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IRS Notice「春の新作コレクション」

Max Hata
米国では当たり前のように使用されている税金関係の用語でも、日本にいると馴染みがないチョッとしたものというのは以外に多い。僕も大学を出て日本で最初に就職した時に先輩が「アメリカでは申告書をTax Returnっていうんだけど、税金を払うのにReturnっていうのは不思議だよね」と言っていた。その時、「申告書=Return」っていうこと自体を知っていた者は(僕自身を含めて)周りには誰もいなかった。でも米国で少しでも仕事をしていれば、Returnという用語の本来の意味を考えるまでもなく、Returnといえば申告書、申告書といえばReturnと自然に覚えてしまう。

同じようにIRSから質問、追徴、税務調査その他に関して送付されてくる通知レターは「Notice」と呼ばれ、それ以外の用語で表現されることはない。これも米国で暮らしていると当たり前のことだが、日本ではそれほど定着している表現ではないだろう。

*大量のNoticeとそのデザイン

IRSはナント年間2億枚に上るNoticeを発行すると言われている。米国の人口が3億人だから驚異的な数字に見えるが、Noticeを受け取る納税者は複数のやり取りがあることが多いこと、法人その他パススルーを含む自然人以外の事業主体、Trust、Estate等が多く存在すること、米国人以外の非居住者等にもNoticeは発行されること、等を考えるとそれ位になるのかもしれない。

さらにNoticeはIRSばかりでなく州等の地方の税務当局からも発行されることを考えると、実に多くのNoticeが毎年発行されていることになる。

IRSはここ何年も納税者とのコミュニケーションの質を上げ、どちらかと言うと「Friendly(?)」な存在になろうと努力してきた。その一環でIRSには「Taxpayer Communications Taskgroup」(直訳すると「納税者渉外対策本部」とでもなる?)という部門があり、Noticeの文言、デザインを更新する作業に取り掛かっている。

*既存のNoticeの問題点

内容としては無数にあるNoticeだが、デザインがNoticeにより異なるため統一感がない。紙の質、フォント等、いかにも省庁から送付されてくる感じの無味無臭なレターで、それだけに威圧感がある。文言はできるだけ「普通の人」にも分かるようにという努力の跡は見て取れるが、それでも税法に馴染みのない者には余りに「法的文書」っぽく見えるだろう。

デザインがNoticeによりまちまちであるため、信憑性を疑いたくなるケースもある。中には、異なるデザインのNoticeをIRSから受け取ると、「フィッシング」等の目的で送られてくる「偽Notice」と信じて、IRSに「通報」してくるという笑い話もあるくらいである。

*デザイン維新プログラム

このような問題を改善するため、IRSは全Noticeのデザインを維新すると発表している。目的はNoticeのデザインを共通のものとして、フォントを工夫して読みやすくし、使用される文言をできるだけ「普通の英語」にし、Noticeの全体構成を統一し、納税者側の理解を高めるというものだ。

維新プログラムの第一弾として、最も一般的なNoticeいくつかの新デザイン「コレクション」が発表された。

デザイン的はまあいい感じだが、文言は今まで通り分かり難い?という反応が多いようだ。なぜ文言が分かり難いかと言うと、表現が「あいまい」だという指摘が多い。しかし、これは敢えてそのような文言が使われている可能性が高い。その理由は文言を余りに「具体的」にしてしまうと個々の納税者の異なる局面で使用ができなくなる確率が高まるからのようである。すなわち、一つのタイプのNoticeをできるだけ多くの納税者に共用して使い回すには、どうしても内容を一般的(=あいまい)にせざるを得ないということのようだ。

英語の読解力も含めてレベルがまちまちの不特定多数の納税者を相手にしているIRS側にもいろいろと苦労もあるだろう。少しでも分かりやすいNoticeで「税務問題の早期解決」という目標は立派である。しかし、Noticeのデザインとか文言よりも、Noticeの内容そのもの、またNoticeにこちらから返答をした際のIRS側の技術的な理解度、を向上させない限り本当の「税務問題の早期解決」には至らないことが多いだろうな~、と感じてしまった今日この頃でした。
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