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家の売買のこと(続)

F Fries

シカゴの家を売らなくてはいけないことが決定して以来、ここ一年ほど、地元の不動産屋のメール配信で「最近の不動産マーケット情報」みたいなものを受け取っていた。自分の家の住所とサイズを登録すれば、似たようなサイズの家がこの一ヶ月間、何軒、どんな値段で売れたか、毎月メールで送られてくるというサービスである。ようやく自分の家が売れたから、うちも今月分の統計に載るだろうと思って見てみたら…

載ってなかった。

不動産不況とはいうものの、アメリカでは六月から八月にかけての「夏場」は不動産売買のハイシーズンで、どうやら売買件数が多過ぎて、うちは載らなかったようだ。

なんだかちょっと残念。

以前は「売買の情報が、値段と実名入りで新聞に載るなんてけしからん!」と思っていたのだが、実はこれ、アメリカ人の心理には結構叶った制度ではないかとも思うようになった。アメリカ人、と一括りにしてしまうのは、実に乱暴なやり方であることは重々承知してのことだが、その禁をあえて犯して言えば、アメリカ人は一概に、自分のアチーブメント(成果)を見せびらかすのが好きである。例えば、職場などで、「今月の最優秀社員」などというのは、その名前が額に入れられて会社の入り口の社員のみならず来客の目に付きやすい場所に掲げられ、(名前だけでなく、写真入りであることも多い)、褒美に楯や賞状、金一封の他、駐車場の一番便利な場所に「今月の最優秀社員だれそれ(毎月名前が変わる)専用の駐車場所」なんて札まで立てたりする。日本人の感覚だと、こんなことされたら恥ずかしくて顔から火が出そうだが、アメリカ人にはこれが嬉しいらしい。その感覚で言えば、家の売買の記録を公の場に載せるのは、「ほお、だれそれさんは、あんな高級住宅街に家を買ったのか。それもなかなかお買い得な値段で買ってるじゃないか。やるなあ。」とか、「おや、あの人は、この不況の中、こんな立派な値で売ったのだな。ラッキーだな。」ということを「見せびらかす」という役割も担っているのではないかと思う次第である。

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