1月末の「State of the Union」演説に続き、オバマ政権は2月1日に2011年予算案を発表した。予算案の発表時には、財務省による歳入案の一般説明書(一般に「Green Book」と呼ばれる)も発表され、今後1年の税法改正の行方等を読み取ることができる。
言うまでもなく、予算案にしてもGreen Bookにしてもこれらはオバマ政権の期待する案であり、まだ法律ではない。マサチューセッツ州の上院補欠選で敗れた結果、民主党の上院での優位性が揺らぐ中、今後の法審理の方向性は必ずしも明確ではない。
*「Check-the-Box」規定の見直しが消えた?
予算案を見て、まず「アレ」っと思うのが、2009年に発表された2010年度国際税務の改正案の目玉商品で、世間をあれだけ騒がせ、気の早い米国企業は既に対応策を実行に移すかという勢いであった「Check-the-Box」規定の見直し案が今回の改正から消えている点だ。2009年にオバマ政権により提案された2010年国際税務改正に関してはかなり詳しく「時代に逆行・アメリカの国際課税ルール」シリーズで取り上げているのでまだご覧になってない場合にはぜひそちらも参照して欲しい。
Check-the-Box規定以外の国際財務改正案はそのまま生き延びているようだが、若干後退しているものもあり、オバマ政権の議会に対する指導力の減速がそのまま反映されているようで興味深い。
*海外子会社に所得が留保される場合の米国側での損金制限
米国多国籍企業はできるだけ多くの所得を低税率国に認識させ、それらの所得は米国に還流させることなく、現地または地域持株会社等を通じて再投資に向けるという基本的なタックス・プラニングを皆、忠実に実行している(日本企業もそろそろ・・・?)。
米国に資金を還流させて課税したい米国政府は、外国に所得を留保している場合には、米国親会社サイドで発生している費用のうち、子会社の投資・管理に配賦されるべきと取り扱われる金額の外国留保相当分に関して損金算入させない(将来米国に還流されるまで損金算入を繰り延べる)という案を2009年に打ち出していた。
外国の子会社の所得の全てを配当で米国に戻す企業はなかなかないであろうことから、米国親会社側では費用の一部が損金算入されずに税コストが高くなることになる。このいわゆる「Anti-Deferral」規定の対象は、昨年の段階では子会社の投資・管理に係るあらゆる費用とされていた。それが今回の2011年予算案では「支払利息」だけに限定されることとなった。以前のポスティングで触れたが、主たる懸念はもともとから支払利息であったことから、金額的なインパクトは低いかもしれないが、規定としての後退感が残る。
*無形資産の海外流出
価値のある知的財産のような無形資産は低税率国に持たせる、というのは国際タックス・プラニングの「いろは」であり、米国多国籍企業は徹底的にこれを利用している。一旦米国企業が所有した無形資産を海外の子会社に移転する場合には、Sec.367等の規定で既に網が掛けられているが、今回の予算案にはこの点に対する縛りをより強化する規定が盛り込まれている。
まず、Sec.367規定の対象となる無形資産に「Goodwill」、「Going Concern」、「Workforce」といった無形資産が含まれていることを確認するというようなコメントがGreen Bookにある。確認というからには現状の法律でもそうかのように読めるがこの点はIRS以外の者は必ずしもそう信じているとは限らないであろう。
また、外国子会社に無形資産を移転し、その結果、低税率国の外国子会社で「過大な利益」が認識されているという認定を受けると、その利益がSubpart F所得となり、留保金課税の対象となるというような案が盛り込まれている。過大な利益を認識しているかどうかの判別法が現時点では今ひとつよく分からないが、Sec.367で課税し、更にそれでも取りっぱぐれていると思われる部分をタックスヘイブン課税しようということだ。無形資産の低税率国への移転に神経を尖らせていることだけはよく分かる。
*法審理の行方は?
