前回まで3回「国境調整」というかDBCFTが目指す真の姿とそのポリティカルな運命に関して触れた。DBCFTにかかわる議論を見ていると税法改正と言うのはテクニカルな話しでは全くなく、ポリティカルな話しであることが良く分かる。ポリティクスというのは時には事実関係とか法の支配とは関係ないところで事を進めていく傾向があり予見可能性が低く太刀が悪い。
余りにポリティクスの影響が強力で、過去数カ月の議論を見ているとかなり空中分解気味。となると最も現実的な落としどころは何も起こらない現状維持と見る向きもある。ただ、共和党政権の実質的な信任投票と言える2018年の中間選挙が迫っていることを考えると、共和党としては何としても2017年内または2018年前半にはオバマケア廃案と何らかの税法改正を終えてしまう必要があるだろう。ただ、税法改正を2017年末には達成したいという党の総意には誰も異論はないだろうけど、現実には改正案の個々の条件を巡って党内の意見調整が難しく、また大統領府の強力なリーダーシップも不在で、バタバタと慌てて何か法制化したとしてもThe Blueprintが目指していたような抜本的な税法改正と言えるような立派なものに至るのか、それとも単に付け焼刃的な減税で終わってしまうのか、現時点では誰にも分らない。まあ、税法改正と単なる減税は聞こえは違うけどその境界線は必ずしも明確ではない。どこまでやれば税法改正でどこまでは単なる減税なのか、という境目はボヤけてるので余りこの用語の差異に拘っても仕方がないかも。
素早く抜本的な税法改正を法制化しようとする際の障害のうち、議会共和党が一枚岩でない点はイデオロギーの話しなので仕方がないが、本来そんな時こそ大統領がリーダーシップを発揮して全体を取りまとめたり導いたりする必要がある。ところが、トランプ大統領は次々と不必要なTweetとか規律に欠ける行動で自ら墓穴を掘りまくりPolitical Capitalの多くを浪費してしまっている。以前のポスティングで税法改正の議論をKaty Perryの「Hot n Cold」に例えたけど、トランプ大統領の現状は同じくKaty Perryの「Self-Inflicted」の状態と言える。
トランプ大統領府による税法改正プランがほぼ白紙に近い点は前回までのポスティングで再三触れているけど、その点が誘発する悪影響のひとつとして激しいロビー活動が挙げられる。すなわち、税法改正のキャンバスが真っ白な状態で提示されている訳だから、「自分に都合のいい絵を描いてしまおう」という輩がDCに押しかけている。小売業関連の団体はThe BlueprintのDBCFTの更にその一部のDB部分に対する不信感を全力で煽っているし、全米不動産業界は8,000人単位のメンバーをDCに送り込んで、標準控除の拡充や州税控除撤廃反対を展開している。不動産業界がなんでそんなものに反対しているのかチョッと分かり難いかもしれないけど、州税控除がなくなり標準控除が拡充されるとSch. Aで個別控除を取る納税者の数は激減する可能性がある。となるとせっかく住宅ローン金利を支払っても税メリットがなくなってしまい、不動産市場に悪影響?ということなんだろう。風が吹いて桶屋が儲かるような話しにも聞こえるがロビー活動に油断は大敵。不動産業界は更に農場主やPEファンド達と一緒に金利の損金算入温存に注力しているし、多国籍企業のロビー活動の矛先はテリトリアル課税移行時の一時課税を何とかトランプが以前に言及していた10%ではなくThe Blueprintの3.5%または8.75%にするという点に向いている。結局、皆、白いキャンバスに自分たちに都合のいい色を塗ろうとDCに集結している。余りに皆が「これは嫌です、あれも嫌です」と不整合な色を付けすぎると何の色もないブラックになってしまい、歳入を確保した形のきちんとした税法改正にはなりようがない。
個人が支払う州税・地方税の個別控除撤廃は不動産業界に限らず全体にかなり不評。特に州税の高いNY州、CA州居住者への影響が大きい。トランプ政権の全てに大反対を表明するNY民主党上院議員で上院少数党院内総務も務めるChuck Schumerもいち早く反対を表明し、不動産業界と同じく、そんなことをしたら住宅ローン金利が控除できなくなり大問題だとしている。
