メインコンテンツに移動

ESPPデビュー記録: 追記

jinmei

ESPPについての前回のfinaceエントリで、以下のように書いた:

即座に売却する場合の唯一の欠点は、purchase dateの時点で株価が上がっていた場合、offering date時の株価との差額にもその年のうちにordinary incomeで課税されてしまうことくらいだろうか

この点をもう少し考えているうちに、もっといい(かもしれない)運用方法を思いついた。(とくにpurchase date時に株価が上昇していた場合)即座に売る代わりに、holding period requirementを満たす期間の後に満期を迎え、購入時点での時価に近い価格を行使価格とするプットオプションを購入するというものである。これで値下がりのリスクはヘッジした上で、15%割引+purchase date時での上昇分への課税を遅らせてかつlong term capital gainとしての優遇税率を受けられる。購入時の値上がり幅とオプションの価格によっては、これが手間を上回るだけの利益になる可能性もある。

結局、検討の結果このアイデアはボツになった。まず、そもそも勤め先の会社の株式に対するオプション(というかいわゆるデリバティブ系商品全般)の取引が禁じられていた。また、仮にそれが許されていたとしても、ちょっと調べたところではオプション取引のコストに見合うだけの利益は得られそうになかった。でもせっかく調べた結果をそのまま捨て去るのももったいないので、ここに記録として残しておくことにする。

まず、この程度のことは誰かが思いついてやっているのではないかと思って検索してみたところ、Bogleheadsの掲示板でずばり同じネタが取り上げられていた。この人の場合、プットを買うと同時に近い値段のコール・オプションを売って持ち出し額をおさえる方法を提案している。確かに、リスクを可能な限りおさえて優遇税率の恩恵を受けることに集中するという主旨からするとその方が理にかなっている。

この方法が筆者の勤め先の場合に適用できるかどうかを最近の時価を使って具体的に計算してみた。なお、ここでは連邦税率28%、long term capital gainの税率15%、カリフォルニア所得税率9.3%とする。現時点のoffering dateは2014年6月20日で、終値は$13.02。仮にこのエントリを書いている日(2014年11月10日)がpurchase dateだとすると、その時価(終値)は$16.68。15%割引の結果、実際の購入価格は$13.02 * 0.85 = $11.067。もし年間上限である$25000の半額を積み立てていたとすると、購入株数は1129。

ここで、purchase dateの時価に近い$17.50を行使価格とするオプションを上記の通り売買し、最終的にオプションの満期で売却したとすると、税金も考慮した利益は以下のようになる:

  • Grossの売却益: (17.50-11.067)*1129=$7262.85
  • うちOrdinary income: (13.02-11.067)*1129=$2204.93
  • Long term capital gain: 7262.85-2204.93=$5057.92
  • 税金: 2204.93*0.373 + 5057.92*0.243 = $2051.51
  • 税引き後利益: 7262.85-2051.51 = $5211.34

次に、これとの比較として、purchase date後、その時点の価格$16.68で即座に売却した場合を考える。税引き後の利益とオプション購入費用相当額の現金が先に手に入ると考えられるので、これをholding period requirementを満たすまでの期間安全な方法で運用したと仮定する(厳密には税金の支払いが実際に発生するまで運用できるが、簡略化のためその効果は無視する)。ここではリスク0かつ比較的高利回りということで、某ネット銀行のhigh yield savings年利0.95%(税引き後0.60%)で1年半運用したと考える。すると、1年半後の税引き後利益は以下のようになる。

  • Grossの売却益: (16.68-11.067)*1129=$6337.07
  • 税引き後利益: 6337.07*(1-0.373)=$3973.34
  • 売却益の1年半後の利益(税引き後): 3973.34*(1+0.006+0.003)=$4009.10
  • オプション費用の1年半後の利益(税引き後): X*1129*(1+0.006+0.003)

(ここで、Xはコールの売値とプットの買値の1株あたりの差額である。)したがって、

  5211.34 >= 4009.10 + X*1129*1.009

すなわち

  1.06 >= X

であればオプション取引する方が得になる。ここで実際のオプション取引価格を調べてみると、満期がholding period requirementを満たすものは行使価格の選択肢が少なすぎる($17.50のものはゼロ)ので、便宜上2016年1月15日(offering date後約1年半)のもので調べると、コール・オプションはbid/ask=3.30/3.80、プット・オプションはbid/ask=3.10/5.10。bidで売り、askで買ったとするとX=1.80、それぞれ中間の値で売り買いしたとすればX=0.55。後者の場合は約$575の得になる。元手が$12500なので、約4.6%の得ということになる。しかし、実際に買う必要のあるオプションはもっと満期が先になるので、取引できたとしてもおそらくこれよりは不利な条件になるだろうから、手間も考えると結局魅力的なほどの利益にはならないように思われる。

さらに、上記Bogleheads掲示板のコメントにもあったが、制度上こうしたオプション取引が禁じられている場合も多そうである。もしこうした制限がなく、株価の変動が少なくてオプション価格も安定しているような会社のプランであれば、もしかしたらこの戦略が有効な場合もあるかもしれない。

このブログ記事の配信元:

コメントを追加

認証
半角の数字で画像に表示された番号を入力してください。