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グーグルの風力発電投資と「タックス・エクイティー」(1)

つい先日、グーグルがノースダコタ州の二つの風力発電装置に3880万ドル(約36億7000万円)の投資をするというニュースが報道されていた。

グーグルはブライトソース・エナジー、アルタロックなどのソーラー、風力、地熱等の再生可能エネルギー関連事業に投資実績があり、かつグリーン事業に今後も力を入れるということは周知の事実であることから今回の風力発電投資に特に驚く部分はない。

しかし、日本語の報道でグーグルの投資形態が「租税平等」(タックス・エクイティー)という形で行われた、と記載されているのを読んで、タックス・エクイティーに関しては若干触れておいた方がいいのかな、と思ってしまった。

*タックス・エクイティー

確かに「タックス」は「租税」と訳すことができるし、エクイティーのひとつの訳は「平等」なので合わせて「租税平等」となっても不思議ではない。でも「租税平等」では「タックス・エクイティー」という用語の意味は伝わらないだろう。実は平等でも何でもないからだ。

タックス・エクイティーとは再生可能エネルギーへの投資形態としては一般的で、用語としては確立された意味を持つ。タックス・エクイティー投資とは簡単に言うと、他に課税所得を持つ投資家がパススルー主体から「税額控除」を買い取る形態を言う。タックスの恩典を受け取るのでタックス・エクイティーという。

なぜこのような投資形態が一般的かというと、実際にソーラーとか風力発電を開発している事業主はまだ儲かってないケースがほとんどだ。となるとそもそも税金を未だ支払っていないことから、税額控除のメリットを享受することはできない。ここでいう税額控除とは投資税額控除が代表的なもので、支払うべき税金から投資額の一定%を差し引いてくれるというようなものだ。

再生可能エネルギーに適用される投資税額控除は税金をゼロにまで下げることはできても、マイナスにして還付を受けることはできない。したがって、せっかく税務上の恩典を規定して再生可能エネルギー投資を促進したいという国の政策があっても、そもそも税金を支払う立場にない(儲かってないので)者にとってはインセンティブとならない。

そこで登場するのがタックス・エクイティー投資家だ。これらの投資家は再生可能エネルギー投資とは別に他に儲かるビジネスを持っていて税金を支払う立場にある。何とか節税をしたいと願っており、税額控除を買うために再生可能エネルギーベンチャーに投資する。ソーラーとか風力発電の事業主から見ると、自分ではどうせ使わない税額控除を売って現金化できれば、その分コスト削減に繋がり「Win/Win」の関係が築ける。

ただし、リーマンショック以降は肝心の投資家自身にも課税所得がなくなってしまい(場合によっては投資家自身が無くなってしまい?)、ソーラーや風力発電の事業主は以前と比べてタックス・エクイティー投資家を見つけるのに苦労しているだろう。というのもタックス・エクイティー投資で有名だったのは他でもないAIG、リーマン、モルスタ、その他大手金融機関という金融危機の主人公達だったからだ。もちろんグーグルであればリーマンショック以降も多額の税金を支払っていることから今でもタックス・エクイティー投資家としての恩典を享受することができる。

税額控除を買い取るなどと言うとチョッと怪しい取引に聞こえるかもしれないが、そんなことは全くなく、ソーラーや風力発電の資金調達法として確立された方法であり、後述するようにIRSもセーフ・ハーバー規定を発表してタックス・エクイティー形態を後押ししている。

実際どのように税額控除を「買い取る」かという点を理解するには米国のパススルー課税のルールを理解する必要がある。

*FLIPパススルー

タックス・エクイティー投資はFLIPと呼ばれるパススルー投資形態で資金調達する手法で行われる。

以前からのポスティングで度々触れているが、米国で事業を展開する際の組織形態は株式会社(Corporation)、パートナーシップ(GP、LP、LLP、LLLP)、Limited Liability Company(LLC)、事業トラストその他と、多岐に亘る。しかし、これらの事業主体の「税務上の取り扱い」は「法人」と「パススルー」の二つのみに大別される。具体的には、株式会社は、基本的に常に法人として取り扱われ(一定の条件を満たす場合には、税務上「S Corporation」と取り扱われる選択をしてパススルー扱いが可能)、他の事業主体は、納税者側で法人とするかパススルーとするかの選択(Check-the-Box規定)が認められている。

つまり、株式会社、GP、LP、LLP、LLLP、LLC等の事業主体は州の会社法上は異なる権利関係その他が規定される別の種類の事業主体であるが、税務上は「法人」「パススルー」の二つのどちらかに属することになる。したがってタックス・エクイティーにはパススルー事業主体を利用するが、それはLPであることもあれば、LLCであることもある。どのようにパススルー事業主体を利用して税額控除の売り買いが行われるのか、という点に関しては次回のポスティングで。