The Big Short: Inside the Doomsday Machine
Kindleをいじっているうちに、半分間違いでBuyのボタンを押してしまったのだが、あまりの面白さに一気に読んでしまった。(ちなみにKindleは間違えて買ってしまった場合は、その場で「返品」することができる。)
一年ほど前に出た本だし、日本語訳も出ているそうなので、もうご覧になった方も多いかと思うが、不動産バブルの真っ最中にサブプライムローンを元にした金融商品の問題点を見抜き、早くからその暴落を予想して賭けに勝った人々の物語。ここで興味深いのは、登場人物の多くがウォール街の「部外者」だということだ。90年代から株式のアナリストとしてサブプライム業界をカバーし、後に独立してヘッジファンドを開いたSteve Eismanは別として、片目で人間嫌いの医者Michael Burry、自己資金$110,000で「家内ヘッジファンド」としてスタートし、最終的に$100 million以上に資産を膨らませたCornwall Capitalの三人組、どちらもいわば独学の投資家たちである。
もちろん、Hindsight is 20/20 で、今の時点で2000年代半ばの住宅バブルを批判するのは容易だが、それでもこの本を読んで痛感したのは、投資において、いかにプライマリーデータを自分の目で見て解釈することが大事か、ということ。格付け会社のレーティングなんか当てにしてはならないのである。何しろ、バブルの最盛期に濫造された、所謂「エキゾティックな」金融商品の中には、BBBのサブプライムモーゲージボンドを集めて新しいプールを作り、その上位80%をAAAと格付けする、などというとんでもないものがまかり通っていたのだそうだから。(汚い例えだが、まるで道に落ちている犬の糞を集めて大きな山を作り、「この山の上の方8割は金(ゴールド)で出来ている」と宣言するようなもんだ。)いくらAAAを装ってみても、根底にあるのはBBBのサブプライムモーゲージなのだから、そのうちにそれが「犬の糞」であることが明らかになる。しかしその事実が明らかになった時には、サブプライムボンドの作り手である金融機関も自分たちの幻想を信じ込んで、大量の「犬の糞」を在庫に抱えていた。実際はもっともっと手の混んだ手法が使われたわけだが、端的に言ってこれがtoxic assetの正体であり、金融危機の引き金である。
格付け会社と投資銀行との関係も興味深い。格付け会社は投資銀行に比べると格段に給料が低いので、頭のいいヤツ、野心のあるヤツは最初から入社しない。その上、投資銀行が自分のところの金融商品の格付けを依頼しなくなれば、格付け会社は収入がなくなるので、投資銀行の気に入らないような格付けはしない。このような構造的欠陥がある限り、公平な格付けは不可能だろう。
この本の登場人物たちが利用したプライマリーデータは、基本的に誰でも手に入れることのできるものばかりである。金融機関のセールスの口車や、市場のセンチメントに流されず、コモンセンスを持ってデータを分析する– あれっ、これってサイエンスと一緒じゃない?
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