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大手銀行と小口預金者

「預金額10万ドル未満の顧客相手のビジネスは採算が取れない」

大手銀行のJPMorgan Chaseの重役が先週そんな発言をして話題になった。投資者会談中に、新金融規制下でのビジネス戦略を説明する上で出てきた発言だ(Bloombergリンク)。厳密に言うと、10万ドルというのは預金額だけでなく同行でのローン額や投資口座も含めた金額。

でも、「100K未満は採算が取れない」というのもすごいよね。「いったい、どんな殿様商売しているんだろう?」とちょっと不思議になってしまう。

銀行側の言い分も書いておくと、大手銀行は多数の銀行ブランチやATMネットワーク、24時間コールセンター、サーバーセンター、データ管理システム等といった巨大インフラストラクチャーを抱えていて、そのどれにも費用が掛かる。銀行がチェッキング口座ひとつを維持するのに、年$200~300程の費用が掛かるという。銀行としては、なんらかの形でその費用を回収しないと、商売あがったりだ。

大目の預金を置いてくれる顧客、ローンや投資口座、アセット・マネジメントのサービス利用等で手数料を落としてくれる層からは銀行も収益が上げられる。

採算が取りにくいのはは比較的小額をチェッキング口座に置くだけで、主にお金の出し入れ目的に銀行を利用している顧客層(Transaction-Only Banking)。どうやら、銀行は、Overdraft Feeとデビットカード使用時の店舗への手数料で、この顧客層のビジネスの採算を取っていたらしい。Dodd-Frankを初めとする新金融規制で、その両方の収入源を制限された今、小口預金者相手の銀行ビジネスをどう採算合わせるか、その答えを見つけるため大手銀行は手探り状態だ。抗議に押されて取り消されたデビット・カードの月$5の使用料も、Nobuさんのブログに出てきたBank of Americaの新手数料体系もその手探りの試みの一端と言える。

顧客の視点から見ると、これまで無料だったサービスに改めて料金を払うというのは非常に抵抗感がある。ただ、これも、ロケットが重力圏を抜ける時のように、$0がプラスになる時の抵抗感が一番強いのではないかとも思う。一旦、料金を払うことに心理的に慣れれば、抵抗感はぐんと弱まる可能性はあるかもしれない。

困ったことに、現状下ではアメリカ人の過半数が「採算取れない顧客層」に入ってしまう。

JPMorgan Chaseの個人顧客の70%が預金・ローン・投資総額「100Kドル未満」で、そのうち70%弱は同行にとってUnprofitable(長期費用も含めると)。さらに言うと、同行の個人顧客の3分の1は、預金額5K以下で、そのうちの80%が同行にとってUnprofitableだという。(JPMorgan Chaseのプレゼン

大手銀行はしばらくは小口預金者には人件費の掛からないATMやオンライン利用を促し、他のサービスは大口預金者対象にフォーカスさせるという従来の戦略を続けていくようだ。ブランチを閉鎖・統合しながら、「採算の取れる顧客層」向けにインフラを再編成していくのではないだろうか。

大手銀行にとっても、収益ベースがやたら狭くなるというのは、長期的にあまり好ましいことではない。一方、比較的低所得層の住む地域からブランチやATMが消えてしまったりすると、それはそれで社会問題になる(元からその傾向はあるが、それに拍車が掛かるかも)。大手銀行とアメリカの一般大衆がいかに平和共存できるか・・・それが今後の金融政策の課題になりそうだ。

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