わずか一週間程前に草案された「American Jobs and Closing Tax Loopholes Act」(Closing Tax Loopholes Act)の国際課税改正案の中身はかなり強力だ。どうせSubpart F規定(米国版タックスヘイブン規定)のActive Financing業に対する例外とかLook-Throughの延長が中心の単なる「Extender」だろう、と思っていたので、その内容の「充実度」にはビックリだ。
こんな法律ができたら米国多国籍企業には相当な打撃だろう。しかもこの法案、メモリアルウィークエンド明けから1~2週間(6月前半)には可決してしまうのではないか、と言われている。オバマ政権が2010年、2011年の両予算案で提案している国際課税改正案が反映されており、多くの規定は米国企業が海外に子会社を持っているという局面に適用されるものだ。しかし局面次第では日本企業にも影響があるものもある。
*Check-the-Boxの使用制限は今のところ「棚上げ」
それにしても不幸中の幸い(?)なのは2010年の予算案でオバマ政権が提唱していた「Check-the-Box」規定の一部使用制限が法案に盛り込まれていない点だろう。この使用制限は不思議なことに2011年のオバマ予算案にも入っていなかった。
米国のように高税率でかつ全世界課税システムを頑なに守っている国の多国籍企業にとって、海外子会社の得る所得に対する本国米国での課税を繰り延べる(Deferral)というのは、外国税額控除の最大限化と並んで国際タックスプラニングの基本中の基本だろう。本国課税の繰り延べの一番の敵はCFCルール(日本ではタックスヘイブン税制、米国ではSubpart F規定)だ。
IRSにとって過度のDeferralに対する最強の武器であるはずのSubpart F規定を実質「骨抜き」にしてしまったのがCheck-the-Box規定だ。そのCheck-the-Box規定の使用制限が表舞台から消えたというのは米国多国籍企業にとってはGood Newsだろう。ただ、政府関係者のコメントを総合すると2011年の予算案に入っていないからと言って安心はできないようだ。予算案になくても法案として浮上してくることはあり得るし、現に政権としてもこの分野に関して完全にあきらめている訳ではないようだ。それにしてもCheck-the-Boxを利用したHybrid Branch系のプラニングに関しては「Notice 98-11」から「Notice 98-35」に至る財務省の迷走経験があり、2010年の予算案も迷走に更に輪をかける結果となるかもしれない。Check-the-Boxのこの手の利用法に関しては以前2009 年5月に「時代に逆行(?)アメリカの国際課税ルール(2)」で詳解しているので参照して欲しい。
今回の法案だが、Closing Tax Loopholes Actという名称もワザとらしい。「抜け穴を塞ぐ法」となるが、その規定の数々は抜け穴を塞ぐどころか米国企業の国際タックス・プラニングの根底を揺さぶるインパクトを持っている。
*網が掛けられる多くの外国税額控除プラニング
上述の通り、米国のように高税率でかつ全世界課税システムを頑なに守っている国の多国籍企業にとって、外国税額控除の「最大限化」は国際タックスプラニングの基本中の基本のひとつだ。そのための「テクニック」は数多く生み出されているが、今回のClosing Tax Loopholes Actの一つの大きな目的は外国税額控除を人工的に最大限化しているプラニングに網を掛けるものだ。
実際に法案ではHigh Tax Poolの利用を中心とする外国税額控除の濫用に対して「複数」の規定で対抗策が講じられている。どれもかなり痛いところを突くものばかりだ。それらの具体的な規定に関して次回のポスティング以降で触れていく。
こんな法律ができたら米国多国籍企業には相当な打撃だろう。しかもこの法案、メモリアルウィークエンド明けから1~2週間(6月前半)には可決してしまうのではないか、と言われている。オバマ政権が2010年、2011年の両予算案で提案している国際課税改正案が反映されており、多くの規定は米国企業が海外に子会社を持っているという局面に適用されるものだ。しかし局面次第では日本企業にも影響があるものもある。
*Check-the-Boxの使用制限は今のところ「棚上げ」
それにしても不幸中の幸い(?)なのは2010年の予算案でオバマ政権が提唱していた「Check-the-Box」規定の一部使用制限が法案に盛り込まれていない点だろう。この使用制限は不思議なことに2011年のオバマ予算案にも入っていなかった。
米国のように高税率でかつ全世界課税システムを頑なに守っている国の多国籍企業にとって、海外子会社の得る所得に対する本国米国での課税を繰り延べる(Deferral)というのは、外国税額控除の最大限化と並んで国際タックスプラニングの基本中の基本だろう。本国課税の繰り延べの一番の敵はCFCルール(日本ではタックスヘイブン税制、米国ではSubpart F規定)だ。
IRSにとって過度のDeferralに対する最強の武器であるはずのSubpart F規定を実質「骨抜き」にしてしまったのがCheck-the-Box規定だ。そのCheck-the-Box規定の使用制限が表舞台から消えたというのは米国多国籍企業にとってはGood Newsだろう。ただ、政府関係者のコメントを総合すると2011年の予算案に入っていないからと言って安心はできないようだ。予算案になくても法案として浮上してくることはあり得るし、現に政権としてもこの分野に関して完全にあきらめている訳ではないようだ。それにしてもCheck-the-Boxを利用したHybrid Branch系のプラニングに関しては「Notice 98-11」から「Notice 98-35」に至る財務省の迷走経験があり、2010年の予算案も迷走に更に輪をかける結果となるかもしれない。Check-the-Boxのこの手の利用法に関しては以前2009 年5月に「時代に逆行(?)アメリカの国際課税ルール(2)」で詳解しているので参照して欲しい。
今回の法案だが、Closing Tax Loopholes Actという名称もワザとらしい。「抜け穴を塞ぐ法」となるが、その規定の数々は抜け穴を塞ぐどころか米国企業の国際タックス・プラニングの根底を揺さぶるインパクトを持っている。
*網が掛けられる多くの外国税額控除プラニング
上述の通り、米国のように高税率でかつ全世界課税システムを頑なに守っている国の多国籍企業にとって、外国税額控除の「最大限化」は国際タックスプラニングの基本中の基本のひとつだ。そのための「テクニック」は数多く生み出されているが、今回のClosing Tax Loopholes Actの一つの大きな目的は外国税額控除を人工的に最大限化しているプラニングに網を掛けるものだ。
実際に法案ではHigh Tax Poolの利用を中心とする外国税額控除の濫用に対して「複数」の規定で対抗策が講じられている。どれもかなり痛いところを突くものばかりだ。それらの具体的な規定に関して次回のポスティング以降で触れていく。
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