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宝くじに当たったら…

F Fries

アメリカの宝くじは金額が大きく、当選者不在が何回か続くと、すぐに$100 million($1 millionが約一億円だから百億円)を越える。当選者が自分の住んでいるところの近くだと、地元の新聞に当選者インタビューが載ったりするけれど、その際ほとんど必ず出る質問が、「あなたはこの後も仕事を続けますか?」

大学のすぐ近くに宝くじの大きな広告があるので、現在の賞金総額がいくらなのか、いやでも毎日目に入る。昨日は(たったの)$57 millionだったけれど、ほんの二週間ほど前は$200 millionを越えていた。これが当たったら、自分だったらどうするかな?

大学の研究職というのは、「仕事」というよりは趣味に近い部分がかなりある。基本的に何を研究するかは、まったく本人の自由。これが製薬会社の研究開発部門なんかだと、会社の総合的戦略にフィットする研究しか認められない。たとえば、会社がガンの新薬開発から完全に撤退し、肥満薬に焦点を絞ることに決めたら、ガンの部門は廃止され、そこの職員は配置転換を受入れるか失職するかしかないらしい。ただ大学の場合、研究費は基本的に自分で稼がないといけないので、必然的に研究費がもらえる分野という制限はつく。

Biomedicalの場合、最大の資金源はアメリカではNIH (National Institutes of Health)だが、NIHの予算は無限にあるわけではないので、自然と重点分野とそうでない分野が生まれてくる。でも、たとえ重点分野でも、資金を要求する研究者がその分野に全く経験がないと見なされると資金をもらえないので、自分の過去の業績と合致する範囲内で、なおかつNIHが重要と見なしている分野という大枠の中で研究費の申請をすることになる。自分のお金で研究できるようになれば、こういう悩みはなくなるわけ。

実際、国が研究費を支給する制度が確立したのは二十世紀以降のことで、それ以前は研究をしようと思えば自分がもとから金持ちか、王侯貴族のパトロンを見つけるかしかなかった。十八世紀フランスで酸素の発見者として名高いラボワジェにしても収入源は徴税請負で、(今でいえばGoldmanあたりのinvestment bankerやhedge fund managerに近いか?)彼がずば抜けた天才だったからというよりも、その財力に物を言わせて他の誰よりも精密な器械を作らせ実験することができたから、酸素を発見することができたというのが実際のところらしい。

では、宝くじが当たれば、自分で研究するのでなく、そのお金で他人の研究を援助してはどうかというと、自分とは全く関係ない分野ならともかく、自分のよく知っている研究部門なら自分でやり続けたいと思う。「パトロン」として先行き有望な研究者を支援し、それを通してrecognitionを受ける(例えばハワード・ヒューズ財団や、最近ではゲイツ財団など)というのは確かに一つのやり方ではあるけれど、自分が好きで(最初に書いたように、研究というのは仕事というより趣味に近い部分が大いにあるので)やっていることに関しては、それをやって自分の名前で発表してrecognitionを受けるというパターンの方が面白いと思うから。

残ったお金はクラシック音楽の保護に当てるかな。地元のクラシックラジオ局は、最近週に何時間か、フットボールを放送するようになったらしいから、宝くじを当てたらこれを買い取って、フットボールの時間を音楽に戻させてやろう!

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