昨日、学部長の秘書さんがオフィスにやってきて、「ちょっとお願いがあるんだけど」というので何事かと思ったら、実はドナー(寄付をした人)とその家族が来るので、時間があったらラボを案内してほしいとのこと。
うちの大学は州立大学だが、州の予算からの拠出金は予算のごく一部に過ぎず、(二年前のデータによると全体の4分の1)、残りはグラント、病院収入、それから寄付などで賄われる。
ポスドクの時は直接経験することはなかったのだが、いったんfacultyになると、どこの大学でも何らかの形でドナーとの交流を経験することになる。いちばんよくあるのは「ラボ見学と研究内容の簡単な紹介」だが、ドナーと少人数で食事に行ったこともあるし、大人数のパーティー形式(日本で言えば結婚式の披露宴みたいな感じ)も定期的にある。
オマハは地方都市だが、相当数の「バークシャー長者」(バフェットのバークシャー・ハサウェイに早期から投資してた人)が今でも地元に住んでおり、町の規模の割にはドナーベースは大きいらしい。
さて、昨日のVIPはどんな人だったかというと、なんと10歳の女の子だった。なんでも大分以前におじいさんが癌でうちの大学病院にかかったそうだが、治療がうまくいって今も元気で一緒に魚釣りに行ってるとのこと。大好きなおじいさんを助けてくれた大学病院にお礼をしたいと思って、60ドルちょっと寄付したのだという。
彼女がどのようにして60ドルもの大金を集めたのか聞きそびれたが、アメリカで多いのは家の手伝いをして小遣いを貯めるとか、レモネードを売るとかいうパターン。見た目は普通の家庭の普通の小学生だったから、おそらく彼女の寄付金集めの手段もそのようなものだったにちがいない。
研究内容を紹介すると行っても、相手が大人ならともかく、10歳の小学生では「細胞」とか「タンパク質」とか言っても面白くないかもしれない。何がいいかと考えた末に、適当に見た目がきれいそうな組織標本を取り出して、それを顕微鏡で見せることにした。
かくしてYoung Fundraiserは高額(?)寄付のお礼に、学部長のところでクッキーを食べ、うちのラボで顕微鏡を覗くという特別待遇を受けて帰って行ったのだった。
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