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資産配分大改善計画: データと補足事項

資産配分大改善計画の続き。ここでは、前編では省いた細かい考察やデータの出典などを補足している。

基本方針

まず、この先10年超くらいを想定したリスク許容度を考える。その際、よくある正規分布型の価格変動モデルでの分散(または標準偏差)値を定義とするリスクだけではなく、大型かつ複数年にわたる大恐慌的な価格下落の可能性も考慮する。

次に、保有予定資産をリスク・リターンの特性別に大分類し、それぞれのクラスごとのリスク(これはここでは正規分布型モデルでの定義を採用)と期待リターン、およびクラス間の価格に関する相関係数をweb上の各種資料などを参考に決定。

得られたデータを使って、許容リスク範囲内で期待リターンを最大化するような資産配分を決定する。

リスク許容度について

いまのところキャッシュフローには問題がなく、借金もなく、(クビにならない、あるいはもしなっても1年以内くらいに再就職できるというのが前提だが)その状態がしばらく続くことは想定してよさそうなので、基本的にリスク耐性はかなり高いはず。たとえば、1年程度の期間なら資産の時価評価額が半分になったとしても困らないし、たとえそれが数年間にわたってもその後ちゃんと回復してくれるなら許容できる。したがって、基本的にはリスクをおそれずに高いリターンが期待できる資産を多く持つ方針に変わりはない。一方、資産を取り崩すときのこともそろそろ念頭に入れておいた方がいいという程度の年代になりつつあるので、いまから少しずつ時間をかけて危険度を減らしていきたい。

以上を踏まえて、今回想定する許容リスクは以下の通りとする。

  • 正規分布型の価格変動モデルにおいて、特定の一年での最大可能下落幅を2標準偏差分と想定し、期待リターンと相殺した最大可能損失率が20%以内
  • 正規分布モデルの想定から外れるような大恐慌における損失として、3年間にわたってリスク資産の価格が毎年1/3ずつ下落するケースを想定する。この場合、無リスク資産とあわせた3年後の総下落幅が50%以内。

2番目の条件から逆算すると、リスク資産の保有率は70%以内でないといけないことがわかる(無リスク資産の価格変動はこの文脈では誤差とみなして無視。また、ここでのリスク資産は投資対象資産のうち一般の債権を除いたもの)。

資産クラス分類について

非常に大ざっぱには、株式・債権・不動産(実際上はREIT)の3分類を想定。さらに株式は日米欧とそれ以外のアジア太平洋と新興国に分類したい。これはすでに保有しているETFがそういう分け方になっているため。理想的には、現状の保有資産の内訳にとらわれずにゼロから考える方がいいかもしれないが、実際上この手持ち資産をリバランスして最善の配分に近づけていくことを考えると、そこからあまりに整合性のないクラス分けをしてしまうと処理の手間やコスト面で不都合になりそうなので、折衷案ということで。

ただ、実際に少し計算しようとしてみたら、ここまで細かく分けてしまうとそもそも計算の前提となるデータを決めるのが難しく、最適化計算させてみた結果もいまいち直感に合わない感じでしっくりこなかった。期待リターン等のデータは最終的には主観で決めているので信頼性が高いわけでもないことを考えると、ここまで精密にするのは無理がありそうという結論に達し、もう少し大ざっぱなくくりに変更することにした。その結果が先進国と新興国という分類。

債権クラスは、実際には米国内の債権に限定して考えている。これは、現状がアメリカ暮らしでキャッシュフローもほぼすべてドル建てという事情による。債権の場合、為替リスクを取ってまで分散投資するメリットが薄いということで、結局ドルのまま投資できる債権が対象になる。

不動産(REIT)も似たような理由で実際には米REIT限定。ただし、不動産の場合は外国への分散投資自体には意味があると思われる。米REITに限定しているのはおもに実際の運用上の税金対策のため。いまのところREITは運用中の配当が非課税になるリタイアメント口座に置いているが、外国源泉の資産だと源泉国で課税されてしまっている可能性がある。アメリカ側の口座が課税口座なら最終的にアメリカの確定申告時に取り戻せるが、リタイアメント口座だと結果的に外国税分は取られ損になってしまう。これを避けるために米国限定にしている。

データのソースと考察

最適化計算で配分を求めるためには、各資産クラスごとのリスクと期待リターン、さらにクラス間の相関係数のデータが必要になる。これは一素人がどうにかできるものではない(というか期待リターンはプロでもどれだけ信頼できるか怪しい)ので、webや書籍など外部の資料を参考にしつつ最後は主観で決めるしかない。

リスクと期待リターンを決めるのに参考にしたのは以下のような資料:

相関係数を決めるのに参考にしたのは以下:

