2月にApple社の株価が$500を越えて以来、これが果たして高いのか安いのか、といった議論を色んな所で聞くようになった。
御存知のように人気商品を次々繰り出すAppleは、売上でも技術影響力でも飛ぶ鳥も落とす勢いで、アナリストも投資家もAppleを悪く言う人は稀。
今日の株価$544というのは高い印象があるが、これはしばらく株式分割(Stock Split)をしていないせいなので、単にそれだけを見て高いか安いかは判断できない。
株価の割高・割安を決める一般的な数値は2つある。
1.P/E Ratio(Price-to-Earnings Ratio=株価収益率) これは株価を一株当たりの純収益で割った数字。
2.P/B Ratio(Price-to-Book Ratio=株価純資産倍率) これは株価を一株当たりの純資産額で割った数字。
Apple社のPER=15.5、PBR=6.5。どちらも悪くない数字だが、「すごく高い」というレベルではない。
これからの著しい成長が期待される会社ならば、P/E Ratioは少なくとも20を越えることが多い。じゃあ、なんで、AppleのPERは15.5なんて落ち着いた数字なのか?
現在のS&P500全体のP/E Ratioは歴史的平均に近く16あたり。 しかし、企業の収益はもともと変化が激しいので、Apple社に限らず一般企業の去年からの収益の著しい上昇を、市場投資家達は「いつまでも続くことやら」と、いまいち懐疑的な目で見ているという印象もある。
セクターはバラバラだが、他のIT企業の数値をいくつか挙げてみるとこんな感じ。
IBM PER 15.1 PBR 11.6
Google PER 21.0 PBR 3.5
Microsoft PER 11.7 PBR 4.7
Amazon PER130.1 PBR 10.8
こういった数字に比較して見るApple社は、やはり成長株というよりも、成熟した会社。これには解釈が2通りある。
解釈1.市場はAppleにこれまでのような急成長を期待していない。
解釈2.PERやPBRからすると、Appleの株価は安すぎる。もっと上がってしかるべき。
現時点では解釈2を語ってまだまだイケルと考える人が多い。Growth Stockを追いかける人達はもちろん、この頃はValue Investorsの中で「Appleは買い」という人も出てくる始末。
断っておくと、Appleの時価総額は$500ビリオンを越える(時価総額=出回っている株数X現在の株価)。これは現在のマイクロソフト($270B)とGoogle($202B)を合わせた額よりも高く、時価総額だけで見ると世界一大きな会社になる。Apple社の売り上げの75%は、iPad, iPone, iPod, iTuneから来るという。それで世界一の大きさというのもすごい話だ。でも、それだけ大きな会社が倍々ゲームで成長していくことができるか(また、そのレベルを維持していけるかどうか)どうかも今の議論の焦点のひとつ。
マクロソフトは1999年に時価総額が$600ビリオンを越えたことがあり、それをインフレ調整して今の金額に直すと$800ビリオン(説明はこちら)。なので、「Appleもまだまだ行ける。」と考える人もいる。
創立者でビジョナリーだったSteve Jobs氏が早世し、果たして今のCEOが同じペースで会社を導いていけるのかも疑問のひとつ。次世代商品でだというApple TVもまだ未知数。また、多くの消費者は2年程で携帯を買い換えるものだそうで、携帯機器業界は移り変わりが激しい。モトローラ、RIM、Nokiaと、どれも全盛期は短かった。不安要素を上げるときりがないが、アップル商品愛好者は時に「アップル教徒」と呼ばれるほど同社への熱意が強く、今のところiPhoneも, iPadも忠実に機種変更を続けている様子。
Appleは現在$98ビリオンという巨額のキャッシュを抱えている。だったら、市場はそれを評価してもっと高い株価でも納得するのでは?という議論もある。しかし、短い歴史を振り返ってみると、IT企業が多額のキャッシュを抱え込んだ場合、意味の無い買収を重ねたり、効果の無い株のBuy-Backをしたり、中々キャッシュを効果的に使えないという例が多い。現時点でAppleは配当を出していないが、投資家たちの要求に折れて近々配当を出し始めるのではという噂もあり、CEOのTim Cook氏のスピーチにもそれを示唆する部分があったという。もし、そうなったら、Income Investorsまで「Appleは買い」と言い出すのだろうか?
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