支持率低下、マサチューセッツ補欠選での思わぬ敗戦、と求心力が落ちているオバナ政権であるが、議会としても米国外に所得や仕事を持っていかれているのは好ましくはないことから、今後どのような妥協案が成立するかとても見ものだ。
言うまでもなく、予算案にしてもGreen Bookにしてもこれらはオバマ政権の期待する案であり、まだ法律ではない。マサチューセッツ州の上院補欠選で敗れた結果、民主党の上院での優位性が揺らぐ中、今後の法審理の方向性は必ずしも明確ではない。
*「Check-the-Box」規定の見直しが消えた?
予算案を見て、まず「アレ」っと思うのが、2009年に発表された2010年度国際税務の改正案の目玉商品で、世間をあれだけ騒がせ、気の早い米国企業は既に対応策を実行に移すかという勢いであった「Check-the-Box」規定の見直し案が今回の改正から消えている点だ。2009年にオバマ政権により提案された2010年国際税務改正に関してはかなり詳しく「時代に逆行・アメリカの国際課税ルール」シリーズで取り上げているのでまだご覧になってない場合にはぜひそちらも参照して欲しい。
Check-the-Box規定以外の国際財務改正案はそのまま生き延びているようだが、若干後退しているものもあり、オバマ政権の議会に対する指導力の減速がそのまま反映されているようで興味深い。
*海外子会社に所得が留保される場合の米国側での損金制限
米国多国籍企業はできるだけ多くの所得を低税率国に認識させ、それらの所得は米国に還流させることなく、現地または地域持株会社等を通じて再投資に向けるという基本的なタックス・プラニングを皆、忠実に実行している(日本企業もそろそろ・・・?)。
米国に資金を還流させて課税したい米国政府は、外国に所得を留保している場合には、米国親会社サイドで発生している費用のうち、子会社の投資・管理に配賦されるべきと取り扱われる金額の外国留保相当分に関して損金算入させない(将来米国に還流されるまで損金算入を繰り延べる)という案を2009年に打ち出していた。
外国の子会社の所得の全てを配当で米国に戻す企業はなかなかないであろうことから、米国親会社側では費用の一部が損金算入されずに税コストが高くなることになる。このいわゆる「Anti-Deferral」規定の対象は、昨年の段階では子会社の投資・管理に係るあらゆる費用とされていた。それが今回の2011年予算案では「支払利息」だけに限定されることとなった。以前のポスティングで触れたが、主たる懸念はもともとから支払利息であったことから、金額的なインパクトは低いかもしれないが、規定としての後退感が残る。
*無形資産の海外流出
価値のある知的財産のような無形資産は低税率国に持たせる、というのは国際タックス・プラニングの「いろは」であり、米国多国籍企業は徹底的にこれを利用している。一旦米国企業が所有した無形資産を海外の子会社に移転する場合には、Sec.367等の規定で既に網が掛けられているが、今回の予算案にはこの点に対する縛りをより強化する規定が盛り込まれている。
まず、Sec.367規定の対象となる無形資産に「Goodwill」、「Going Concern」、「Workforce」といった無形資産が含まれていることを確認するというようなコメントがGreen Bookにある。確認というからには現状の法律でもそうかのように読めるがこの点はIRS以外の者は必ずしもそう信じているとは限らないであろう。
また、外国子会社に無形資産を移転し、その結果、低税率国の外国子会社で「過大な利益」が認識されているという認定を受けると、その利益がSubpart F所得となり、留保金課税の対象となるというような案が盛り込まれている。過大な利益を認識しているかどうかの判別法が現時点では今ひとつよく分からないが、Sec.367で課税し、更にそれでも取りっぱぐれていると思われる部分をタックスヘイブン課税しようということだ。無形資産の低税率国への移転に神経を尖らせていることだけはよく分かる。
*法審理の行方は?
支持率低下、マサチューセッツ補欠選での思わぬ敗戦、と求心力が落ちているオバナ政権であるが、議会としても米国外に所得や仕事を持っていかれているのは好ましくはないことから、今後どのような妥協案が成立するかとても見ものだ。
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