社会的流動性(Social Mobility)というのは、低所得者の子孫が何世代もそのまま低所得・・・といったように社会層が固定されていないこと。簡単に言うと、低所得の家庭で育った子供でも、ミドルクラスやそれ以上の社会経済地位を獲得するチャンスがあるかどうか。高い流動性の生み出す公平感は、社会を一つに繋ぎとめる重要な絆でもある。
ずっと昔は、アメリカは貧富の差が大きくても、社会的流動性(Social Mobility)が非常に高いことを誇る国だった。The Land of Opportunityってやつですね。しかし、アメリカの社会的流動性もどんどん低下し続けて、今では欧州以下だという統計が出ている。
いったい何が起きたのか?何が社会的流動性の障害になっているのか?
そんな探求の第一歩として、ハーバード(Raj Chetty, Nathaniel Hendren)とUCバークレー(Patrick Kline, Emmanuel Saez)の教授達が、アメリカ国内の社会的流動性にどれだけ地域差があるかを研究発表して、New York Timesにそのプレビューが出ている。
NYTimesの記事:In Climbing Income Ladder, Location Matters
研究発表サイト:The Equality of Opportunity Project
この地図はNew York Timeの記事から借りているのだけど、アメリカでFamiliy Incomeがボトム20%(約$25K以下)に入る家庭に育った子供達が、トップ20%の所得層(Family Incomeが30歳までに$70K以上、もしくは45歳までに$100K以上)に到達する確率をそれぞれの地域で色分けにして表現している。赤茶色の地域が到達確率が低く、青色の地域は高い。
この定義で見る社会的流動性が低い(到達確率が低い)地域は南東部。特に、NC, SC, GA, AL, MS, ARの辺り。一番濃い赤茶色の部分は到達確率が2.6~4%程の地域。あと、MI, OH, INの境界周辺にも少し到達確率の低い地域がある。
一方、Fracking Boomで栄えているNDには到達確率35%の地域もある。それ以南のグレートプレーンズに到達確率の高い地域が散在しているのも、やはり原油・ガス採掘や鉱業関係で賑わっているせいだろうか。
また、北東部、山岳部、西海岸一般も、到達確率は悪くない。中西部でも、MN, IAなんかはかなり良い。
当然のことながら、経済が著しく成長している地域の到達確率は一般的に高いのだけど、それだけでは説明しきれない地域差もずいぶんある。社会的流動性の地域差はどこから来るのか?
次のブログ記事では、社会流動性の高い都市と低い都市の違いにフォーカス。
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