今日の New York Times に The Great Deflation – Japan Goes From Dynamic to Disheartened という記事が。
この二十年の日本経済の凋落を扱った記事で、これといった新しい発見はない。不動産価格の低迷、これみよがしの消費の衰退、とくに若い世代が外に野心を向けなくなったことなど、これまで何度も言い古されたことをを論じているが、その中であれっ?と思ったのが、「生活レベルの低下」という指摘。たしかにこの記事の「主人公」の一人である中小企業のオーナーは、海外旅行を諦め、ベンツを手放し、17年前に買ったマンションを、買値の3分の1の値段で手放さざるを得なくなった。しかし、この記事には出てこないが、この「主人公」氏はおそらく最新型の携帯電話を所有し、ベンツから乗り換えた国産車も頻繁に新車に乗り換え、家のトイレはウォッシュレット、洗濯機は乾燥機能つきの front loader 全自動なんじゃないだろうか?そういう点は伏せておいて、ベンツを手放したことだけ書くのはちょっと酷い。それにマンションが買った時点より値下がりするのは、日本では昔から当たり前のことなんじゃないの?中古マンションが値上がりしてたのは、バブルの一時期の異常現象なんじゃないの?沈滞する消費動向の象徴として大阪の千林商店街がふさわしいのかどうかもわたしには疑問である。(ちなみにわたしは大阪出身。)
ただ、日本に漂う「活気のなさ」という指摘には頷ける。(これも言い古された問題点だが。)アメリカから日本帰ったときにいつも思うのだけど、とくに時刻表も調べずに東京駅に行ったら、10分おきに大阪方面行きの新幹線が出てる、それが定刻に発車するなんていうのは、これは世界標準でみたら信じられないほどすごいことなんだよ。こういうすごい国に住んでいながら、どうして皆、もっと自信を持てないのか、不思議でたまらない。それともこれは、高度成長期に育ち、大学時代はイケイケバブルだったお気楽世代の偏見か?
NYT とかが日本のデフレに注目するのは、日本が心配というよりは、今の世界的不況が「日本化」して、アメリカやヨーロッパも「失われた10年」「失われた20年」になるのではないかという懸念が原因である。わたしは経済のことは全く素人でしかないが、日本経済不振の背景には、純粋のお金の問題だけでなく、国民のメンタリティが影響を落としている部分が相当にあるのではないかと思う。日本では「失敗」は許されないから。それに引き換え、アメリカは今でもむき出しの野心とか欲望というものが許容される世界だし、失敗してもやり直しは効くし、イケイケメンタリティな外国人がどんどん入ってくるし、日本ほど鬱屈することはないんじゃないの、とお気楽世代は考えてしまうのだった。(もちろんこれには自己中心的な希望的観測も入っている。だって、わたしの老後資金は全部アメリカ国内にあるのだから、アメリカ経済に転けられると困るのだ!)
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