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グリーンカード放棄と米国の税金「追加Update」(5)

今回は、しばらく途切れてしまった長期グリーンカード放棄時に適用されるMark-to-Market課税の詳細を続けたい。だんだんとオタク分野に突入している感があり、日本人の方のグリーンカード放棄の際にはちょっと想定し難い事実関係も多いが、財務省としては考え得る全ての可能性に網を掛ける勢いなので、一応、メジャーな規定には触れておく。

*過去からの課税繰延規定の適用中止

米国の税法にはいろいろな課税繰延規定があるが、長期グリーンカードを放棄する場合には、過去から適用されている繰延規定の全てが中止となり、すなわち放棄の年に繰り延べられていた課税関係を認識することとなる。

例えば、Like-Kind Exchange(適格事業資産、投資資産の買い換えに適用される圧縮記帳)の一種である「Deferred Like-Kind Exchange」を行う際には、資産を手放した後に、代替で取得する資産の認定までに時間が掛かることがある。代替の資産を取得していない段階で、長期グリーンカードを放棄する場合には、Deferred Like-Kind Exchangeで繰り延べられるはずであった売却益が放棄時点で認識させられるということになる。接収、収用などの措置に基づく繰り延べに関しても同様である。そんなタイミングでグリーンカードを敢えて放棄するというのもあり得ないに近いが・・・。

また、Sec.367(a)に基づき「Gain Recognition Agreement (GRA)」を結んでいた個人に対しても同様の取り扱いが規定されている。Sec.367(a)自体はとてつもなく複雑な規定で今回のポスティングでその片鱗でも紹介することは不可能だが、個人が適格現物出資規定を利用して外国法人に含み益を持つ株式を出資したとする。米国法人に対する出資ではないので潜在的には適格現物出資でも含み益をゲインとして認識する必要が生じるケースがある。その際にIRSとGRAという契約のようなものを結んで株式売却その他特定の行為を今後5年間行わないという条件でゲインの認識をナシにしてもうらう。もちろん、条件違反があればゲインの認識が必要となる。GRAを締結してから5年間が経っていない間に長期グリーンカードを放棄すると、条件違反に相当し、ゲインの認識が必要となるというものだ。財務省はなかなか抜け目がない。ちなみに同様の規定が2009年2月に公表されたSec.367(a)の暫定財務省規則にも含まれている。

また外国信託に含み益を持つ資産を拠出する際には、米国市民・居住者である委託者が資産の実質的な所有者となるGrantor Trustであれば課税が繰り延べられるが、委託者が長期グリーンカードを放棄する場合には、米国居住者でなくなるため、その時点でゲインの認識が必要となる。

繰延報酬・退職金プランとグリーンカード放棄

今回の長期グリーンカード放棄に係るMark-to-Market課税で最も複雑な規定と言えるのが繰延報酬・退職金プランに対する取り扱いだろう。この取り扱いの説明はかなり長くなるので次回のポスティングとする。