米国企業が海外に眠らせている巨額の埋蔵金をどのように米国に非課税で持ち帰るかという「Repatriation」プラニングとかSch. UTPとかについて書いている間にいつの間にか9月15日の法人税申告書の締め切りも過ぎてしまった。そろそろ年の後半にも入ることだしポスティングの内容も新しいタイトルに入ることにする。
米国景気の先行きも相変わらず不透明な中、損失を抱えている子会社を持っている米国企業も多い。日本企業の米国現地法人でも結構見られる局面だ。そのような子会社を処理してしまおうと決定した場合、処理法そのものにはいろいろな方法があるが、税務上できるだけ有利な方法を取るのが当然好ましい。最近、頻繁にお目にかかるのが価値が低くなったまたは価値がなくなった子会社株式の処理に係る税務上の問題だ。
*キャピタルロス
損失を抱える子会社を誰かが買ってくれるというとラッキーな局面のように思えるが税務上は考えなくてはいけないことが多い。
まず、株式の売却損は通常キャピタルロスとなるというダウンサイドだ。米国税務でキャピタルロスというのは極めてネガティブな響きを持つ(一方でキャピタルゲインというのはいい響きだ)。キャピタルロスはキャピタルゲインとのみ相殺が可能なため、キャピタルゲインがない場合には使い道がない。使えないキャピタルロスは繰り戻し、繰り越しが可能だが、実はキャピタルゲインというのはなかなか発生しないものだ。通常の事業からの所得はキャピタルゲインとはならないし、投資資産は値上がりしていないと(当たり前の話し)キャピタルゲインとはならず、他の投資でキャピタルロスが出ているようなご時世にはなかなか含み益を持つキャピタル資産が手元にないのが実態だろう。キャピタルロスが使い難いということは、損失を出したにも係らず、会計上の税効果も認識できないケースが多く、実効税率も上がり踏んだり蹴ったりの状況に陥ることも珍しくない。
*無価値となった80%子会社株式
損失を抱える子会社株式からの損失を通常損失(=Ordinary Lossでキャピタルロスではない)として他の所得と自由に相殺できる局面がある。80%以上を持つ子会社の株式が「Worthless(=無価値)」となった場合だ。その場合には、この子会社が実業に従事していて事業から所得を得ていた限り(=Gross Receipt Testといって投資所得で成り立っていたような状況ではない必要がある)通常損失として損金化するが認められる。
ここでの重要なポイントは株式に少しでも価値があってはいけないという点だ。このことから第三者が株式を有償で買い取ってくれた場合には、いくら価値が低くても無価値という取り扱いをするのは難しい。備忘価格のような感覚で$1で売りましたというような局面では可能性はなくはないが、クリーンに無価値というためには通常は「清算してEquity Holderとしては$1も帰ってこなかった」という状況が一番説得力がある。
*税務上の清算
無価値となった子会社を「会社法上、本当に清算して」Equity Holderである株主の立場では$1の分配も受け取れなかったという局面で通常損失を取ることもできるがタックスプラニング的にはチョッと単純過ぎて面白さに欠ける。税務上、清算と取り扱うことができる取引は他にもあるからだ。
例えば今まで米国税務上、法人扱いしていた外国の子会社であればCheck-the-Boxで支店扱い(Disregarded Entity)または80%オーナー以外に被支配株主が存在するのであればパートナーシップ扱いとすることが「税務上のみなし清算」となり、子会社が債務超過の状況にあれば親会社側で通常損失を計上することができるだろう。
また米国内の子会社であればLLCに「転換」させることで同様にみなし清算の効果を得ることができることもある。これは株式会社を州会社法の規定に基づきLLCに合併させる(いわゆるInter-Species Merger)という手法で可能だ。
*Sec. 338(h)(10)選択
もうひとつ潜在的に面白いみなし清算にSec.338(h)(10)選択の利用がある。Sec.338というと買い手側で法人資産の税務簿価をステップアップさせるというメリットが思いつくが他にもいろんな効用がある。Sec.338を利用して外国で買収する法人のE&Pを圧縮させる手法に関しては以前の国際税務改正案のところでかなり突っ込んで書いてみたが、それも一例だ。
ここでは、無価値の株式を第三者に売却した上、更に通常損失まで計上してしまおうという都合が良すぎる取り扱いをSec. 338の中でもSec.338(h)(10)が可能にしてくれることがある点が関係してくる。この点は次回のポスティングで詳しく触れたい。
