数字で見るミドルクラス

大統領選挙戦只中のアメリカで、「ミドル・クラス」という言葉が頻繁に出てくるが、格差社会アメリカの中で、中間層を定義するのは意外に難しい。

ただ単に全米の世帯所得の中央値を見ると$50,054（2011年）。しかし、ここ数十年の間に核家族や老若の単身世帯やシングル・ペアレント世帯等が増え、1970年は3.2人だった一世帯の平均人数は今は2.6人まで減っている（説明はここ。　学校出た子供が自立できずにいるここ数年はわずかに上昇中）。世帯人数が減れば、稼ぎ手の数も減りがちで、世帯所得も低めになる。ここ何十年か、世帯所得中央値がいまいち伸び悩んでいるのも、この世帯人数の減少も要因の一つ。

そういった人口動向を見るには上記の中間値も意味があるが、ミドルクラスと言うと、典型的に子持ち既婚世帯（最低でも3人世帯）をイメージすることが多いので、そのイメージと上記中央値の指す所のズレが出てきてしまう。

Pew Charitable Foundationが、最近出したミドルクラスのレポート（The Lost Decade of the Middle Class）では、センサスの世帯所得データを3人世帯分にリスケールすることで、この問題に対処している。

3人世帯を想定した時の中央値は$59K。その3分の2から2倍である世帯年収$39K~118Kの範囲をミドルクラスの所得レンジ、というのがこのレポートの定義。そのレンジに入る世帯の世帯年収中央値は$69.5K（2010年）。

（4人家族を想定するとミドルクラスの所得レンジは$45～136K辺り。）

こうやって定義したミドルクラスの世帯所得中央値は、景気の波に揉まれながらも70～90年代に掛けて伸び。2000年に$73Kでピークに達したあと減少傾向。よって、Pewのレポートは2000年からの10年をミドルクラスのLost Decadeと呼んでいる。（日本人の感覚だと、Lost Decadeが始まるのは2008～2009年じゃないかと思うんだけど・・・まあいいや・・・。）

またミドルクラスを自称する人達に、「4人家族がミドルクラスのライフスタイルで暮らすにはいくら年収が必要か？」と聞いてみたところ、答えの中央値は$70K辺りになるらしい。まあ、こういう質問では、自分んちの年収を答える傾向が強いらしいけど、それでも$70Kあたりが落とし所なんでしょう。

2010年のアメリカの全世帯の51%が、上記の定義によるミドルクラスに当てはまる。この割合は1971年には61%だったので、ミドルクラスは縮小傾向。代わりに、アッパークラス（これには俗に言うアッパーミドルも含まれる）は14%から20%に増え、ローワークラスも25%から29%に増えている。こういう意味でも経済格差は徐々に拡大中。

また、ミドルクラスの純資産額中央値を見ると、2007年の$153Kから2010年の$93Kへ、40%近く減額している。アッパークラスに比べると、ミドルクラスは家のEquityが純資産に占める割合が高く、それが住宅バブル崩壊の相対的インパクトを拡大した模様。

アメリカは経済層ごとの住み分けが進んでいるので、ともすると自分の周囲だけを見て「これが普通のミドルクラス」と思い込んでしまうことがよくある。時々こういった数字を見るのも、現実の感触を取り戻す方法のひとつ。