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完全に「肩透かし」だった過少資本税制公聴会

Max Hata
ここ数ヶ月、注視が続く財務省による過少資本税制規則案。その挑発的かつ過激な内容から動向が注目されているが、7月7日に規則案に対する納税者側からのコメント提出が締め切られ、7月14日にはついに待望の財務省による「公聴会」がDCで開催された。規則案に対しては納税者ばかりでなく議会の強い反発もあり、最終化するのかしないのか、するのであればそれがいつなのか、規則案の内容がどれ程緩められるか等、公聴会には少しでも現状を確認したいという専門家集団が集結した。

DCの会場は200名近い参加者があり、会場は満員御礼状態。会場には納税者側の代表ばかりでなく、財務省、IRSの重鎮も紛れていたとされる。しかし、3時間に及ぶ質疑応答は実質、質問のみで財務省側からの意味のあるコメント一切なかったと伝えられ、参加者は公聴会直後に一同に失望感を表明している。

基本的な公聴会のダイナミクスとしては、参加者より、このような越権行為とも思われかつ経済的なインパクトの大きい規則は即刻廃案とするべき、またはどうしても最終化したいのであれば、大幅な改訂をした上で十分な準備期間を与えるべき、という趣旨のコメントが殺到し、それに対して財務省はノーコメントを決め込むというものであった。

参加者のコメントおよびメディアレポートによると、IRS法人税部門の准主任弁護士のAustin M. Diamond-Jonesによる極めて事務手続き的な開会宣言の後、財務省による発言はたったの3回、そのうち2回は納税者の質問に対して「あなたの質問は文書によるコメントに含まれてますか?」というようなしょうもないものだったということ。残る1回は規則の適用開始が一部(いわゆるFunding規定の部分)、規則案が最終化される以前の2016年4月4日(規則案の公表日)に遡る点が法律違反ではないかという趣旨で突っ込まれた際に、財務省側が「Funding規定が嫌なら最終化の後90日以内にグループ内ローン形態を補正する機会があるのだから十分な猶予期間が設けられている」と反論したものだけであった。

今回の規則案の内容がSection 385下で財務省に与えられた権限を逸脱するものであるという主張に関しては以前のポスティングで散々触れているが、公聴会でもこの点に対するアタックは再三行われた。規則案は全120ページだが、そのうち80ページが前文で、その前文の多くがなぜ財務省にこのような規則を規定する法的権限があるかという点が延々とSection 385の立法趣旨に基づいて説明されているものだ。80ページ使って法的権限を説明する必要があるという事実関係1つとってもその権限は怪しいと見るのが妥当だろう。その際に拠り所となるはずの立法趣旨だが、前文に記載されている議会の立法趣旨部分に都合の悪い部分が引用されていないと公聴会で納税者側からの質問で指摘されている。ますます怪しい感じだけど、この点を訴訟で争うには以前にも書いた通り、まず納税者側で追徴等の被害にあって当事者適格(Standing)を得、その後、訴訟に持ち込む必要がある。Appeal等のプロセスを考えると10年単位の気の長いプロセスだ。

また、別の切り口として、財務省がいかにInversionを敵視しているかは理解できるとしても、過去3年間にInversionした米国法人の数はたかが67社にしか満たない一方で、今回の規則案で影響を受ける法人の数は米国企業で2,000社以上、元々米国外のMNCに所有される米国法人に至ってはナンと27,000社、と財務省側の受けるダメージとその対策の与える負担間の不合理なミスマッチが指摘され、その付帯的な損害の大きさが白日の下に晒されることとなった。また、商務省が懸命に米国へのDFIを誘致している戦略に真っ向から対立するである点も指摘され、省庁間の連携の悪さも示唆された(これはどこの国も同じだけど・・)。

公聴会で唯一見えた実質的な規定にかかわる方向性は、以前から改訂が予想されているCurrent E&Pの例外が前年度のE&PまたはEBITDAベースとなる点、またCash Poolingの文書化が若干軟化される点、に加えてFunding規定にかかわる反証不可の推定事実認定期間が72ヶ月から24ヶ月に短縮されるような可能性がある点だろう。

公聴会が終ってみると、結局何も新しい情報は明らかにならず、9月前後の最終化を何が何でも目指す現財務省の頑なな態度だけが印象付けられるものとなった。規則案の公表と同じように最終規則も抜き打ちでいきなり発表して、みんなをビックリさせるのを狙ってるのかもね。
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