米国景気の先行きも相変わらず不透明な中、損失を抱えている子会社を持っている米国企業も多い。日本企業の米国現地法人でも結構見られる局面だ。そのような子会社を処理してしまおうと決定した場合、処理法そのものにはいろいろな方法があるが、税務上できるだけ有利な方法を取るのが当然好ましい。最近、頻繁にお目にかかるのが価値が低くなったまたは価値がなくなった子会社株式の処理に係る税務上の問題だ。
*キャピタルロス
損失を抱える子会社を誰かが買ってくれるというとラッキーな局面のように思えるが税務上は考えなくてはいけないことが多い。
まず、株式の売却損は通常キャピタルロスとなるというダウンサイドだ。米国税務でキャピタルロスというのは極めてネガティブな響きを持つ(一方でキャピタルゲインというのはいい響きだ)。キャピタルロスはキャピタルゲインとのみ相殺が可能なため、キャピタルゲインがない場合には使い道がない。使えないキャピタルロスは繰り戻し、繰り越しが可能だが、実はキャピタルゲインというのはなかなか発生しないものだ。通常の事業からの所得はキャピタルゲインとはならないし、投資資産は値上がりしていないと(当たり前の話し)キャピタルゲインとはならず、他の投資でキャピタルロスが出ているようなご時世にはなかなか含み益を持つキャピタル資産が手元にないのが実態だろう。キャピタルロスが使い難いということは、損失を出したにも係らず、会計上の税効果も認識できないケースが多く、実効税率も上がり踏んだり蹴ったりの状況に陥ることも珍しくない。
*無価値となった80%子会社株式
損失を抱える子会社株式からの損失を通常損失(=Ordinary Lossでキャピタルロスではない)として他の所得と自由に相殺できる局面がある。80%以上を持つ子会社の株式が「Worthless(=無価値)」となった場合だ。その場合には、この子会社が実業に従事していて事業から所得を得ていた限り(=Gross Receipt Testといって投資所得で成り立っていたような状況ではない必要がある)通常損失として損金化するが認められる。
ここでの重要なポイントは株式に少しでも価値があってはいけないという点だ。このことから第三者が株式を有償で買い取ってくれた場合には、いくら価値が低くても無価値という取り扱いをするのは難しい。備忘価格のような感覚で$1で売りましたというような局面では可能性はなくはないが、クリーンに無価値というためには通常は「清算してEquity Holderとしては$1も帰ってこなかった」という状況が一番説得力がある。
*税務上の清算
無価値となった子会社を「会社法上、本当に清算して」Equity Holderである株主の立場では$1の分配も受け取れなかったという局面で通常損失を取ることもできるがタックスプラニング的にはチョッと単純過ぎて面白さに欠ける。税務上、清算と取り扱うことができる取引は他にもあるからだ。
例えば今まで米国税務上、法人扱いしていた外国の子会社であればCheck-the-Boxで支店扱い(Disregarded Entity)または80%オーナー以外に被支配株主が存在するのであればパートナーシップ扱いとすることが「税務上のみなし清算」となり、子会社が債務超過の状況にあれば親会社側で通常損失を計上することができるだろう。
また米国内の子会社であればLLCに「転換」させることで同様にみなし清算の効果を得ることができることもある。これは株式会社を州会社法の規定に基づきLLCに合併させる(いわゆるInter-Species Merger)という手法で可能だ。
*Sec. 338(h)(10)選択
もうひとつ潜在的に面白いみなし清算にSec.338(h)(10)選択の利用がある。Sec.338というと買い手側で法人資産の税務簿価をステップアップさせるというメリットが思いつくが他にもいろんな効用がある。Sec.338を利用して外国で買収する法人のE&Pを圧縮させる手法に関しては以前の国際税務改正案のところでかなり突っ込んで書いてみたが、それも一例だ。
ここでは、無価値の株式を第三者に売却した上、更に通常損失まで計上してしまおうという都合が良すぎる取り扱いをSec. 338の中でもSec.338(h)(10)が可能にしてくれることがある点が関係してくる。この点は次回のポスティングで詳しく触れたい。
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