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All Cash D再編とオバマ国際課税改定

2009年9月8日の「時代に逆行(?)アメリカ国際課税ルール(16)」で適格再編で交付される現金対価に対する取り扱いに触れたが、その件で実際のインパクトに係る質問をもらったので若干追加したい。

もともとのポスティングからだいぶ過ぎているが改正の内容および目的に関しては再度オリジナルを読み返して頂きたい。国際課税ルールに関して書き始めるとビートルズを思い出す(?)。以前に余談で触れたビートルズRemasterボックスセットは、忘れた頃についにアマゾンから送られてきた。最近は音楽の購入と言えばダウンロードなので、CDの封を開けるという行為自体が何となく懐かしい。それにしても相変わらずCDの密封ビニールの開け難いこと。セットには10枚以上のCDが入っているので全部開けるだけでも一苦労で指の爪が剥がれそうだった。

そして早速Finger 5みたいに指の震え(興奮とCDのビニール剥がしの双方の影響で・・・)を押さえつつCDをセットした。小学校低学年の頃、始めてレコード屋で買ったHey Judeのシングル(B面はRevolutionだった)を持って家に走って帰ったあの日の興奮がフラッシュ・バックしてきた。

ちなみにバンドとして当時本来意図されたのは「モノ(Mono)」ということでそちらも後日聞かざるを得ないが、とりあえずは、そこまでこだわらずにいい音で聞けるステレオ・バージョンから。

当然最初はアルバムPlease Please Meから入ったのだがいきなり大感動。すごい!一番顕著な違いは今まで混ざっていた二人のギターがクリアに分かれている点。ギターx2、ベース、ドラム、ボーカルの各々の音がクリアに聞こえる。これならもっと正確にコピーできるかな、と思った(今更・・・)。もちろん、もともと2トラックで録音されているものなので限界はあるんだろうけど、よくここまで再現してくれたものだ。例えば一曲目の「I saw her standing there」。昔バージョンではJohn Lennonの7thを多様したリズムギターとGeorge Harrisonのリバーブの掛かったようなバッキングギターが混ざっててチョッと気持ち悪かったのがここに来てようやくスッキリした。

また、アルバムタイトル・トラックとなるPlease Please Meの3番の歌詞は1番と同じなんだけど、John Lennonが3番の2コーラス目を間違えて2番の歌詞で歌い始めて、失敗に気づいて笑いをこらえ切れずに「Come On・・・」と吹き出しながら歌っているのもよりリアル感を伴って聞こえてくる。前から思ってたが、こんなバージョンを直さずにそのままレコード化しているのも面白い。今だったらもちろんパンチで修正してただろう。2トラックでは無理だけど。

ギターの上を指が動く際に出るチョッとしたノイズみたいなのが聞こえるとなぜか昔から体がゾクゾクするんだけど、Remasterはゾクゾクだらけだ。それにしても最初にCDが出たのがビニール版から20年、信じられないけど、それから更に20年が経ってRemasterに至っている。まさしく「It was 20 years ago today…(ファンの人なら分かるね?)」だ。レコード、初版CD、Remaster、と同じアルバム10枚以上を3種類も買わせるバンドは後にも先にもビートルズだけだ。モノのボックスも入れると4種類という方が正しい。

*「Boot within Gain」規定

さて、本題のタックスだが、9月8日のポスティングにあるように現在の法律では、適格再編に際してBootを受けとっても「旧法人の株式の含み益」までしか課税されない。現金を受け取れば通常は課税されることが多いのを考えるとこれはかなり有利な取り扱いで、これを一般に「Boot within Gain」規定と呼ぶ。

米国事業主体で手持ち現金が不足する事態が多発したここ1年、外国子会社に眠る現金を何とか税務的に効率よく(簡単に言うと税金を余り払わずに)持ち帰る手法が沢山模索されていたが、Boot within Gainのような都合のいい規定をタックス専門家が見逃すはずはない。

*利用例

この規定の利用法としては次のようなものが一番一般的だと思う。米国親会社Pが海外にある二つの子会社の一つAを他の外国子会社Bに現金で売却する。当然、Bは現金を比較的沢山持っている法人だ。このままだと、これは関連会社間の株式売却なのでSec.304でみなし配当となる。というか、正確に言うと、PはAの株式をBに現物出資し(Sec.351)、その対価でB株式を受け取り、Bが即座にB株式をPから現金で買い戻したかのように取り扱われる。Bによる償還はPがBの100%親会社であることからSec.301の分配扱いとなる。したがってBのE&Pの範囲で通常は配当扱いだ。

外国税額控除等で米国で課税がないのであればこのままSec.304でもプラニングになる。もともとの取引はPによるA株式のBへの売却なので、形態的にはBの所在国では配当扱いでない可能性が高く、B国で源泉税の対象とならないというメリットもある。

ここでもしPによるA株式のBへの売却と同時に売られた子会社であるAを「Check-the-Box」して税務上は支店扱いする選択をすると取り扱いは全く異なってくる。この場合には、税務上は、あたかも売られた子会社の資産そのものが売却され、売却対価の現金がA経由(Aは清算扱い)で米国親会社に分配されたかのような取り扱いとなる。すると、他の要件を満たすという前提でこれは米国税務上の「All Cash D再編」となる。株式を売ったことにならないのでSec.304の適用はないだろう。

Bからの分配なので全額配当となりそうなものだが、この取引の鍵は、Pが受け取る現金は全額D再編下で受け取るBootだという点だ。すなわち、再編の対価としてBootを受け取っているので米国親会社P側では上述のBoot within Gain規定を適用することができる。結果として、売却した子会社株式の税務簿価が子会社の時価より高い場合、またはほぼ同額である場合、にはゲインがないので全然課税されないということになる。

このような取引に網を掛ける目的で草案されているのがオバマ政権の改定案だ。オバマ改定案が法律化されると、上のような例ではBoot全額、すなわち対価全額が課税対象のみなし配当となるだろう。ただ、現時点で具体的な法律化に向けた審理が進んでいるという話は余り聞かない。この辺りはまた別の機会に。