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ミリオネアー課税「バフェット・タックス」(1)

米国の著名投資家で億万長者の代名詞とでもいえるウォーレン・バフェット氏が「自分の税率が一般家庭より低いのはおかしい」という至極もっともな理論でミリオネアーの課税強化を提唱した。

累進税率かつ総合課税の米国でなぜ何百万ドルも収入がある者が、所帯当りの所得が20万ドル位の一般家庭よりも低い税率で課税されるようなことが起こり得るのか単純に不思議に思われる方もいるだろう。

米国は総合課税だが、キャピタルゲインと配当は特別に15%という上限税率が規定されている。90年代はキャピタルゲインのみ15%だったが、ブッシュ政権が2001年~2003年に実施した減税で配当も15%上限となった。分離課税に似ているが、総合課税の枠の中で上限税率が規定されているというのが正しい。すなわち、キャピタルゲイン、配当も他の所得同様に申告書に載せて、そこから人的控除だの個別控除を差し引いて累進税率を適用するが、キャピタルゲイン、配当部分には15%のリミッターが掛かる。キャピタルゲインや配当があっても小額であれば控除で消えてしまい、税負担がないこともある。この辺りの計算は結構面倒で「たかが」個人所得税で給与と配当、キャピタルゲインがあるだけのような局面でもコンピューターとか申告書作成ソフトのヘルプなく申告書を作成するのは困難な状況に陥る。

ちなみにこのブッシュ政権の減税には時限爆弾がセットされており、何もしないと自動的に消滅する(昔のスパイ大作戦のテープみたいに)仕掛けになっている。この問題に関しては2010年8月末に3回特集した「失効間近のブッシュ減税」を参照。

裕福になればなるほど、役務提供して報酬を受け取るという生活パターンではなく、投資ポートフォリオから配当を受け取ったり、投資を売買してキャピタルゲインを得たりしているため、いくら儲かっても15%を超える税率にはならない。ファンドに投資とかしている者も、ファンドがパススルー主体であることから、ファンドが認識するキャピタルゲイン、配当はそのままの性格でパススルーされてくる。これに目を付けて、というかこの仕組みをうまく利用しているのが、PEファンドとかヘッジファンドのマネージャーが受け取るCarried Interestだ。実質給与に近いが税法上はキャピタルゲインとなるように設計されている。

このCarried Interestを通常の所得として課税しようとする声はブラックストーンが上場した頃(もう4~5年前?)から法案としては存在するが、未だに可決されていない。オバマ政権も一つの歳入原資として通常課税を提案している。Carried Interestに関しては相当前となるが2007年6月に特集したので「Carried Interestとパートナーシップ・プロフィット持分」を参照。

また差が付くのは税率だけではない。普通に働いてお給料をもらったり、フリーランサーとして報酬を得ていると、所得税ばかりではなく、社会保障税も支払う必要がある。社会保障税の計算には控除がないため実効税率に与える影響は大きい。従業員なら8%弱(うち1.45%は課税上限枠ナシ)、自営業(会計事務所や法律事務所のパートナーを含む!)はナント15%強(うち2.9%は課税上限枠ナシ)取られるのでかなりキツイ(これって愚痴?)。一方で投資所得には社会保障税は課せられないため、ここでも差が付いてしまう。

そこで登場するのがバフェット・タックスだが、その内容はどのようなものとなり得るのだろうか?という点は次回。