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上申書

F Fries

>FI Planningで読んでいただいてる方へのお断り。日本での遺産相続というのも滞米中に経験する可能性のあるfinancial eventだと思うので、FIにリンクしています。

数年前に母の叔母(母方の祖母の妹)が九十近くで他界した。亡くなる日の朝七時半に、朝刊を取りに外に出たのを近所の人が見たらしいが、八時だか九時だかに老人デイケアの迎えが来たときには、もうこと切れていたらしい。高血圧だの何だの、年齢相応の持病は抱えていたものの、介護を要することもなく自宅で一人暮らし、思い込んだらテコでも動かない性格で、生きている間はよく親戚とけんかをしていたが、この逝き様ばかりは皆の感嘆を集めた。

彼女には子供がなくうちの母が相続人なのだが、相続税対策のため、彼女の家の名義にはわたしの名前も入っている(らしい)。これまでもこの家を売るために、いちおう周旋屋には出していたらしいが、(今でも一般的に周旋屋という言葉を使うのだろうか?うちの親はそう呼んでるけど。)昨今、マンションが建てられるくらいの広大な屋敷ならともかく、小さな古家付き宅地というのは大阪ではあまり良い値で売れないらしい。今般、所々の事情により、何がなんでもこれを売ってしまおうということになり、古家は撤去して更地として売ることになった。(まだ買い手は見つかっていない。)

さてこれに伴ってこの物件の登記を見直していたところ、わたしの部分に不備があることが判明したらしい。すなわち、わたしが日本を出たときに住民票を抜いたのだが、それには米国カリフォルニア州に転出となっており、現在の在留証明に記載された住所と一致しないのが問題なのだという。日本というのは不思議なところで、国内に住んでいれば住民票、印鑑証明など何重にも住民を管理するシステムがあるが、いったん海外に出てしまえば在留届のみ。海外駐在の手引きのようなものには「在留届を出しましょう」とやかましく書いてあるが、実際アメリカなどに住んでいると、在留届を出してなくても日常生活の上で困ることはあまり思いつかない。(それよりも大事なのはビザと社会保障番号だ!)日本国外で転居した場合、在留届、住所変更届けを追跡できるシステムがあるのかどうかもよくわからない。日本というのはそういう意味で、まだまだ国民が海外に住むことを念頭に置いていない社会なのだろう。

さて、経歴の一部が「所在不明」となったわたしの処遇は、というと、「過去にカリフォルニアに転出したわたくしと、現住所これこれのわたくしは同一人物に相違ありません。」という趣旨の「上申書」なるものを書いて、領事館で署名証明をしてもらえばよいのだそうである。わたしが文句を言う筋合いでもないが、果たしてこの程度の情報で個人を特定して大丈夫なんだろうか?これまで、ビクトリア期や米開拓時代の小説のように、他人になりすまして遺産を横取り、なんていう事件はなかったんだろうか?アメリカは戸籍も住民票もないけれど、お金に関する部分は社会保障番号で管理してるから、実は日本以上に個人管理が徹底してるのかもしれない。(それにしても、この「上申書」っていう言葉、何とかならないのかな?なんだかお白州に平伏してお代官様にお目通りいただいてるって感じがする。)

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