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2013年の連邦所得税:あーだこーだ推測篇

ポピー

掲示板でMonicaさんが「2013年へ向けての節税対策」というトピを立てられたので、私も話題に便乗。

様々な税法が2012年末に失効したり、新しい税法が2013年に施行されたりするので、このまま議会が行動しないと、個人にとっては2013年はまったく違った所得税環境になる。

「将来の税制の不確実性にどう対処するか」といったことで専門家達があーだこーだとテレビでアドバイスをしている。「あっ、この感じはデジャヴュ(既視感)」と考えていると、やっぱり2010年がこんな流れだった。あの年は議会が12月頃まであーだこーだと議論をして、皆をやきもきさせたっけ。

2010年12月に、ほとんどの税法の失効を2年先延ばしする暫定案で落ち着いたのだが、それがまた今年末に失効しつつある。どうせまた、11月に大統領選挙が終わったあとで議会ですったもんだして、2013年の税法が確定するのは今年の12月になりそうだ。あーだこーだの議論をまた1年経験することになるのかと思うと、映画Groundhog Dayを見ているような気分になる(映画Groundhog Dayは、Bill Murrayの演じる憎まれキャラが運命の日を延々と繰り返すお話)。

2013年から起こりうることを項目別にあげてみる。

1.Medicare Surtaxの施行。

Modified AGIが250Kを越える既婚世帯(シングルは200K)には、2013年から投資純所得に対し3.8%のSurtaxが掛かる。(正確には、①Net Investment Income、もしくは、②AGI+Foreign Earned Income が250Kを越えた額、①と②のどちらか低い方に3.8%の課税)。この課税対象の投資純所得には、利子、配当、キャピタルゲイン、家賃収入などのUnearned Incomeが含まれる。しかし、401K/ROTH/IRAのようなDeferred Accountからの引き出し額や、Muni Bondのような非課税利子は含まれない。

2.高所得者向けMediare Payroll Tax増税

これまで所得には1.45%のMedicare Taxが掛かっていた(ここではEmployeeが払う分のみを考慮)。2013年からは既婚家庭で250Kを越えたWageには、0.9%増の2.35%のMedicare Taxが掛かることになる(シングルの場合は200K以上のWage)。

これらふたつのMedicare増税は、オバマ大統領のHealth Careプランを賄うため。なので、オバマ・ケア・プランが巻き返しされない限りは(選挙の風向き次第ではそれも不可能とは言えないが)、これらMedicare増税は実行される確率が高い。

あと、2010年の暫定税案が失効すると、2013年からは次のような変化が起きる。

3.トップ2ブラケットの税率アップ

ブッシュ減税延長策が失効すると、本当は全ての所得税ブラケットに影響するが、さすがにミドルクラス増税は難しいので、トップ2ブラケット以外は据え置きになるはず。しかし、トップ2ブラケット33%と35%が、それぞれ36%と39.6%に引き上げられる可能性はあり、オバマ大統領の予算案にもそれが入っている。

4.長期キャピタル・ゲイン税アップ

これもブッシュ減税策延長で15%だったものが、失効後は20%に戻る

5.Pease Amendmentの施行

これも2013年まで施行が延期された税法で、AGI260K以上の既婚世帯のItemized DeductionをPhase-out(徐々に減らしていく)していくもの(シングルは210K辺りからPhase-out)。

6.遺産税アップ

暫定案では今年の遺産税の控除額が5.12ミリオンで、それを越えた額は35%から課税される。暫定案が失効すると、控除額が1ミリオンに下がり、かかる税率は55%にアップ。

そういう中でオバマ大統領が2月に新予算案を提出。その中の提案は:

4A.高所得層だけ長期キャピタルゲイン税アップ

AGIが250Kを越える既婚家庭には(シングルは200K)、長期キャピタル税を20%にアップ。250K以下の家庭には15%をキープ。

5A.高所得層のItemized Deductionを28%でキャップ

AGIが250Kを越える既婚家庭には(シングルには200K)、Itemized DeductionをAGIの28%でキャップすることを提案。(オバマ税案では、Muni BondsのようなTax-Exempt InterestsやForeign Excluded Income, Employer-Sponsored Health Insurance Premium, Retirement Contribution もこのキャップに入ることになっている。)

6A.遺産税を2009年レベルに据え置き

2009年レベル、つまり控除額は$3.5ミリオン、それを越える額は45%から課税することを提案。

これら4A〜6Aは、上の4〜6の暫定案失効後の、オバマ大統領の対応策である。共和党大統領候補が正式に決まれば、これに対抗した共和党側の対応案が出てきて、選挙運動や議会であーだこーだと議論することになる。主要候補の税案比較はこちら。

それに加えて、オバマ大統領の税案には次のような項目もある。

7.これまで15%で課税されていたQualified DividendsをOrdinary Incomeの税率で課税(AGI250K以上の既婚世帯のみ、シングルは200K以上。それ以下はこれまで通り15%)。

8. Carried Interestsを15%で課税する特典を廃止。

9. Buffett Tax。これは、現在のAMTを撤廃し、代わりに年収1ミリオン以上の人に最低30%の税率を払わせるといういわばAMT2.0を提案。

オバマ大統領の新税案7〜9は、「ロムニー候補相手の選挙活動」を意識したもので(ロムニー候補はメガミリオネアーで、所得の多くをCarried Interestsとして得ているのは前も書いた通り)、本気で税案として施行するつもりなのかはよく分からない。特にBuffett Taxは、税案としてはかなり生焼けで、オバマ大統領の出した予算案の計算にも入っていないので、あくまでオバマ大統領の政治的スタンスを象徴するだけだと噂されている。

私が読み散らかしている限りでは、所得税ブラケットもまた長期キャピタルゲイン税も、現状の%が据え置きになり、遺産税も控除額$5ミリオンで据え置きになるのでは・・・そういう読みが現時点では強いようだ。もちろん、それも今の時点ではただの推測。

果たしてこれのどれだけが最終税案に残るかはこれからの政治の風向き次第。特にトップふたつのブラケットに入る比較的高所得者層には風雲の一年、選挙が終わるまでCliffHanger(崖っぷちにぶら下がるドキドキ感覚)になりそう。

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