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グーグルの風力発電投資と「タックス・エクイティー」(2)

前回はタックス・エクイティーに話しに関係してパススルーの課税関係について書き始めたが、今回もそれを続ける。

税務上、法人となると事業主体レベルで所得に課税された後、配当時に再度、個人株主側で課税されることから二重課税の対象となり、(米国内の投資家から見ると)税務上は好ましい事業主体とはいえない。一方、税務上のパススルーは、事業主体側で課税されないばかりか、事業主体の損失を投資家であるパートナー、構成員サイドで取り込むことができ、他の所得と相殺することができるというメリットもある。損失の配賦に関してはSec.704(b)の実質的な経済効果の規定、配賦された後の使用に関してはBasis制限、PAL制限、At-Risk制限といろいろあり複雑ではあるが、基本的なコンセプトとしては損失を投資家で取り込むことができるのがパススルーのひとつの大きなメリットとなる。

さらに重要な点に、パススルー事業主体で認識される所得、費用、税額控除などの項目は「そのままの性格」でパートナー、構成員に配賦することができるとうものがある。

このパススルーの特徴をうまく利用しているのが再生可能エネルギー投資に頻繁に利用されるタックス・エクイティーだ。タックス・エクイティーが利用するパススルーは「FLIP」と呼ばれる。

FLIPパススルー形態とは、実際に再生可能エネルギーの生産を行う事業主と「税額控除を買うこと」を目的に参加する投資家がパートナーシップ、LLCなどのパススルー事業主体を組成して事業を行う形態を言う。パススルー事業主体は投資税額控除に適格となる再生可能エネルギー事業を行っているため、税額控除を計上することができる。この税額控除を「税額控除という形のまま」投資家に配賦し、配賦を受けた投資家は、他の事業から発生する税金とパススルー事業主体から配賦されてくる税額控除を相殺することができる。

パススルー税法下では、必ずしも全ての所得、費用、税額控除を皆に均等に配賦する必要はない。Sec.704(b)の実質経済効果(または代替テスト)その他の規定を満たす限りにおいて、どのような項目をどのように配賦するかは構成員の間で自由に決めることができる。パートナーシップであればパートナーシップ合意書で、LLCであればLLC合意書に規定すればよい。例えば「最初の3年間の減価償却はAさん」「キャピタルロスはBさん」「外国税額控除はCさん」「5年目からの通常所得はDさん」とかどのように決めてもいい。

FLIPパススルー形態では、このパススルー事業主体の特性を利用し、税額控除およびキャッシュ・フローを当初、投資家側に優先的に配賦し、その恩典を受けさせる。パススルーが組成された段階では、多くの持分が投資家に帰属することになるが、投資家が一定の利益率を獲得した段階で、持分はデベロッパーに切り替わる(=Flip)ように合意されている。

またIRSは風力発電にかかわるFLIP形態に関してセーフハーバー規定(一定の条件を満たすことで税務上の取扱いが確定される)を公表している。セーフハーバーの条件を満たす形で合意書を作成しておけば、Sec.704(b)等の極めて複雑な規定条件を満たしていると取り扱われることから税務上の取り扱いの予見可能性が高まる。

*日本企業とタックス・エクイティー

上述の通り、タックス・エクイティーという形態の発達には、事業主自らでは税額控除の恩典が取れない、そしてその恩典を代わりに使用したい儲かっている投資家が存在する、という背景がある。儲かっている日本企業であればタックス・エクイティー投資家になってももちろんいいが、日本企業が税額控除を受けることができるような事業を「自ら」展開し自分達のグループ企業の他の課税所得と連結納税等を利用して相殺していくという方法もある。自分で税額控除の恩典を取れるのであれば外部のタックス・エクイティー投資家に税額控除を売る必要もない。

また、税額控除の恩典を取れない事業主に対して2009年から「助成金」という代替案も設定されている。これは実質、税額控除を利用して税金をマイナスまで減らし還付を受けるのと同じ効果を持つことから税額控除に代わる新たな投資形態となっている。

*タックス・エクイティーは何て訳すべき?

タックス・エクイティーと言う形態は「租税平等」どころか逆に儲かっている投資家が自分の税金を減らすために財力にモノを言わせて税額控除を買ってしまうという仕組みだということが分かってもらえたと思う。ただし、これは悪いことでは一切無く、先行投資が必要となるソーラーや風力発電の事業主に効率よくキャピタルを提供する生命線だ。

では、租税平等という訳がピンとこないとすると代わりに何と訳すべきだろうか?「税額控除を見返りとするパススルーへの投資」ということなのだがピッタリとくる日本語がない。そういえばEquity Financeも「エクイティーファイナンス」というのが一番ピッタリくるのでTax Equityも「タックス・エクイティー」のままが一番かもしれない。カタカナって便利だ。