それはそうなんだろうけど、何か大きな改革を起こしましょうという時に、個人所得税の州税の個別控除すら撤廃できないようでは他は押して知るべし。支払利息の損金不算入にしても、州税控除の撤廃にしても、これらから見込まれる歳入は大きく、それらがあるからこそ15%だの20%だのという低税率の実現が可能になる訳で、損する改正は嫌だけど税率は低くというのは算数的に無理がある。このことから財政均衡は無視してでも減税するという話しがちらほら出てきている。
上院で60議席を持っていれば共和党としては好きな法律を通すことができるが、現実には51議席。その場合には税法改正は上院でも例外的に過半数で通すことができる予算調整法内で立法するオプションしかない。その場合には財政均衡を保つという追加の要件が付いて回る。にもかかわらず赤字になっても減税するというような話しが出てくるのは不思議に思えるけど、実は予算調整法を使っても10年を超えてのマイナス財政は許されないというのが一般的なルールだそうで、だったら10年期限で思い切った減税をするかという話しもある。以前にもブッシュ(息子)が2001年に行った大型減税はこの理由で「なお、この税法は5秒、じゃなく10年で自動的に消滅する」となっていた。
う~ん。このセリフは今聞いても格好いい。これ知ってるよね?「Mission Impossible」で作戦内容を伝えるテープの最終部分だ。メッセージの最後にテープレコーダーが燃えちゃうやつ。ちなみに英語では「This message will self-destruct in five seconds」だけど、日本語だと「なお・・」ってつけてるのがイカしてる。トムクルーズが演じる現代のMission Impossibleはどちらかというとド派手なアクションムービーでこれはこれでもちろん楽しめるけど、昔のもう少しダークな感じの「スパイ大作戦」もよかった。「大作戦」っていう実にレトロっぽい題名が最高。ウルトラマンの「MAT、Monster Attack Teamの略である」の「MAT」も中々笑える格好いい名前だ。「マット隊員」とか呼ばれたりして昔の名前はGuysなんかより凄い。ちなみにメビウスのGIGっていうのはキャプテンスカーレットのSIGから来てるそうだ。で、スパイ大作戦のテープのメッセージには、真ん中辺に「例によって、君あるいは君のメンバーがとらえられたり殺されても、当局は一切関知しない」の部分もあるが、あの言い回しも最高。ちなみにこの部分の「当局」は英語では「Secretary」だ。各省の長官をSecretaryということを知っていれば違和感はないけど、直訳で秘書とならないようにね。税法でも財務省規則策定の権限は「Secretary」、すなわち財務長官に与えられている。ドラマの和訳と言えば、「謎の円盤UFO」の英国オリジナルバージョンだとタイプライターが打ち続けるOPメッセージを「1980年既に人類は・・・」って格好良く訳してたけど、あれも名訳だ。今は2017年だけど、地球防衛組織シャドーは37年前に既に「沈着冷静なストレーカー最高司令官の元に」結成されていたことになる。あのOPは今見ても格好良すぎ。
で、何の話しだったかって言うと、歳入を伴わない減税を実行するには予算調整法等の仕組みから10年の時限立法とするしかないと一般に言われている点でした。ただ、正確なルールは必ずしも10年ではなく「Budget Window」を超えて赤字になってはいけないということのようで、従来Budget Windowは10年と考えられていた。で、この10年と言う数字には少なくとも1974年Budget Actに基づく法的な拘束力はないようで、最近ではBudget Windowは20年、さらには30年と考えてもいいんだ、というような過激な主張も出てきている。30年を超えて赤字にならなければ予算調整法の枠で法制化が可能という主張だ。30年だったら時限立法とは言っても限りなく恒久措置に近い。
ビジネスプラニング面、また立法プロセスの規律面からも税法改正は期間限定ではなく恒久的な法律で実行されるのが本筋だろう。R&Dクレジットが時限立法だったころは毎年ハラハラしたし、ブッシュ減税失効時の2011年、そして2年延命後の2013年もバタバタだった。ただ、今回の税法改正を実行するに当り、ロビー活動が激しくにっちもさっちも行かなくなるようだと、Mnuchin財務長官が しばしば言うように「恒久的な改正は時限立法よりベター、でも時限立法は何もしないよりはベター」ということで結局は時限立法に落ち着くのだろうか?
