はじめて家を買ったときの話は前に書いた。次は二軒目の話。
二軒目の家を買ったのはクリーブランドだった。当時(2000年末)は東海岸では不動産熱が上がり出した頃で、メリーランドのうちのタウンハウスも少しずつ値上がり傾向を見せ始めていた。良い物件はリスティングされるとすぐにオファーが入り、bidding war(複数の買い手の競りあい)も見られるようになっていた。
わたしが気に入ったクリーブランドの家は寝室3つ、バスルーム2つ、車二台分のガレージのついた一戸建て、庭つき(それもなかなか大きな庭)築約50年。そんな物件が、当時のメリーランドのタウンハウスの評価額よりも安い売値(asking price)で出ていたので、わたしは深く考えずにその値段でオファーを出し、inspectionで指摘されたマイナーな欠陥を売り主に直してもらうという条件でその家を手に入れた。
失敗に気がついたのは、二年後、その家を売ろうとしたときのことである。(別に二年で不動産を転売しようと最初から計画していたわけではなく、ただ諸事情が重なってクリーブランドを離れることになっただけ。)
当時どんどん上がり続けた東海岸の不動産とは異なり、クリーブランドの物件は全然値上がりしない。近所の売りにでている家もいつまでたっても動きがなく、皆、値下げを余儀なくされている。Bidding warなんて聞いたこともない。同じアメリカ国内でも、これほどまで地域によって不動産市場の様相が異なるのかと愕然とした。
結局、買ったときよりも少し低い値で売るのに半年以上かかってしまった。それでもローンはちゃんと返せたし、空き家の間に事故もなく、何よりも売れただけでもよかったと思いなさいとクリーブランドの知人連中に言われた。
これで不動産というものはほんとうにローカルなものだとさんざん思い知らされた。東海岸、西海岸の不動産が売れているからといっても、中西部の斜陽地域(いわゆるrust belt)には全く当てはまらない。その土地のローカルな経済情勢というものがいかに重要か。
あと、売れない家のローンを払いながら新しい土地の家の家賃も払うという生活を賄うには、それなりの収入があるか、あるいは貯蓄を食いつぶすかしかない。わたしの場合は後者だったけれど、逆にこれで、どの程度の貯蓄があればどのくらい持ちこたえることができるかという目安がついたようにも思う。それに何ヶ月も持ちこたえられるだけの貯蓄があれば、法外に安い値段で家を手放すというシナリオを避けることもできるし。この経験は三軒目、シカゴの家の売買に大きく影響を及ぼしたのである。
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