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スピンオフとホットドッグ(3)

過去2回に亘り、大きな含み益を持つ投資資産の非課税スピンオフ、また財務省が対抗措置として奇しくも「全米ホットドッグデー」に公表した規則案の背景に触れた。この規則案は、Device要件とATB要件の双方に関してATBと投資資産の比率に対する取り締まりを厳しくしている。

Device要件とは、簡単に言うと、本来は課税配当となるべき取引を、適格スピンを利用して非課税で分配してしまう「からくり」として利用されていないか、という点を検証するもの。既存の規則にはDeviceと思われるファクター、そうでないファクターが併記されていて、そのバランスで判断するような仕組みになっている。複数のファクターが並存する場合、どのようにバランスを判断するかは個々のケースの事実関係の問題としている。このDevice有無の判断はBusiness Purpose要件と密接に関連していて、別途規定されるBusiness Purpose要件に基づき、連邦税の低減以外の法人レベルでの事業目的が強ければ、それに連動する形でDeviceでもないという判断に至る。

今回の規則案では、ATB資産とそうでない資産の比率に関する具体的な規定が盛り込まれ、またDeviceとみなすファクターと、逆にそうでないファクターの相対的な位置づけをより明確にしている。規則案によると株主が上場企業の一般株主だというDeviceとならないファクターが存在しても、投資資産の割合が極端に高いようなDeviceファクターが存在する場合には、後者が前者を負かすとしている。

Device目的ではATB規定のように5年という期間的な要件は問わず、ATBとなる事業資産のスピン時の相対的な量にフォーカスし、投資資産との比率が分配する側の法人と分配される側の法人間で大きく異なる場合にはDeviceの疑いが高いファクターとされる。事業資産にはWorking Capitalで必要とされる現金等の流動資産が含まれる。

具体的には、スピンする側とされる側の法人各々において、投資資産等の事業資産以外の資産が占める割合が20%未満の場合にはDeviceファクターにはならない。またスピンする側とされる側の法人間の比較で、投資資産等が各法人内に占める割り合いの差異が10%未満の場合にもDeviceファクターはないとされる。

Device規定と深い関係にあるBusiness Purposeに関して、投資資産を事業資産から切り離すタイプの事業目的は、事業目的があるからと言ってもDeviceではないとするファクターとは基本的に考えられないとしている。

更に財務省規則の最近の傾向とも言える「Per Seテスト」が導入される。Per SeとはコロンバスサークルのTime WarnerビルにありセレブシェフのThomas Kellyが腕を振るう高級フランチレストラン・・、ではなくて、過少資本の規則案にも見られた事実関係の推定にかかわる規定で、個々の事実関係にあり得る背景は一切無視して、一定の事実が存在すれば、それを持ってそれ以上の証明なしに結論を導くという手法だ。「当然違法原則」とか訳されることもあるみたいだけど、チョッと日本語では分かり難い。

このPer Seテストに基づくと、非事業資産がスピンする側、される側各々の法人の3分の2を超え、かつ2つの法人の非事業資産の比率の差異が大きいケースではほぼ自動的にDeviceとなり、結果として適格スピンオフではなくなってしまう。どのようなケースで比率の差異が大きいとなるかは少なくともどちらの法人に占める非事業資産の割合により3つの「バンド(帯域)」に入るかどうかで決定される。まず、66.7%~80%未満のケースでは、一方の法人における非事業資産の割合が他方の割合と比較して30%未満の場合、80%~90%未満では同40%、90%以上の場合には同50%、となる。Per SeテストでDeviceとならない場合にはファクターの比較で個々の事実関係に基づく判断となる。Corporate Tax Lawyerたちには数字嫌いな人も居るけど、算数勉強しないといけない感じのちょっと難しいテスト。

次にATBに関しては、ATBのサイズは問わないという従来からの考え方を撤廃し、スピンする側、される側の双方の法人で5年間従事されているATBが最低5%は必要という新規則案が追加された。今回の強化案が明記された背景には、以前と比べると近年はSeparate Affiliated Group (SAG)とかで、グループ内でのATBとかパススルーのATBとかを数えることができるようになり、以前よりATB規定そのものが自由化されているという背景もあるだろう。グループ内のスピンは5%ルールから除外して欲しいというコメントもあったようだが、財務省は応じず全てのスピンに5%ルールを適用するとしている。

この手のルールはValuationが鍵となり、そのために不確実性を生み出し易いが、時価の算定はスピン直後の状況に基づく。したがって当然だがスピンする側の法人の時価にはスピンされる法人の時価は含まれない。

ということでかなりのGame Changerだけど、あくまでも現時点では規則案の状況で、今後コメントを受け付けた上で最終化に向けて動き出すこととなる。今回の規則案は過少資本規則案のFundingルールとかと異なり、最終化された時点以降に適用となるそうだ。