以前このタイトルで書いたblog記事について、転載先のFI Planning掲示板で質問投稿があった。「ちなみに」として付記したアメリカ側での申告における為替レート計算方法の根拠についてである。
この部分は当該記事の本題でなかったこともあり、書いたときも出典まで調べずにさらっと流してしまったのだが、改めて質問されてみると、自分自身根拠が曖昧だったということに気がついた。以前似たような状況についてCPAに確認したことがあり、それをそのまま信じただけでIRSの資料まで確認していなかったようだ。ということで改めてちゃんと調べてみた(いつものことだが、調べた内容やその解釈が間違っている可能性は常にあるので、鵜呑みにされないようにお願いしたい)。
この根拠について、たぶん直接のreferenceとなるのはForm 1099-Bのbroker用instructionではないかと思われる。これの”Reporting”の項に、購入代金や売却収入が外国通貨建ての場合の説明がある:
When reporting the purchase or sale of a security traded on an established securities market, you must determine the U.S. dollar amounts to be reported…as of the settlement date, at the spot rate or by following a reasonable spot rate convention.
とのことなので、購入および売却時それぞれのsettlement date(受渡日)のスポットレートでUSドルに換算することになる。このinstructionから参照されているCFR 1.6045-1(d)(8)にはもっと具体的な例が挙げられており(この例はwash saleの話が混ざっているのがやや紛らわしいのだが)、そこからもこの理解でよさそうということがわかる。
ここでのスポットレートの具体的な決め方は明記されていないが、銀行やFX屋などが公開しているレートを使うのではいいのではないかと思われる。実際、もう少し一般的な文脈での為替レートについて説明したIRS資料では、公開されているどんなレートでもそれを一貫して使うならばよいという記述がある。ちなみに、筆者自身は、この資料から参照されている別な資料の末尾にリストされているOanda.comを使っている。以前のサイトは(自作)スクリプト経由でまとめて複数日付のレートを取得できて便利だったからなのだが(もしかするとそういう使い方はサイトポリシーに反していたのかもしれないが…)、少し前に全面リニューアルされてそういう使い方ができなくなってしまった(少なくとも筆者の以前のスクリプトは動かなくなった)。
上記instructionとCFRの記述でもう一つ重要なのは、為替換算の日付がtrade date(約定日)ではなくsettlement dateだということである。一方、譲渡益がshort-termかlong-termかなどを決めるためのholding periodの計算にはtrade dateを元にした日付を使う(IRS Pub 17参照)ので、たとえばForm 8949のDate acquiredやDate soldは約定日を書くことになるが、Proceedsやcost basisの欄に書くドル建ての金額の計算にはこれらの日付とは(一般には)違う受渡日のレートを使うことになる。余談ながら、日本の場合は常に(といってもレート計算の必要はないのだが)も受渡日を使うのが原則で、アメリカとは違っている(もっとも、アメリカと違ってholding periodが問題になることも少ないだろうが)。
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