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トランプ大統領税法改正プラン(6)

Max Hata
前回のポスティングでは4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表のQ&Aの様子に関して書き始めた。会見が始まって13分強経過しているが、MnuchinもCohnも質問が細部に亘り始めたせいか、会見冒頭の低姿勢から一転し、徐々に本領発揮というか、面目躍如というか、本性が出てきたというか、語尾も強くなってくる。投資銀行で部下を叱責するのには慣れているに違いないCohnは人差指を下に指しながら「細かいことは今後詰めると言っているのが分からないのか」に近い感じで迫力十分。さすが6.3フィートの圧迫感。そう言えば全然関係ないけど、リアリティショーのアプレンティスに近いノリで急に「Fired‼」となった元FBI長官のComeyに至っては6.8フィート(207cm)だからワシントンの重鎮は結構ガタイがいい方が多い。トランプだって6フィートは超えてるし。

税率区分について質問した記者が「控除項目は住宅ローン金利と寄付金と言うことだが、州税および地方税の控除もなくなるんでしょうか?」と追加質問する。Cohnは「そうだ」と言って次に質問に移るが、税率区分の記者は「医療費は・・?」のような質問を未だしていた。回答はなかったけど、住宅ローン金利と寄付金のみと言っているのだから医療費の個別控除はなくなるんだろう。ただ、医療費は年収(正確にはAGI)の10%超の自己負担分のみが控除対象だから元々余り使い勝手がよくない。大病して保険が効かないとか、そもそも保険の対象でないLasikとかで大きな支出がある場合には利用していた納税者もいるのかな、位のどちらかと言うと目立たない控除項目。ちなみにWSJによると州税控除を取っている申告書の数は4,300万件、住宅ローン金利を取っているのは3,400万件という規模に対して、医療費控除は700万件だそうだ。

4月26日の会見当日には未だ下院のオバマケア廃案が通ってなかったけど、数日後に下院を通過した医療保険改革案には、実は医療費控除を取りやすくする規定が盛り込まれている。上述の10%超でないと取れないとされていた制限が5.8%超なら取れると緩和されている。トランプ大統領プランと整合性に欠けるが、この点に関しては下院と大統領府で調整中とのこと。

次の質問はオバマケアで導入された3.8%のNet Investment Income Taxの廃案に関して。このNTTIはキャピタルゲインとか配当の投資所得に追加で課せられるもの。「3.8%のNTTI廃止はオバマケア廃案の第一歩となるんでしょうか?それともビジネス目的ですか?」のような何とも言えない質問。どんどん迫力が増してくるCohnが「この税法改正は経済成長と雇用促進が目的だ。なのでビジネス目的に尽きる。3.8%の投資、キャピタルゲインに対する追加の税金は経済成長を促進する資本投資に対する足かせとなっているので撤廃する。全ては経済と雇用のためだ」と力強い。ちなみに4月26日の会見時にはまだオバマケア廃案が下院を通過していなかったが、その後の下院案で他のオバマケア増税と並んでこのNIITも廃止されている(上院は現時点で未通過)。

次はなかなかいい質問。「このプランに十分な歳入源は確保されているんでしょうか?すなわち財政均衡プランですか?また、今日発表されているプラン内容で絶対に譲れない点はありますか?例えば議会が法人税20%の税法改正を通したとして大統領は法律に署名されますか?」というもの。この質問にはMnuchinが登場。Cohn同様に投資銀行幹部の迫力が出てきている。「そうだね。何回でも言いが、議会とは原理原則100%合意している。つまりビジネスに対する税率を下げ、何兆ドルという資金を海外から米国に戻し(テリトリアル課税の部分)、雇用を創出し、個人所得税を簡素化、ミドルクラスに対する減税を行うという原則だ。これらの原理原則は譲れないし議会とも一枚岩の団結を誇っていると言える。」

注目の財源、財政均衡の部分は「さっきから言っている通り、詳細はこれからで、財務省だけでも100人以上のスタッフがスコアリングその他の分析に従事しているが、今回の税法改正プランは経済成長加速、コマゴマとした控除の撤廃、そして脱法的な行為を禁ずることで、十分に収支均衡する」そうだ。

このMnuchinの回答に会場は騒然となり、一気に指名されてもいない記者が複数独自に追加質問を始める。その中で幸運にも指名を受けた記者は「でも立法化の過程でスコアリングした結果、経済成長加速等では歳入が不十分と推計されたらどうするんですか?財政赤字を増額しますが、大統領はそれでも懸念を持たずに法案に署名するんでしょうか?」

Mnuchinは大分いらいらしてきているのを抑えながら「さっきから言っている通り(口癖?)、オバマ政権下で財政赤字は10兆ドルから20兆ドルに膨れ上がっている。これが大統領が何とかしないといけないと感じている諸悪の根源だ。今回のプランでは債務残高の対GDP比が下がり、経済成長が加速し、巨額、おそらく何兆ドル単位で歳入が増えるというものだ」と基本的に前の質問への回答と同様の線で押し通す。

引き続き会場は熱くなっているが、前列に陣取る記者の質問が多かったせいか、Mnuchinは「後ろの方の質問も受け付けましょう」みたいな感じで後列を指す。ただ、後ろに座っているからと言って質問が手ぬるい訳ではない。「Border Adjustment(The BlueprintのDBCFT下で消費地課税を実行するためのメカニズム)を導入しないとどう考えてもそんな低税率(ビジネスに対する15%を指している)は困難に思えますが・・」という至極最もなコメント。Mnuchinの回答はどんな質問にもほぼ同じになっている。「さっきから言っている通り、詳細はこれからで、今日は原理原則を述べているに過ぎない。今後議会と詳細を詰めて最終的には原理原則を大統領が署名できる法案に仕上げる。その過程で、ご質問の点を含む多数の詳細を詰め、経済成長に基づく税率低減を実現させる」とのこと。

その後、メディアでは、トランプ大統領プランにBorder Adjustmentが明記されていないことから、Border Adjustmentは検討されることはないという趣旨の報道もあるが、決してそうではなく、未だ何も決まっていないだけだと思う。今後の成り行き次第で、全く導入されないかもしれないし、部分的または段階的に導入されるかもしれないし不明だ。ただ、Border AdjustmentはDBCFTというしっかりした概念の税法の一部のメカニズムでしかないので、この部分だけにフォーカスして導入するのかどうかを議論しているのは不思議。Border AdjustmentおよびDBCFTが一般に全然理解されていない証しのように感じる。この点に関しては後のポスティングで詳細に触れたい。

と、Q&Aも白熱して形で最終局面に入る。ここからは次回。
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