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健康保険

F Fries

アメリカに来て最初はさっぱり理解できなかった(今でもよくわからない)のが健康保険。何しろ日本では就職すれば自動的にそこの健康保険組合に加盟し、本人のみか家族持ちかなんてことも人事が面倒見てくれるし、とにかく普通の勤め人にとってはあって当たり前の空気のような存在だと思うのですが、アメリカではこうはいきません。

最初のラボに就職したとき、ビザのオフィスで手続きして、それからまたどっか別の所に行かされて給料を振り込む銀行口座の手続きをし、これで終わりかと思えば、日を改めて「benefitのオフィスに行きなさい」と言われました。だいたい日本だったら、「入社手続き」とかいって、一回でどーんと書類を記入し、共通する事項(たとえば住所)なんかは一回書けばすべての部署に行き渡るようになっていると思うのですが、アメリカではそういう融通は効かせてくれない。これは「個人情報の保護」にも関係するのかもしれませんが、健康保険の申し込みには生年月日と性別が必要でも、人事は年齢や性別で差別しちゃいけないことになっているからそういうことを書く欄がない。だから違う部署が書類を融通しあうことはできないのでしょうね。

さてそのbenefitのオフィスとやらに行くと、「はい、この中から好きな健康保険を選んでね。このタイプだと月々の保険料は無料だけど、行ける病院はここの研究所の系列病院三つだけ。(最初に行ったラボはカリフォルニアにある某病院と母体を同じくする研究所だった。)旅行先で病気になったら無保険よ。その次のレベルはこれ。月々のお支払いはこれだけ。これだと系列病院なら入院費の九割、系列外の病院は七割まで支給されます。(はっきりした数字は忘れた。)その次は…。」

げげっ、アメリカってチョイスがあるのはサンドイッチのパンだけじゃなかったのか!当時、インタビューや観光旅行も含めてアメリカなるものに滞在したのは合計十日程度。サンドイッチを注文すればパンの種類やらマヨネーズの有無を問われ、「じゃあ、チーズサンドイッチ」と言えば今度はチーズの種類を聞いてくる。いいかげん何て面倒くさい国だと思っていたところ、健康保険にまでこのようなチョイスがあるとは全くの盲点でした。

とにかくよくわからないけれど、早く決めないと健康保険が付かないんだろう、どうせ医者にかかるような持病もないから適当でいいや、じゃあ、特上じゃなくて並!ということで真ん中の保険料のプランを選んだのを覚えています。

で、今になって思うのですが、その日に健康保険を決めなくても、どうせその次の月の給料から保険料が引かれはじめ、実際に保険が効くようになったのは二ヶ月先だったはずなのです。そんなことも知らず、勤めればその日から保険が始まるのだろうと無邪気に信じていた自分がなつかしい。

とにかくアメリカの健康保険はプランによって内容が全然違います。商売柄、勤務先はずっと大学か病院系の研究所、政府機関ばかりですが、ある病院系の研究所(最初の職場ではない)ではそのカバーされる内容の広さにびっくり!普通の医療行為はほとんど自己負担ゼロ、目の手術レーシックも無料、体外受精も二回まで(だったか四回までだったか)は無料、美容整形もそこの病院を使えば従業員割引、何だかここに勤めてるうちに病気にならなきゃ損、みたいな状態でした。

オバマ政権はアメリカの健康保険事情、医療事情の改革を目指していますが、雇用主によってこれだけ現状に格差があれば、大多数の納得する政策を打ち出すのがいかに困難か、苦労がしのばれます。保険料の雇用者負担部分を課税対象として財源を確保する可能性も考慮されているそうですが、確かに体外受精までカバーしてくれる保険と、最低限のギリギリしかカバーしない保険とをこれまで税制上同列に扱ってきたのは、ちょっと不公平かなとも思います。

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