前編からの続き。RecharacterizationデビューによってRoth IRAへのconvert額への「二重課税もどき」は避けられたが、backdoor Rothの機会が事実上閉ざされてしまうという問題は残る。よくよく考えてみるとこのこともかなりもったいないという結論に至り、これを解決するために一般的とされている対策を採ることにした。それがIRAから401(k)へのrolloverである。
一般的に、IRAからのrolloverはtax freeということになっていて、しかもtraditional IRAから401(k)へのrolloverは制度上は認められている(IRS Pub 590参照)。ただし、個別の401(k)プランによっては認められないこともあるらしい。なお、この場合、rolloverできるのは”taxable”部分(引き出したとしたら課税される部分)のみ。
Form 8606の項目をこの観点から見てみると、rolloverした後は前編で書いた「(年末の)IRA残高」(line 6)からrollover分が除かれることになる。また、IRAからのdistribution額を記載するline 7にはrollover分は含まれないので、結局、Rothへのconvert分に対して拠出分全体を非課税とすることが(再び)できるようになる。
また、ちょうどこの問題を解決しようと奮闘している最中に、勤め先の401(k)管理会社がVanguardに変わることになった。筆者はtraditional/Roth IRAの口座もVanguardに持っているので、管理会社をまたがるrolloverと比べると手続きの手間がかなり簡素化できると期待できる。ちなみに、一般的なrolloverの場合は、該当金額を現金化した上で、rollover元から先に小切手を郵送してもらうという手順になる模様で、時間もかかるし、郵便事故の不安もあるし、現金化して投資し直すまでの値動きで無視できないロスが出るようなリスクもあり得る。
まずVanguardに電話して確認したところ、taxableとnontaxableの資産が混在しているtraditional IRAの口座から、taxable部分を401(k)にrolloverするのは可能であり、401(k)プランの側でもIRAからのrolloverは受け入れているとのことであった。また、rollover元と先それぞれに対して書類を書く必要があるのだが、それをまとめて郵送すれば後はVanguard内部で処理してくれるということであった。ただし、rolloverする資産が実際にtaxableであることには口座の名義人が責任を持つ必要があり、Vanguard側ではとくにチェックはしてくれない。
Traditional IRA側にはIRA Distribution Formというformを提出する。これの”Reason”には”Traditional rollover to an employer plan”を選び、”Amount”にはrolloverするfundと金額(または割合)を指定する。”How you want to distribute the proceeds”はOption Dの”Make a check payable to the employer plan”を選び、住所はVanguard自身のもの、プラン名やアカウント番号は401(k)プランに応じて適切に指定する(なお、プラン名はformに指定されている30字には収まらなかったのだが、超過していても文句は言われなかった)。Income tax withholdingの項は”Don’t withhold”を選び、あとはサインをして提出。
401(k)側のフォームはプランごとに違うと思われるが、記入にあたって悩むような個所はとくになかった。rollover額の概算と、rolloverした額をどのfundに投資するかを指定して署名すればよい。
この2つのフォームをまとめて郵送し、到着後数日で処理された。Traditional IRAの資産が売却されたのが1月26日、401(k)側で購入されたのが1月29日だったので、ほぼ時間のロスなしで済んだ。これが違う金融機関へのrolloverだったら数週間かかった可能性もあると思うので、一社で完結していたのは幸運だったと言えよう。
というわけで、かなりの手間だったがようやくすっきりした状態に戻ることができた。転職の際にもうちょっと下調べをちゃんとしていればこんな手間をかけずに済んだのだが、おかげで他では使いようもないノウハウをまた一つ習得させられてしまった…。いまの段階ではVanguardの401(k)プランのfundもいまいちなものが結構混ざっているものの、今後改善されるという話なので、それが実現すれば今度転職することになっても401(k)をどうするかには悩まずに済みそうなのが救いである。
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