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Upwardly Mobileな町とそうでない町

学校が始まり、アメリカ全土で親御さん達の安堵のタメ息が聞こえて来そうな8月の終わり、皆様いかがお過ごしでしょうか。

前記事に続いて、New York Timesの取り上げた、社会的流動性の話の続き。

NYTimesの記事:In Climbing Income Ladder, Location Matters

研究発表サイト:The Equality of Opportunity Project

アメリカでFamiliy Incomeがボトム20%(約$25K以下)に入る家庭で育った子供達が、トップ20%の所得層(Family Incomeが30歳までに$70K、もしくは45歳までに$100K)に到達する確率は、都市ごとでどう違うのか?

最大都市圏50に限ってみるだけでも、到達確率は4.0%から11.5%といったバリエーションがある。つまり、同じような所得レベルの低所得家庭で育つにしても、どの地域で育つかで、将来の社会チャンスに大きな差があるということ。

50都市圏の中の到達確率ベスト5は、

11.5% Salt Lake City, UT
11.2% San Francisco, CA
11.2% San Jose, CA
10.4% Seattle, WA
10.4% San Diego, CA

(50の最大都市圏に絞ってあるので、Fracking Boomで栄えるNDの都市なんかは入ってない)

50都市圏の中の到達確率ワースト5は

4.0% Atlanta, GA
4.3% Charlotte, NC
4.8% Indianapolis, IN
5.1% Detroit, MI
5.1% Columbus, OH

ワースト5は、どれもAfrican Americanが人口に占める比率の比較的高い町ではあるが、これら地域で育った低所得の白人の子供達も到達確率が低いので、単純に人種差だけでは説明できない何かがあるのだろう。人種差別や人種隔離政策の歴史的レガシーが地域や社会に根付いて、African Americanであれ白人であれ、そこに育つ子供達に影響を与えているのかもしれない。

ベスト5都市の数字は、北欧のように社会的流動性の高い国と同じレベル。一方、ワースト5の数字は、他の先進国ではほとんど見ることの無いレベル。そんな数字が地域を変えて同時に存在するのがいかにもアメリカ。

社会的流動性の低い地域にどんな特徴があるかというと、

・低所得者の居住地が隔離されている地域
・ミドルクラス層が少なく、拡散していない地域

所得レベルによる住み分けは、アメリカではどこでもあることだけど、それが極端な地域もあるのだろう。

NYTの記事ではアトランタが例に挙がっている。アトランタでは、ボトム20%の家庭で育った子供がトップ20%に到達する確率は4%と全米でも底の方。

アトランタはここ何十年か目覚ましい経済成長を続けてきた地域で、「Southern Miracle」とも呼ばれている。裕福な町が多数あり、非常に暮しやすいという定評がある。

一方、アトランタでも低所得者が住む場所は限られていて、NYTimesの記事に例が出ているが、車を持たない低所得層がそこから他の町に通勤しようとすると、不便で貧弱な公共交通網を乗り継がなくてはならない・・・という話は私も以前聞いたことがある。公共交通の未発達が所得層の地理的隔離を強化しているのだろうか。

それぞれ都市の所得レベルが流動性に影響しているの可能性もありそうだけど、例えばアトランタとシアトルは地域の平均所得レベルは似ているものの、シアトルは到達確率は10.4%とトップレベルで、アトランタの到達確率4%とは大きな開きがある。なので、所得レベルだけでは説明しきれない地域差が何かあるのだろうという話。

一方、Upwardly Mobile(到達確率の高い)の特徴はというと:

・K-12の学校制度の質が高い(高APIスコア、低ドロップアウト率、生徒一人当たりの支出額)
・社会資本指数(どう定義されるのか分からないけど)が高い
・シングルペアレント率が低い
・宗教信者の割合が高い(Salt Lake Cityなんかがそうかな?)

そういった特徴がよく見られるという。

ミドルやアッパーミドルの家庭で育つ子供達の社会チャンスの地域差は、多少あるものの、相対的には小さい差だという。

一般に、低所得層がスティッキーな所は、高所得層もスティッキーらしい。また、低所得の子供達がUpward Mobileな町は、高所得層の入れ替わり確率も高い。つまり、アメリカと一口に言っても、社会的流動性が高いか低いかは地域次第ということ。

リンクサイトにもっと詳しいデータやランキングが載っているので、興味のある方はどうぞ。

コメント

> 学校が始まり、アメリカ全土で親御さん達の安堵のタメ息が聞こえて来そうな8月の終わり、皆様いかがお過ごしでしょうか。

バケーションしてました(笑

それはともかく、この研究発表サイトのデータは面白い事は面白いのですが今一データのとり方がわからないのが個人的に気になります。
FAQにどうやって確率を出しているのかという項目がありますが微妙に答えになってない(Bottom 20%の子供を抽出してTop 20%になる係数を計算した〜とか、その係数をどう出したかを知りたいのに説明無し)んですよね。
追跡調査(45までに$100kかどうかとかだと40年に渡る調査が必要)をしたというわけでは無いと思われるので、果たして人口の流出入をどう扱っているのかが全くわかりません。
普通に考えて生まれ育った地で必ずしも働くわけではありませんから。

上位に位置しているNorthern CAはアメリカ外からの流入も非常に多く、そしてそういった私達を含めた移民系が教育水準や給与水準を押し上げている上に一発当てた起業家がそれなりに居ますから、単純にBottom/Topの20%の割合比較だけだと変な数字が出るのは間違いないわけで、そのあたりを考慮しないと偽相関な結果を導き出すのでは無いかと思ったりします。

それとCost of Livingの標準化(normalization)を行わないと統計数値として意味をなさない気もします。
地域差が2~3倍当たり前の世界ですから、$100kの重みも場所によって全然違いますよね。
もっとも私は別に統計の専門家でもなんでもないのですけど(笑

>通りすがりさん

親はこれからバケーションですか(笑

おっしゃるように、子供の所得は、子供が30歳になった時点での所得のスナップショットのようですね。親の所得は子供が15~20歳位の時期のもの。所得も親子関係の追跡も、Tax Returnのデータを使っています。

到達確率の計算は、特に凝った計算をした訳じゃなく、単に何人がTop 20%の所得枠に入ったかを数えただけのようです。

記事には書かれてないけど、別のインタービューでは、子供がごくごく小さいうちに良く無い地域から良い地域に引っ越したら、引越し先の影響が強くなるという話でした。子供が13歳だか16歳辺りになってから引っ越すと、引越しの影響も薄くなるらしい。

所得レベルの地域差は、全国データを見る時の、永遠の課題ですね。難しいです。(笑

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