NY連銀のレポートのおおまかな見積もりによると、アメリカで学生ローンを借りた人の27%(!)が30日以上支払いが遅れているらしい(脚注)。公私の学生ローンのバランス総額が、$1トリリオンに達した中(USの年間GDPの7%に相当)、これはちょっとショックなニュース。
学生ローン焦げ付きの原因は、新卒者の就職難や失業に加えて、For-Profit Collegeの学生ローンの濫用 といった後暗い問題もある。 二十歳前後の若い人だと、学生ローンの、後々の支払いがどれだけ大変か、あまり理解していないこともあるだろう。「ご利用は計画的に」というやつで、消費者金融保護局が学生相手のローン教育に乗り出すらしい(まだ検討中だけど)。
ご存知のようにアメリカは意外に学歴社会で、学士号の有無が就職チャンスや収入に大きな差を産むため、学生ローンの利用には必ずしも否定的ではない。しかし、問題は額と種類。
借入れ総額が卒業後に期待される初任給の1年分を越えないようにというのが一般的な親指ルール。
また、学生ローンを借りるなら、プライベート・ローンよりもできるだけ政府系ローンを選択するように勧められている。政府系ローンは固定利子だし、万が一失業といった場合も支払いプランに様々な柔軟性があるからだ(連邦学生ローンの種類はこちら)。
大学を卒業する学生の3分の2が何らかの学生ローンがあり、その中での平均借入額は約2万5千ドル。
卒業後も、多額の学生ローンの返済のためしばらくは家購入も結婚・子供もお預けという話はよくメディアに出てくる。
また、現行法では学生ローンは自己破産してもおチャラにならないので、不履行になったあとも、学生ローンは利子や徴収料金を積み重ねながらその人を一生追いかける(プライベート・ローンは遺産へのクレームもできるので、文字通り墓場まで・・・)。
親が子供のために借りる学生ローンもある。親向けの連邦政府系学生ローンはPlus Loanと呼ばれ、これももここ数年急増して、バランス総額が、$100ビリオンに達した。バブル期は、Home Equity Loanで子供の大学進学費用賄う親も多かったが、それも難しくなった今は、このPlus Loanがギャップを埋めることも珍しくない。Plus Loanは親のクレジットが良ければ、子供の大学進学費用に使う限り借りられる額には制限がない。結果、5万ドル、10万ドル、何十万ドルといった学生ローンを抱える親も出てきた。こういった出費は引退間近の夫婦のリタイアメント・プランを狂わせてしまう。
「お金の心配はしなくていいから、あなたの行きたい大学に行きなさい」
そう言ってあげたいのが親心だろう。しかし、学費の高い大学に複数の子供を送るとなると、アッパーミドル層だって負担は重い。
ファイナンス・コラムニストLiz Westonさんがラジオ・インタビューで、子供が高校の1,2年生の頃から、大学進学費用の工面について親子で話し合うことを勧めている。子供が大学から入学許可の手紙をもらってからやっとお金の話を始めるのでは遅すぎるという。
家を買うのと同じで、まず一つの大学に惚れこんでからファイナンシングを考えたのでは、背伸びをしてしまいがち。まずは、ファイナンシング・プランを考えてから、現実的に大学の選択を考えようということらしい。
実際の所、親の経済状況をあまり理解していない子供も多いし、親もファイナンシャル・エイド制度の複雑さに圧倒されてしまうことがある。
親はいくら援助できるのか。Need-Based Financial Aidのチャンスは?本人がローンを組むならいくらまでが妥当か?ローンを減らしたいならば、当人の学力・才能等からMerit-Based Financial Aidの期待できる大学はどこか?どの大学にアプライするか決める以前に、親子の間でそういう話し合いや情報収集があるべきというのがWestonさんの主張。
(脚注) 政府系学生ローンには、在学中や卒業後のグレースピリオド半年は返済しなくて済むものもあるので、そういった過渡期にあるローンを別にして、現在返済義務のあるローンに絞って出した不履行率が27%。額にして21%。妙に高い気もするが、今年夏に消費者金融保護局(CFPB)が学生ローンに関するレポートを出すので、それでもっと詳しいことが分かるはず。
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