余りにポリティクスの影響が強力で、過去数カ月の議論を見ているとかなり空中分解気味。となると最も現実的な落としどころは何も起こらない現状維持と見る向きもある。ただ、共和党政権の実質的な信任投票と言える2018年の中間選挙が迫っていることを考えると、共和党としては何としても2017年内または2018年前半にはオバマケア廃案と何らかの税法改正を終えてしまう必要があるだろう。ただ、税法改正を2017年末には達成したいという党の総意には誰も異論はないだろうけど、現実には改正案の個々の条件を巡って党内の意見調整が難しく、また大統領府の強力なリーダーシップも不在で、バタバタと慌てて何か法制化したとしてもThe Blueprintが目指していたような抜本的な税法改正と言えるような立派なものに至るのか、それとも単に付け焼刃的な減税で終わってしまうのか、現時点では誰にも分らない。まあ、税法改正と単なる減税は聞こえは違うけどその境界線は必ずしも明確ではない。どこまでやれば税法改正でどこまでは単なる減税なのか、という境目はボヤけてるので余りこの用語の差異に拘っても仕方がないかも。
素早く抜本的な税法改正を法制化しようとする際の障害のうち、議会共和党が一枚岩でない点はイデオロギーの話しなので仕方がないが、本来そんな時こそ大統領がリーダーシップを発揮して全体を取りまとめたり導いたりする必要がある。ところが、トランプ大統領は次々と不必要なTweetとか規律に欠ける行動で自ら墓穴を掘りまくりPolitical Capitalの多くを浪費してしまっている。以前のポスティングで税法改正の議論をKaty Perryの「Hot n Cold」に例えたけど、トランプ大統領の現状は同じくKaty Perryの「Self-Inflicted」の状態と言える。
トランプ大統領府による税法改正プランがほぼ白紙に近い点は前回までのポスティングで再三触れているけど、その点が誘発する悪影響のひとつとして激しいロビー活動が挙げられる。すなわち、税法改正のキャンバスが真っ白な状態で提示されている訳だから、「自分に都合のいい絵を描いてしまおう」という輩がDCに押しかけている。小売業関連の団体はThe BlueprintのDBCFTの更にその一部のDB部分に対する不信感を全力で煽っているし、全米不動産業界は8,000人単位のメンバーをDCに送り込んで、標準控除の拡充や州税控除撤廃反対を展開している。不動産業界がなんでそんなものに反対しているのかチョッと分かり難いかもしれないけど、州税控除がなくなり標準控除が拡充されるとSch. Aで個別控除を取る納税者の数は激減する可能性がある。となるとせっかく住宅ローン金利を支払っても税メリットがなくなってしまい、不動産市場に悪影響?ということなんだろう。風が吹いて桶屋が儲かるような話しにも聞こえるがロビー活動に油断は大敵。不動産業界は更に農場主やPEファンド達と一緒に金利の損金算入温存に注力しているし、多国籍企業のロビー活動の矛先はテリトリアル課税移行時の一時課税を何とかトランプが以前に言及していた10%ではなくThe Blueprintの3.5%または8.75%にするという点に向いている。結局、皆、白いキャンバスに自分たちに都合のいい色を塗ろうとDCに集結している。余りに皆が「これは嫌です、あれも嫌です」と不整合な色を付けすぎると何の色もないブラックになってしまい、歳入を確保した形のきちんとした税法改正にはなりようがない。
個人が支払う州税・地方税の個別控除撤廃は不動産業界に限らず全体にかなり不評。特に州税の高いNY州、CA州居住者への影響が大きい。トランプ政権の全てに大反対を表明するNY民主党上院議員で上院少数党院内総務も務めるChuck Schumerもいち早く反対を表明し、不動産業界と同じく、そんなことをしたら住宅ローン金利が控除できなくなり大問題だとしている。
それはそうなんだろうけど、何か大きな改革を起こしましょうという時に、個人所得税の州税の個別控除すら撤廃できないようでは他は押して知るべし。支払利息の損金不算入にしても、州税控除の撤廃にしても、これらから見込まれる歳入は大きく、それらがあるからこそ15%だの20%だのという低税率の実現が可能になる訳で、損する改正は嫌だけど税率は低くというのは算数的に無理がある。このことから財政均衡は無視してでも減税するという話しがちらほら出てきている。
