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2011年米国タックスの行方(1)- Repatiriation

年末年始にかけて米国の空模様はかなり荒れ気味だ。ニューヨークのあるNorth Eastでは12月から複数回かなりの雪が降ったり、アトランタのあるSouth Eastでも珍しく雪が降ったりした。ロサンゼルスのある南カリフォルニアでは年末までは珍しく雨が続いてパッとしない天気だったのが1月に入ると一転80度近い暖かい日が続いたりしている。

雪のせいで飛行機のスケジュールは乱れまくり、空港で飛行機に乗ってからフライトがキャンセルになったり、Re-Bookされたフライトがまたキャンセルになったり、別の空港から飛ぶことになったり、とにかく苦労が多い。米国を冬に飛び回る際の宿命と言ってしまえばそれまでだが、今年はダイヤの乱れの頻度がチョッと高いように思う。仕事もタックスで忙しいのは仕方がないと諦めもつくが、IT関係とか専門分野外で振り回せれて何だかな~って感じもある。

で、何が言いたいかというと、そんな酷いスケジュールでバタバタしている間に時間が経ってしまい、ポスティングのアップデートができなかったという言い訳だ。今日はモーツァルトの誕生日で1月も後半になってしまった(これを書いていたのは1月27日だったので)。

そんなタイミングではあるが、2010年を振り返りながら、2011年米国タックスの世界で注目度が高そうなトピックを次の通りいくつかについて触れてみたい。

まずは米国企業が外国子会社に眠らせている埋蔵金100兆円をどう米国に還流させるかという「Repatriation」、そして話題の「Sch. UTP」、恐怖の「Economic Substance」の条文化、財政難に苦しむ州と州法人税、とんでもないアドミン作業が増える「Form 1099」の拡大適用の行方、そんなところが個人的に興味深い分野だ。また日本企業にとって2011年はグローバルタックスプラニング元年になって欲しいという点にも触れたい。

*Repatriation(外国子会社に眠る「100兆円」の米国親会社への資金還流)

米国は未だに全世界課税の国なので、外国子会社から配当を受け取る(またはタックスヘイブン税制に類似するSubpart F規定でみなし配当課税される)と外国で得た所得に米国でも課税されることとなる。配当原資に対して課せられたと取り扱われる外国の法人税は税額控除できるが、米国の税率は世界2位(もちろん日本が堂々1位!- 基礎科学事業と違って1位でなくてはいけない・・・?)なので、米国で追加の税金が発生することが多い。多くの米国多国籍企業がさまざまなプラニングを通じて敢えて低税率国に所得を貯めこんでいるからこの傾向は尚更だ。米国多国籍企業のタックスプラニングのハイライトのひとつはいかに税務的に効率よく(=無駄な税金を支払わないで)外国子会社に眠っている剰余金を米国に還流させるか(=Repatriation)にある。

米国多国籍企業は相当なエネルギー(=時間とお金)を費やして「合法的」に所得を低税率国に移し、その後またしても相当なエネルギーを費やして「合法的に」税金を支払わずに米国に持ち返るというパターンを繰り返す。

以前のポスティングでさんざん触れたE&Pの圧縮を利用した外国法人の見た目の実効税率のターボチャージ化もその対策の一つだし、何層にもまたがる持株会社、CTBの利用、も効率のいい還流を念頭に置いたものであるケースが多い。

*一生に一度の配当非課税

米国での追加税コストが足かせとなり米国多国籍企業が米国に資金を自由に持ち返れないことは、米国経済に悪い影響がある、という主張は絶えない。実際に、そのような悪影響を排除するため、ブッシュ政権下で2004年に発足した「American Job Creation Act」の中の規定で「一生に一度だけの約束で」米国企業が実質非課税に近い形で外国から配当を受け取ることができたことがある。この時とばかりに大手企業が配当という形で米国に多額の資金を還流させている。この暫定規定は、配当された金額を米国の雇用、研究開発等に使うことという条件があった。形式的にはその条件を満たさす形で配当されたのだが(でないと非課税にならないので・・・)、後日実施された議会による調査で実際に雇用、研究開発が増加したという事実は認められなかったという実態が明らかになっている。この点に関しては2009年2月のポスティング「海外からの配当非課税米国版の顛末」を参照。

にも係らずハイテク、製薬業界等の経営者からは「再度、外国からの配当を非課税として欲しい」という意見が絶えない。彼らは移転価格、IP移転、その他の策を駆使しまくって低税率国に所得を溜め込んでいるが、今の税法下ではせっかく貯めたその貯金を多額の米国税負担ナシに米国に持ち返ることができない。

彼らに言わせると「外国からの配当を一時的に再度非課税とすることで、100兆円(!)の資金が米国に戻り、それが米国の雇用、研究開発に充当される」という。本当にそんな効果があるのかは今でも賛否両論だが、2004年の時限措置に基づく資金還流にそのような経済効果があったという証拠は見つかっていない。

それでも直感的には配当非課税にはアピールがある。米国で投資はしたいけれど、資金を米国に持ち込むと多額の税金が掛かるので、代わりに海外で事業を展開せざるを得ない・・・というようなシナリオを避けるためには配当を非課税にするべきだ、というものだ。中学生でも理解できるような分かりやすいロジックではある。特に金融危機でクレジットクランチが続いている今、外部からの資金調達が難しく、手元流動性と投資の実行に以前よりも強い相関関係ができてくる気もして、なるほどと思わせる。

しかし、米国外に眠る巨額のキャッシュの多くはハイテク、製薬業界の「超大企業」に属するものだ。彼らは低金利を利用してほぼ無利子に近い好条件で社債を発行できるような連中だ。それを考えると非課税配当の投資効果には疑問を持つ専門家も多い。

外国から非課税で配当されたキャッシュが、米国の雇用、研究開発等に使用されずに、米国で株主への配当や自社株買いの原資となった場合、最終的には個人株主等の購買略が上がり、経済にいい影響があるという説もある。

さらに別に配当非課税なんかにしなくてもいいという極めつけの主張は、超大企業は現在の税法下でもどうせプラニングを駆使して非課税で資金を還流させているじゃん、というものだ。この点に関しては米国のクオルコム社が同じく米国のアセロスを買収した際に「オフショアファンド」を使用して買収を実行したストラクチャーが大きく報道されて注目された。その名も「Deadly D」という恐ろしい手法だ。