴訟社会アメリカでは、資産を持っている人ほど、支払能力があるとみなされて、高額な賠償請求をされる傾向にあります。そこで、自分の資産を守るには、それに見合った保険を掛けておくべきです。

保険金額

自分の資産を守るためには、どのくらいの保険金額を設定すればいいでしょうか?正しい保険金額というのはありませんが、いくつかの目安はあります。 自分の資産を守ることが目的ですから、自分の資産総額は保険金額を決める際の要素になります。一般的に資産が多ければ保険金額も高くするほうが良いと考えます。自分の資産が高ければ訴えられる確率が高くなるからです。 お金持ちでなくても、高額の賠償責任を負わされた場合、自分の資産が無くなることには変わりありません。そこで、最低でもある程度の賠償責任を掛けておくべきでしょう。自動車保険や住宅保険の場合、賠償責任を最高額にしてやっと、最低限の補償がある状態と言えます。米国では州によりますが、これらの保険の最高額は$300,000~$500,000程度です。保険金額は、最低でもこのレベルにするべきです。 これ以上の保険金額を設定するにはアンブレラ保険を使います。都市部に暮らす、中流階級以上の家庭であれば、アンブレラ保険で最低でも$1,000,000を掛けておくべき、というのが最近のトレンドです。

保険金額の一貫性

賠償責任保険は、自動車保険、住宅保険、自営業ならビジネス保険など、それぞれの保険に賠償責任の項目があります。自動車保険では$300,000まで、住宅保険では$100,000までの賠償責任に入っている、というケースがあります。このような場合、自動車事故で相手に怪我をさせてしまった場合なら$300,000までなので自分の資産は守れても、自分の家に来た人が怪我をした場合には保険金額が足りないということが起こります。保険金額が足りなければ自分の資産から払うことになり、資産の保護ができません。 賠償責任保険の目的は自分の資産を保護することを忘れてはいけません。賠償責任を追うことになった場合、その原因が自動車事故であっても、自宅の事故であっても、自分が守りたい資産の金額は変わりません。そこで、自分が加入しているそれぞれの保険の賠償責任の金額を同じにする必要があります。どのような場合でも、常に自分の賠償責任が同じ額まで補償される状態にしましょう。

アンブレラ保険

訴えられやすさ

アメリカでは訴えてもお金を取れない人なら相手にしないのに、お金が取れそうな人ならちょっとしたことでも訴える傾向があります。一人一人の状況によって、お金が取れそうかどうか、つまり訴えられやすさ(Sueability Factor*2)が変わってきます。資産を持っている(実際には持っていなくても、そのように見えるだけの場合も含みます)、ビジネスを営んでいる、あるいは定期的な収入があるだけでも、「お金が取れる相手」と扱われます。 Sueability Factorが高い人は、自分の賠償責任保険の金額を定期的に見直し、状況にあった金額に上げていく必要があるでしょう。自宅を持っている、収入がある*3、自分のビジネスを持っているなど、少しでもSueability Factorが高くなる要素があれば、私は最低でも$1,000,000の賠償責任保険に入る事をお勧めします。

アンブレラ保険の仕組み

ほとんどの自動車保険や住宅保険では賠償責任を$1,000,000にしようと思ってもできません。上限が$500,000程度のものが多く、それ以上はアンブレラ保険でカバーする必要があります。 アンブレラ保険は、賠償責任が自動車保険や住宅保険では払いきれないような高額になった場合、さらにその上に積み増して保険金を支払う保険です。自動車保険で$300,000まで賠償責任がカバーされる場合、$1,000,000のアンブレラ保険は$300,000を超える金額だけをカバーします。 自動車事故で訴訟になり、賠償責任が$700,000になったとします。自動車保険からは$300,000まで満額が支払われます。$700,000まで足りない分の$400,000がアンブレラ保険から支払われることになります。

アンブレラ保険の特徴

アンブレラ保険の特徴は、自動車あるいは住宅といった特定のものを保険対象にするのではなく、賠償責任全般を対象にすることです。アンブレラ保険は基本となる保険を複数指定することができ、基本となる保険の賠償責任をアンブレラ保険の金額まで引き上げる効果を持ちます。基本となる保険は、通常、自動車保険や住宅保険になります。 自動車保険および住宅保険の賠償金額が共に$300,000までの保険を持っていたとしましょう。$1,000,000までのアンブレラ保険に加入すれば、自動車保険および住宅保険がカバーする賠償責任を、どちらも$1,000,000に引き上げてくれます。
基本となる保険の条件、特に賠償責任の最低金額は決まっていますので注意してください。住宅保険が最低でも$300,000でなければならないアンブレラ保険に加入したとします。住宅保険が実際には$100,000までしかカバーしていなければ、$100,000から$300,000まで、保険金額のギャップができてしまいます。仮に事故があって賠償責任が$400,000になった場合、最初の$100,000までは住宅保険が支払い、$100,000~$300,000までの$200,000分は自己負担となり、$300,000を超えて$400,000までの$100,000分がアンブレラ保険より支払われるようになります。アンブレラ保険に入る際には、このようなギャップができないようにしなければなりません。
アンブレラ保険の保険金額は通常、$1 Million 単位になっています。ところがアンブレラ保険の保険料はそれほど高くはありません。その人の状況や、基本になる保険によっても違いますが、おおむね最初の$1 Millionまでは年間数百ドル程度、さらに$1 Millionを追加するごとに100ドル程度の追加になります。 保険料が補償する金額の割に高くない理由は、最初の数10万ドル分は、基本となる保険、つまり自動車保険や住宅保険がカバーするからです。訴訟で基本の保険がカバーしないような高額になる確率は低く、そのため、保険料も安くて済むのです。確率が低くても*4、万が一、高額の賠償責任を負う事になったら人生が大きく狂ってしまいますから、年間数百ドルの価値はあると言えるでしょう。 但し、これは個人で主に住宅保険(持ち家、もしくはアパート)に付加してアンブレラ保険を申し込んだ場合です。個人ビジネスを営んでいる場合などは保険料は変わってきます。
*1:怪我が軽傷で、被害者に医療費だけを払えば済む場合は住宅保険のCoverage Fを使って保険金をすぐに受け取る事が出来る場合があります。
*2:Sueabilityというのは、一部の保険業界(会社)が使っている造語のようです。Suable(訴えることが可能な事象)と違い、単純にSue+Abilityのようです。Being Seud Abilityという方が正確なような気がしますが、意味としてはここで解説している通りです。
*3:仕事を持っていて、一定の収入を得ていると、現在の資産だけではなく、将来の収入も賠償責任の原資となります。今だけではなく、将来の収入も保護する必要があります。
*4:保険料からすれば確率は十分低いのですが、それでも何かで訴えられる確率は、アメリカでは高いと言えます。