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キャピタルゲイン・適格配当所得税率に関する誤解

jinmei

「某所で税金の話」をしていたときに、(長期)キャピタルゲインと適格配当(qualified dividends)所得に関する優遇税率について、ちょっとモヤモヤした部分が頭をかすめたのだが、その場ではあまり気にせずに流してしまった。その後、モヤモヤを解消するべく改めて調べてみると、いままでこれらの税率についてとんでもない誤解をしていたことにいまさらながら気がついてしまった。誤解していた主な部分を対象に、正しい(と現時点で信じている)内容を箇条書きすると以下のとおり:

  • この優遇税率(0,15,20%)は、定率ではなく、実際には超過累進税率である
  • Ordinary Incomeのtaxブラケットを決める際の所得からは、優遇税率対象の所得は除かれる
  • 一方、優遇税率の具体的な値は、ordinary incomeも含めた所得全体の額で決まる


たとえば、以下のようなケースについて具体的に考えてみる:

  • Status: Single
  • 課税対象所得全体(Form 1040 Line 43): $50000
  • Qualified Dividends (Form 1040 Line 9b): $40000

つまり、優遇税率対象の所得が$4万、それ以外のordinary incomeが$1万である。この場合について、Form 1040の2013年版instruction(PDF)に記載の”Quqlified Dividends and Capital Gain Tax Worksheet”(44ページ目)にしたがって税金を計算すると、

  • Qualified Dividendsのうち、ordinary incomeと合わせて$36250となる$26250分については無税。$36250はordinary incomeのsingle用tax tableにおいて15%の税率が適用される上限
  • Qualified Dividendsの残りの$13750については15%で課税される
  • Ordinary Incomeに対する税金はQualified Dividendsとは完全に独立に計算される。したがって、$8925までの10%分と、それを超える$1075の15%の合計が税金になり、ブラケットは15%

ここで、まず、(ordinary incomeの)taxブラケットは15%であるが、qualified dividends全体に0%の優遇税率が適用されるのでないことに注意。また、qualified dividendsの一部には0%、別な一部には15%の税率が適用されており、超過累進課税になっていることにも注意。さらに、課税所得全体($5万)に対してtax tableを当てはめるとブラケットは25%になるはずだが、実際のブラケットは純粋なordinary income相当分だけの15%であることにも注意(したがってもし他に利子などの所得が発覚したら、それは15%で課税される)。

この理解に至る以前は、優遇税率は定率だと思っていた。また、その率を決める「ブラケット」は優遇対象所得も含めた課税対象所得全体をtax tableに当てはめて求めるのだと思っていた(こちらについては、もしそうでなければordinary income 0の場合に何百万ドルもの優遇対象所得があっても0%課税ということになってしまい、明らかにおかしいので)。が、IRSのPub 550をよくよく読むと、

the maximum capital gain rates are 0%, 15%, 20%, 25%, and 28%

とあり、”maximum”とあることから、実際には超過累進税率であることが読み取れなくもない。とはいえ、この記述だけで上記の理解に至るのはまず無理ではないだろうか。Form 1040のworksheetを使って実際に計算してみるまではわからないような気がする。

実際、世の中の他の人も案外誤解している可能性がある。たとえば、wikipediaのqualified dividendの説明を見ると、

from 2008 to 2012, the tax rate on qualified dividends was reduced to 0% for taxpayers in the 10% and 15% ordinary income tax brackets, and starting in 2013 the rates on qualified dividends are 0%, 15% and 20%.

とあるが、この記述は仮に間違いでないとしても少なくとも曖昧だろう。まず、普通に読むと定率であるかのように解釈されるだろうし、この文脈における”ordinary income tax brackets”の意味も曖昧である。

もっとも、給与が所得の大半で、それに比べるとごくわずかな優遇対象所得があるだけ、という人にとっては、誤解したままでも結果は一緒になることが多そう。この場合は真のtaxブラケットと優遇税率を特定するためのブラケットはおそらく同一だろうし、優遇対象所得分が0,15,20の区分にまたがる可能性も非常に低いと思われるので。また、いずれにしても、worksheetを使って自分で計算して申告する人は(この優遇を受けるような人の中には)ほとんどいないだろうし、ソフトウェアにやらせるにせよ会計士に頼むにせよ、仮にもプロならその計算はworksheetにしたがった正しいものだろうから、一般の納税者が気にすることではないかもしれない。

それでも個人的にはモヤモヤが晴れてすっきりできたのでよかった。(あと、いつもながらアメリカの税制の複雑怪奇さに呆れさせられた – たとえば日本のような完全分離で定率の課税方式と比べると複雑さは一目瞭然である)

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