高騰する医療費で破産した、とか破産寸前とかいう話は珍しくないけれど、これは少額の未払いの医療費がいつの間にかクレジットビューローに報告されていて、気づいた時には既にクレジットスコアに傷がついていた、というお話。
ホワイトさんの息子が9歳のとき、自転車遊びの最中に木の枝にぶつかって怪我をした。ただちに救急車が来て病院に連れていかれ、事無きを得たのだが、保険会社との間で救急車の費用200ドルの支払いを巡って問題が。保険の契約によれば救急車の費用はカバーされるはずなのだが、保険会社は払わないという。すったもんだの挙句、こんなことなら自分で払った方がマシだとホワイトさんは諦めたのだが、既に時遅し、この200ドルはホワイトさんの知らない間にクレジットビューローに(未払いとして)通報されていたのである。ホワイトさんがその事実に気づいたのは、6年後、家のモーゲージの借り換えを試みたときのことだった。この未払いのせいで、クレジットスコアが約100ポイントほど下がり、よい利率で借り換えるためには数千ドルも余分に手数料を払うはめになった(おそらくポイントを課されたのだろう)という。
この人は、なぜ6年もの間、一度も自分のクレジットスコアをチェックしなかったのかというツッコミはさておいて、わたしが医者に行くのが嫌いな理由の一つに、間違い請求の多さがある。アメリカに来て20年の間に、両手の指で数えられるほどしか医者には行ってないのだけど(歯科を除く)、ほぼ50%の確率で間違い請求を受けている。(もう一つの医者嫌いの理由は、自分がもともと医者なので、医者にできることの限界をイヤというほど知っているから。)
あるときは「カバレッジを拒否されました」というお知らせのレターを見てみたら、請求する保険会社・ID番号が間違っていた。受診したときに保険の情報を見せろと言われなかったので、おかしいなと思っていたら、おそらく請求の段になって必要な情報が欠けていることに気づいた事務員が、適当にウソの番号をでっち上げたのではないかと踏んでいる。
あるときは受診時にco-payを払ったのに、後になって家に請求書を送って来たり。たまたまco-payはチェックで払っていたので、すぐにチェックの写しをコピーして、「既に払いましたよ」と返事したのだが、これをキャッシュで払ってレシートを失くしていたら、証明する手立てがないところだった。(わたしは20ドル、30ドルくらいまでの支払いはよくキャッシュでするので。)
また別のときには、保険でカバーされているはずのチャージに対していつまでもしつこく請求書を送ってくるので、面倒になって支払ったら、4年後、「院内の監査で間違い請求が見つかりました。過剰請求分をお返しします」というレターが来て驚いたこともある。その間に州を越える引越しを2回、同じ州の中での引越しを1回していたので、どうやって住所を追跡したのか謎。
元気なときでも間違い請求と対決するのは面倒なのに、本当に病気になったら、こんなもん、相手にでけへんわ、というのが正直なところ。保険会社の種類が多く、事務手続きに医療費全体の約3割が無駄に使われているというが、間違い請求に対応させられる患者側の無駄な時間と労力を含めれば、失われた生産性はもっと高いのではないかと思う。最近は医療費の請求書を調べて、過剰請求を見つけてくれる商売まであるらしい。
さて、クレジットスコアに話を戻すと、クレジットカードのチャージの間違いを発見した場合は、何日以内に申し出ないといけない、カード会社は何日以内に調査しないといけない、その間、消費者のクレジットレポートは保護される、と法律で決まっているが、医療費にはそういう法律がないのも問題の一つなのだそうである。現在のところ、医療機関がいつ未払いの医療費を回収業者に回すか、回収業者がいつクレジットビューローに連絡するかは全く規制がない。現行では、期限より遅れて支払ったものは、医療費であろうがモーゲージであろうが、同様に「支払い遅れ」として記録に残る。医療費に限って、支払われたら即座に「支払い遅れ」の記録を削除しようという法律も検討されているらしいが、それだけでは請求間違い・保険の支払問題による支払い遅れなのか、本当のクレジットリスクなのか区別できないという問題もある。
アメリカの医療の問題は尽きないね。
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