  • 各種ファンド・指数の相関係数検索ページ。過去3年分の相関係数が調べられる。これで対象資産クラスに近いファンド間の相関係数を調べて代替する
  • assetcorrelation.com。sectorspdrと同様のページ。主なアセットクラス間の過去2年の相関係数表が載っている。
  • 上記のCalPERSの資料の中のWilsherの資料にいろんなセクタ間の(予想)相関係数が記載されている
  • 野村證券の2005年6月の資料。これの真ん中あたりに資産クラス間の詳細な相関係数表がある。ただし、資料そのものがちょっと古いのと、計算期間が「最長期間」ということで不適当に昔のデータが含まれている可能性もあり、これは参考程度。

どの資料をとっても大体同じような予想値になっているところ(たとえば先進国株式のリスクやリターンはそう)はほぼその値を採用。個人の判断(独断)を入れて決定した項目はたとえば以下:

  • 新興国株式については、過去のデータも予想値でもリスクは高めということが示されているが、期待リターンがどの程度になるかは意見が割れている。新興国の今後の経済成長がマーケット上のパフォーマンスに直結するとは限らない(かつ今後の成長余地の分は現在の価格に折り込まれている)という意見もある。ただ、ここではリスクの高さに見合うプレミアムがあるはず、という説をとって2%の期待超過リターンを仮定した。
  • REITのリスク・リターンもかなり意見(とデータ)が割れている。予想値は大体株式よりいずれも少しだけ低いという意見が多いが、リスクについての過去のデータはむしろリスクが高めであることを示唆している。今回は期待リターンについては株式並み、リスクも株式よりやや高い値を想定した。
  • REITと株式の相関関係も難しい。データを見ると結構高いが、CalPERS資料の見積もりでは0.35になっている。ここでは一応間を取る感じで0.5とした。
  • 債権とその他の資産の相関関係も資料によって差がありすぎで悩ましい(プラスとマイナスでも割れている)。今回は一応0としておいた。

最適化計算の方法について

資産運用実践講座I」に紹介されているやり方(楽天証券のweb記事にもほぼ同じ説明がある) では、最適資産配分を求めるために「リスク拒否度λ」という概念を導入して、それを用いた効用関数U = R – λσ^2の値を最大にする最適化問題に帰着させている(Rは期待リターン、σは標準偏差で表したリスク)。この式自体、σを2乗する根拠がわからなくて謎なのだが、直感的にはリターンを何らかの定数で調整したリスク分割り引いた値、と考えれば一応納得はできる。ただ、その先の説明は間違いでないとすれば飛躍が大きすぎて鵜呑みにできない。リターンがσの定数倍だと仮定しているのだが、直感的にいってもこれはおかしく、ここで仮定している正規分布型の価格変動モデルなら、σ(分散幅)で2倍のリスクをとってもリターンは倍にはならないはず(確率分布上の超過リスクは2倍より少ないから)。

実際、前編で使ったデータに対してこの方式を適用すると、期待に沿わない結果になってしまう。仮に期待リターンを6%、許容リスク(1標準偏差分)を13とする(期待最大損失率が20%になるように)とすると、このやり方で求まるリスク拒否度は約0.01775。この値を設定して、リスク自体に対する制約を除いて最適化計算をすると、リスク8.11、期待リターン4.82%、リスク資産比率41.77%という結果になってしまう。これは想定していたリターン、リスクともに合致しないし、リスクについては実際に想定していた許容可能値よりもかなり低くおさえられてしまう(そのこと自体はいいことだがリターンも低くなってしまう)。

さらに、この方式には資産配分の決定に際して期待リターンを先に決めているという点でも問題がある。「資産運用実践講座」自体でも述べられているように、脆弱な個人運用者としては本来は許容リスクを先に固定し、その上で計算される最善の期待リターンを受け入れるという方向であるべきだろう。

また、以上のようなこととは別に、この方式全般にいえる欠点として、リスク評価に正規分布型の価格変動モデルを使っていることがある。直近の大暴落を含め、リスク資産の価格変動は正規分布には従わないというのはほぼ明らかといえるので、「最悪のケース」の想定として正規分布の標準偏差を基準に考えるとリスクを甘く見積もりすぎる危険がある。最適化計算で配分を求めるような部分においては、他に有効なツールもなさそうなので仕方ないとして、リスク、とくに最悪値の評価は正規分布モデルから外れたところで想定した方が安全と思われる。

というわけで、前編の計算ではリスク拒否度と効用関数は用いず、リスクの上限は計算の前提としてはじめに与えておいて、期待リターンのみを計算の対象とする方式を取っている。実際に得られた結果も直感に沿うものになっている。

なお、最悪の場合の許容可能下落率を決めてから配分を計算する方式については、効用関数方式が腑に落ちないと思っていろいろ調べているうちに見つけたアーリーリタイアメントのblog記事を参考にしている。