さて、「その1」の最後に書いた、長期介護保険の掛け金値上げの問題である。
この記事によると、大手の保険会社が、長期介護保険の新規加入の受付を停止したり、保険料の大幅値上げをしたりしているらしい。別の調査によると、過去10年間に、業界トップテンに入るような大手保険会社11社が、長期介護保険市場から撤退したとのことである。
以下はわたしの素人判断だが、これらのデータが共通して意味することは、保険会社にとって、現在の長期介護保険は儲からないということだろう。
アメリカの保険会社は利益を追求する私企業であり、慈善事業でないのだから、儲からないことはやらない。
これもわたしの素人理解だが、保険会社というのは、加入者から掛け金を集め、予想される保険の給付額に相当する部分と、会社を経営するのに必要な経費を除いて、残りの部分を投資に回す。だから保険が儲かっていないとすると、掛け金が低すぎるか、給付額が予想以上に多いか、投資のリターンが悪いか、原因はごく限られているはず。
投資のリターン、これはこの不況、低金利状態では良くないことは容易に予想される。給付額は、不景気にもかかわらず医療費は値上がりを続けているから上昇せざるを得ない。以前は介護保険はナーシングホームのみに適用され、ナーシングホームに入った人は、ほとんどが2、3年のうちに亡くなったので予想が比較的容易だったようだが、最近の介護保険は assisted living や自宅での介護にも適用されるので、給付額の予想が複雑になっているらしい。さらに、長期介護保険はたいてい掛け捨て型で、加入したものの途中で解約した場合、それまでの掛け金は保険会社にとって純利益となるのだが、この中途解約者の割合が、保険会社の当初の予想よりもずっと低いらしい。これらの諸条件があいまって、現在のビジネスモデルでは長期介護保険は儲かっていないのだろう。
新規加入を止める保険会社も、現存の顧客に対しては当初の契約通りに保険金を払うと言っているが、人口の高齢化、医療費の高騰が続くにつれて、長期介護保険のビジネスモデルが大きく変わる可能性があると思う。健康保険改革法案中の介護保険の与えるインパクトも考慮しなければならないだろう。
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