上院で60議席を持っていれば共和党としては好きな法律を通すことができるが、現実には51議席。その場合には税法改正は上院でも例外的に過半数で通すことができる予算調整法内で立法するオプションしかない。その場合には財政均衡を保つという追加の要件が付いて回る。にもかかわらず赤字になっても減税するというような話しが出てくるのは不思議に思えるけど、実は予算調整法を使っても10年を超えてのマイナス財政は許されないというのが一般的なルールだそうで、だったら10年期限で思い切った減税をするかという話しもある。以前にもブッシュ(息子)が2001年に行った大型減税はこの理由で「なお、この税法は5秒、じゃなく10年で自動的に消滅する」となっていた。
う~ん。このセリフは今聞いても格好いい。これ知ってるよね?「Mission Impossible」で作戦内容を伝えるテープの最終部分だ。メッセージの最後にテープレコーダーが燃えちゃうやつ。ちなみに英語では「This message will self-destruct in five seconds」だけど、日本語だと「なお・・」ってつけてるのがイカしてる。トムクルーズが演じる現代のMission Impossibleはどちらかというとド派手なアクションムービーでこれはこれでもちろん楽しめるけど、昔のもう少しダークな感じの「スパイ大作戦」もよかった。「大作戦」っていう実にレトロっぽい題名が最高。ウルトラマンの「MAT、Monster Attack Teamの略である」の「MAT」も中々笑える格好いい名前だ。「マット隊員」とか呼ばれたりして昔の名前はGuysなんかより凄い。ちなみにメビウスのGIGっていうのはキャプテンスカーレットのSIGから来てるそうだ。で、スパイ大作戦のテープのメッセージには、真ん中辺に「例によって、君あるいは君のメンバーがとらえられたり殺されても、当局は一切関知しない」の部分もあるが、あの言い回しも最高。ちなみにこの部分の「当局」は英語では「Secretary」だ。各省の長官をSecretaryということを知っていれば違和感はないけど、直訳で秘書とならないようにね。税法でも財務省規則策定の権限は「Secretary」、すなわち財務長官に与えられている。ドラマの和訳と言えば、「謎の円盤UFO」の英国オリジナルバージョンだとタイプライターが打ち続けるOPメッセージを「1980年既に人類は・・・」って格好良く訳してたけど、あれも名訳だ。今は2017年だけど、地球防衛組織シャドーは37年前に既に「沈着冷静なストレーカー最高司令官の元に」結成されていたことになる。あのOPは今見ても格好良すぎ。
で、何の話しだったかって言うと、歳入を伴わない減税を実行するには予算調整法等の仕組みから10年の時限立法とするしかないと一般に言われている点でした。ただ、正確なルールは必ずしも10年ではなく「Budget Window」を超えて赤字になってはいけないということのようで、従来Budget Windowは10年と考えられていた。で、この10年と言う数字には少なくとも1974年Budget Actに基づく法的な拘束力はないようで、最近ではBudget Windowは20年、さらには30年と考えてもいいんだ、というような過激な主張も出てきている。30年を超えて赤字にならなければ予算調整法の枠で法制化が可能という主張だ。30年だったら時限立法とは言っても限りなく恒久措置に近い。
ビジネスプラニング面、また立法プロセスの規律面からも税法改正は期間限定ではなく恒久的な法律で実行されるのが本筋だろう。R&Dクレジットが時限立法だったころは毎年ハラハラしたし、ブッシュ減税失効時の2011年、そして2年延命後の2013年もバタバタだった。ただ、今回の税法改正を実行するに当り、ロビー活動が激しくにっちもさっちも行かなくなるようだと、Mnuchin財務長官が しばしば言うように「恒久的な改正は時限立法よりベター、でも時限立法は何もしないよりはベター」ということで結局は時限立法に落ち着くのだろうか?
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